社会が過剰人口になったと人間のヒフが感じとれば、
生物生態学上、生物としての人間の遺伝子は様々な方法で出産制限の方向に向かう。
当たり前のことが当たり前に起こっているだけにすぎない。
この場合いくら制度的対策を講じてもその流れを止めることはできない。
そして、
「過剰人口ではない」
と生物遺伝子が判断したとき、少子化は終止符をうつ。
それは、生物としての人間が存続していくのに適したいわゆる「適正人口」あるいは「静止人口」になったときである。
このとき、民族遺伝子は多産方向へ舵をとっていくことになる。
少子化も多産化も『生物の自己保存本能』に沿っている、
ということになる。
言い換えると、日本のあるいは韓国の人口は生物自己保存法則に逆らうほどに、人口が過剰に増えてしまっているということである。
しばらくは、少子化が進行して、人口が適正数になるまで減り続けることになる。
★.両国が目指すことは少子化を止めることではない。
★.人口が減っていくその状態にみあった適切な社会をいかに構築するか
ということである。
『
朝鮮日報 記事入力 : 2015/02/27 11:27
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/02/27/2015022701523.html
出生率は上昇、新生児数は減少の「怪現象」
妊娠可能な女性が急減、「怪現象」を招く
新生児の数、3年後から30万人台に減少の恐れ…「少子化対策の全面見直しを」

韓国の新生児の数が2年連続で減少したことが分かった。
統計庁は、26日に「2014年出生・死亡統計」を発表し、新生児の数は2013年より1200人少ない43万5300人になるという暫定的な推計値を明らかにした。
これは、05年の43万5031人に次いで、過去2番目に低い値だ。
統計庁の尹蓮玉(ユン・ヨンオク)人口動向課長は
「若者がそもそも結婚しなかったり、
遅く結婚したりするのに加え、
結婚した夫婦も第2子を産もうとしない傾向が強まり、
新生児の数が減少した」
と語った。
3年続けて婚姻件数が減っていることが新生児の減少に大きく影響したが、35歳以上で出産が増えたため、どうにか小幅の減少で済んだと分析されている。
一方、昨年の合計特殊出生率は「1.21人」で、2013年(1.19人)より高くなった。
合計特殊出生率とは、女性が一生の間に生む子どもの数を表す数値。
ところが、15歳から49歳までの妊娠可能な女性の数が新生児の数よりも大幅に減ったことで、数値上は出生率が高くなるという錯視現象が起こったのだ。
■18年からは新生児30万人時代に?
専門家らは、昨年35歳以上の高齢出産が増えたという点に注目している。
ほかの年齢層に比べて人数が多いベビーブーム第2世代(1979-82年生まれ)が遅く結婚し、今なお出産している。
とはいえ、この世代の出産がほぼ終了する18年からは、妊娠可能な女性が大幅に減り、新生児の数は現在の43万人台から30万人台に急減する、という専門家の警告もある。
ソウル大学のチョ・ヨンテ教授は
「現在は、毎年約9万人ずつ妊娠可能な女性の数が減っているが、
18年になると1年で19万人、19年には22万人減ることになる」
と語った。
「出生率2.1人」を維持するとしても、既に児童の減少が始まっているため、
10年後には韓国の四年制大学188校のうち70校は閉鎖、
軍隊に徴兵される人数も今の半分程度に減り、
安全保障にもかなりの悪影響を及ぼす
というのがチョ教授の見方だ。
■晩婚化に焦点を合わせるべき
少子化を加速させる主な要因は、結婚と出産に対する価値観の変化だ。
統計庁で2年置きに実施している社会調査を見ると、
「必ず結婚すべき」という回答は、1998年の33.6%から、昨年は14.9%と大幅に低下した。
一方「結婚はしてもしなくてもいい」という回答は、98年の23.8%から、30.7%(2010年)、38.9%(14年)と増えてきている。
このため、少子化政策は若者の結婚に焦点を合わせ、初婚年齢(女性29.6歳)を下げることに力を注ぐべきだという指摘が多い。
■昨年は「青馬の年」の影響も
保健福祉部(省に相当)は昨年10月まで、新生児が前年より増えて喜んでいた。
ところが11月になると突然、新生児の数が前年同月より1527人も減った。
特定の月にだけ出産が減る、というのはまれなケースだ。
12月は前年同月より728人増えたが、結局11月の減少分を埋められず、昨年生まれた新生児の数は前年(13年)より1200人少なくなった。
なぜ、昨年11月には新生児が少なくなったのだろうか。
社会学者らは「午(うま)年」の影響だと指摘した。
11月生まれの新生児は、1月に妊娠した子だ。昨年1月、「この年に生まれた女の子は気が強くなる」とされる午年(青馬の年)を迎え、午年生まれの子を嫌って妊娠を避けたのではないか、という仮説もある。
同じく午年の2002年にも、前年より新生児の数が約6万2000人減った。
』
『
2015年02月27日16時58分 [ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
http://japanese.joins.com/article/151/197151.html?servcode=300§code=300
1人あたりの家計負債2150万ウォン
…出生率は8.6人市場最低=韓国
借金は雪だるまのように増えているが、赤ちゃんの産声はますます小さくなっている。
韓国社会が直面している低成長の産物だ。
★.一方では史上最大の借金祭り、
もう一方では史上最低の出生率が成長の足を引っ張っている。
このような傾向が続けば、借金の負担が出産率を凌駕し、借金を返さなければならない未来世代をまた減少させるという悪循環の泥沼に陥るおそれがあると指摘されている。
韓国統計庁が26日発表した「2014年出生・死亡統計(暫定)」によると、昨年人口1000人あたりの出生数を意味する粗出生率は8.6人だった。
前年に続き、統計を取り始めて以来の最低水準だ。
非公式資料である小数点以下2位まで勘案すれば、粗出生率は歴代最低だ。
統計庁関係者は
「2013年粗出生率は8.63だったが昨年はそれ以下に落ちて四捨五入した数値が8.6」
とし
「義務出生申告期限を越えて後で出生届けを出した人を合わせても最低値になるだろう」
と説明した。
平均妊婦の年齢がますます高まり、第2子を産まない現象も固定化している。
昨年の平均出産年齢は初めて32歳を越し、第2子出生数は16万5400人で最低値を記録した。
昨年も20代の出産率は減少し、30代の出産率は増加する傾向が続いた。
40代を含め35歳以上の高齢妊婦構成比率も21.6%で、1981年に統計を取り始めて以来、毎年最高値を更新中だ。
女性1人が一生で産むと予想される平均出生数(合計特殊出生率)は1.21人で前年より0.02人増加したが依然として低い水準だ。
合計特殊出生率が2.1人を記録してこそ人口減少が食い止められる。
韓国は82年以来、一度も合計特殊出生率が2.1を越えることがなかった。超低出産国家に分類される合計特殊出生率1.3基準も、韓国は2001年に基準以下になって以来14年間ここから抜け出せずにいる。
統計庁はこのような傾向が続けば2030年に国内総人口がピークを迎えてそれ以後は減少に転じるとみている。
未来人口は減っているのに返済すべき借金は急速に膨らんでいる。
韓国銀行が集計した昨年末の家計負債(家計ローン+販売信用)は1089兆ウォン(約118兆円)に達する。
★.国民1人あたり2150万ウォンを越える借金を抱え込んでいるようなものだ。
韓国銀行が関連統計を出し始めた2002年第4四半期以来最大だ。
昨年8月、金融当局が住宅担保貸し出し比率(LTV)、総負債償還比率(DTI)のような不動産融資規制を緩和して韓銀が政策金利を低くし始めながら増加速度は上がった。
昨年10月から12月までの家計負債は29兆8000億ウォン増え、統計開始以来、最大の増加幅を記録した。
毎月10兆ウォンずつ借金が増えているようなものだ。
金融委員会が同日対策を出したのもこのような危機意識からだ。
★.年2%台金利の「安心転換ローン」を来月24日に発売することにした。
変動金利ローンを2.8%前後の固定金利ローンに追加費用なく乗り換えることができる商品だ。
金利は10年、15年、20年、30年など満期により少しずつ変わる。
申請時点を基準として
▼.1年以上経つ銀行圏住宅担保ローンを保有している
▼.住宅価格が9億ウォン以下
▼.ローン金が5億ウォン以下
--という条件を満たしている場合にこの商品を利用することができる。
しかし今回の対策で家計借金爆弾の雷管が除去できるかどうかは分からない。
韓国住宅金融公社が資本金を増やして住宅抵当証券(MBS)発行により危険を分散するにしても、
★.結局「借金で借金を返す」ことと同じだ。
政府政策により早目に固定金利ローンを受けた人に対する逆差別議論も起こっている。
明智(ミョンジ)大のチョ・ドングン教授(経済学)は
「政府統計にはそれほどはっきりと出ていないが、住宅担保ローンを受けて生活資金に使う家計が増えている。
最も危険な信号」
と話した。
東国(トングク)大のカン・ギョンフン教授(経営学)は
「政府の規制緩和にも銀行融資に乗り換えることのできない低信用者は、貯蓄銀行や消費者金融などを利用するほかない。
だが、ここからほころびが生じるおそれがある以上、対策が必要だ」
と主張した。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年3月2日(月) 23時10分
http://www.recordchina.co.jp/a103422.html
韓国社会が高齢化、労働力人口の平均年齢が44.2歳に
=将来的な経済成長にダメージと不安視―韓国メディア
2015年3月1日、東方網は韓国・聯合ニュースの報道を引用し、韓国の労働力人口の平均年齢は昨年の段階で44.2歳になったと伝えた。
先月27日付の報道によると、韓国社会の高齢化と1955~63年のベビーラッシュ世代が高齢者を支えるために働き続けるというケースが増えた結果、労働力人口の平均年齢が引き上がったとみられている。
前年比では0.2歳の上昇。このほか、
★.昨年就業した53万5000人のうち55歳以上が73%を占めた。
この状況について、韓国労働研究院の関係者は
「現在のような高齢化、出生率の低さが続けば、いずれ労働力不足が発生する」
と指摘。
韓国経済の成長が望めなくなると警鐘を鳴らしている。
』
『
WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2015年03月03日(Tue) 原田 泰 (早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4767
人口減少は諸悪の根源か
人口減少が諸悪の根源のように言われるが、経済学の歴史で見ると、人口増加こそ諸悪の根源だった。
古くはマルサスである。
産業革命以前でも人類が豊かになる兆しはあった。
農耕の発明、国家統一による社会秩序の安定、大帝国の成立による交易の利益などなどである。
狩猟採集で暮らすことのできる人口は100平方キロメートル(10キロ四方)あたり数人である。
江戸時代、1町歩(100メートル四方)あれば立派に家族が養えた。
土地生産性は1万倍に上がっている。
人手で耕さなければならないので、労働生産性が1万倍になることはできないが、それでも少しは上がるだろう。
人類は豊かになっても良かったのだが、少しでも豊かになれば子供が生まれ、人口が増加し、一人当たり耕地面積が低下して、人類は貧しいままだった。
社会秩序の安定や交易から生まれる利益は、すべて人口増加に吸収され、一人当たりで豊かになることはなかった。
これが、マルサス人口論の教えである。
その後の開発された経済成長理論でも、人口増加は一人当たりの資本を減少させて人類を貧しくする要因である。
実際に、長期の一人当たり実質GDPの成長率と人口増加率を見ると、人口増加率の高い国ほど一人当たり実質GDPの成長率が低いという関係がある。
これは韓国や中国のような人口成長率の低い国の一人当たりGDPの成長率が高く、フィリピンやインドのような人口成長率の高い国で一人当たりGDPの成長率が相対的には低いことから納得していただけるだろう。
■人口減少論は責任逃れのため
ではなぜ人口減少が諸悪の根源というような議論が日本で盛んなのだろうか。
第1は、
人口減少がトレンドとして続いていけば、日本という国がなくなってしまうから大変だ
ということなのかもしれない。
このままの人口成長率が続けば、後1000年たたないうちに最後の日本人が生まれることになる。
第2は、
高齢化の負担がとんでもないことになるからだ。
本欄(原田泰「無責任な増税議論 社会保障は削るしかない 税と社会保障の一体改革に欠けている論点」2011年12月06日)で書いたように、現在のレベルの高齢者の社会保障を維持するためには、60%の消費税増税が必要になる。
しかし、これは人口減少の問題ではなくて、高齢化の問題だ。
現役世代に対して高齢世代が増えすぎたから起こっている問題である。
第3に、
人口減少は、とりあえず誰かのせいにすることが難しいので、責任逃れには都合が良いという理由がある。
現役世代に対して高齢世代が増えすぎたから社会保障会計の赤字が生じていると認識すれば、高齢世代の社会保障支出を減らすしかないと議論することになるが、人口が減少しているせいだとなれば、人口を増やせばよいとなる。
デフレは人口減少によるとしておけば、日銀のせいではなくなる。
経済成長率が低いのは人口減少のせいだとしておけば、とりあえず誰のせいでもなくなる。
■戦前は人口増加が問題だった
一方、戦前の日本は、人口圧力に人々は真剣に悩んでいた。
日本は人口過多の国だから、男は兵隊になって海外領土を確保しなければならないと思い込んでいた。
植民地や海外領土を得ることに一生懸命になっていた。
満州事変で満州国を成立させたとき、日本人が熱狂したのも、広大な領土が手に入って、日本が人口圧力から逃れられると思ったからだ。
ところが実際には、人々は満州には行きたがらなかった。
移住者の多くは朝鮮籍日本人で、日本人移住者の多くは軍関係者、満州鉄道及びその関係企業の日本人だった。
30歳の東京地裁判事、武藤富男は、満州国に赴任するにあたって、年棒6500円を支給されたと書いている。
当時の大審院長(
最高裁長官にあたる)の俸給と同じである(武藤『私と満州国』16-17頁、文芸春秋社、1998年)。
軍関係者も満鉄関係者も満州国赴任官吏も、皆、日本の俸給の数倍になる手当をもらわなければ行かなかった。
農民を呼び寄せる手段は、地主になれるという触れ込みだった。
実際に満州国に来たのは中国人だった。
満州国の人口は1930年から40年代の初期にかけて3000万人から4500万人に増えていたが、日本人はその5%もいなかった。
昭和恐慌から急速に回復した日本はもはや人手不足になっており、満州国に行く必要がなかったからだ。
空想の人口圧力論で満州国を奪ったのだが、いざ奪ってみると人口圧力はすでに解決されていた。
★.本来、人口が減少することは、生産性を高めることだ。
人口が減れば、少なくとも土地生産性は高まるはずだ。
江戸時代と異なって、少ない人数で広大な農地を耕す様々な方法がある。
なんでも人口のせいにするのは止めた方がよい。
』
『
JB Press 2015.3.26(木) 篠田 芳明
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43266
少子高齢化、意外に難しくない問題解決
10歳上まで生産年齢を上げる、地方のコンパクトシティー化・・・
近い将来、日本が少子高齢化社会になることはもはや逃れることのできない差し迫った現実であり、従来のような活力の向上が困難であろうことは誰にでも推測できる。
しかし、未曾有の大災害や戦争に巻き込まれない限り、いきなり日本の人口が激減して暗黒の世になるわけではない。
今生きている我々は古来、営々と築かれてきた素晴らしい日本の伝統と文化の灯火を受け継ぎ、益々明るくするか少なくとも持続するための工夫と努力が必要である。
今に生きる我々が「少子高齢化社会」の所為にして手を拱(こまぬ)き、この日本を取り返しのつかない虚弱な国家にしてしまう様な愚を犯してはならないと思う。
■世界史にみる帝国の栄枯盛衰
歴史を紐解くと(私は限られた歴史書を断片的に読んだだけなのでこのように大見栄切って語る資格はないが、素人の感触からすると)カルタゴ、ローマ、ベネチアなど数え切れない多くの国々が繁栄を極めていたにもかかわらず、やがて衰亡あるいは消滅してしまった。
それらの原因は、荒っぽく言えば大きな歴史のうねりの節目で国家基盤を揺るがす歪への対応が後手・後手に回り、あるいは手を拱いて躊躇し、重大な現状の問題点を先送りしている間に修復不可能な領域に落ち込んでしまい、国家の生命力を喪ったのだろうと思う。
そこで、これらの国々の興亡から得られる教訓から日本の現状を分析し、今後生き延びて行くヒントを見出すきっかけとして、簡単におさらいしてみたい。
紀元前3世紀頃、北アフリカのカルタゴは商業都市として繁栄していた。同国の有能なハンニバル将軍率いるカルタゴ軍はイベリア半島からアルプスを越えて象の軍隊でローマを攻撃し壊滅的な打撃を与えたが、結果的にローマを攻め滅ぼすことができなかった。
その後ハンニバル将軍は長年イタリア半島南部を占領し、同地に自給自足の拠点を構築してカルタゴ本国の支援を待ってローマ侵攻の機会を窺(うかが)った。
しかし、本国は積極的に支援しなかったため攻略を諦め北アフリカに引き揚げた。
そして逆にカルタゴ本国はローマ軍に攻められ、あえなく歴史から消滅してしまう。
ローマ帝国は小さなポリスから発展した。
ハンニバルの攻撃に惨敗したが、市民は一致結束し危機に耐えて力をつけ、逆にカルタゴ本国の攻略に成功した。
その後は次第に偉大な大帝国へと発展する。
帝国興隆の初期にはローマ市民自ら政治に積極的に参加し、あるいは幼少の頃から勇敢な兵士として鍛えられローマの安全保障と繁栄に貢献した。
その気風は質実剛健であった。
中期には法制度が整い、軍事力が強化され、建築・土木技術・芸術など黄金の文化が花開き「世界の道はローマに通ずる」と言われる大帝国へと発展した。
しかし、爛熟した後期になるとローマ市民に市民としての誇りや責任感が喪失し、兵役を逃れ苦しい僻地での戦いには傭兵を多用した。
一方、市民は中央で遊興に明け暮れ、贅沢になり、収賄・脱税が横行、国家財政が破綻したうえ、手柄を立てた傭兵の台頭によって中央政権が乗っ取られ、市民のモラル低下と腐敗体質に歯止めがかからなくなって長く続いた豪華絢爛たるローマ帝国も衰亡してしまった。
次に地中海世界で名を挙げたのがベネチアである。
ベネチアはカルタゴや現在の日本のような商業国であり、地中海貿易の要衝として栄えた。
当初はイタリア半島アドリア海沿岸に居留した民であった。
折からモンゴル系フン族に追われたゲルマン民族の大移動に圧迫され、彼らの襲撃を受けるとラグーナ(湿地)に点在する小島に一時退避していたが、次第にラグーナを埋め立てて街を構築し、定住する。
このアドリア海に浮かぶ埋め立て都市は防衛のみならず、海運に便利であるうえ、地中海の要衝でもあったため、瞬く間に繁栄することとなる。
一方、貿易が盛んになるとその富を収奪しようと海賊が横行する。
そのため、ベネチアはカルタゴと違って強力な海軍力を擁し、商船の護衛を強化した。
ベネチアは歴史上、海運・商業・軍事への貢献が大きい。
例えば従来は小型木造船しか製造できなかった船にキールを採用した大型船の造船技術を発明し、現在の船の基本構造となっている。
その他銀行業、手工業が発展し、製鉄・冶金・宝石工芸品・ガラス工芸など近代技術の基礎が多く発明された。
しかし、この地中海における通商のハブとなったベネチア経由の貿易には多額の税金が課せられ、その回避が他国貿易業者の焦眉の急であった。
皮肉なことに、ベネチアが開発したキール式造船技術によって、従来にない大型船の開発が可能となったことがベネチア繁栄の歴史を大きく傾けた。
そして遂にポルトガルの冒険家バスコ・ダ・ガマがそのキール式大型船に乗り、喜望峰航路を開拓したことで、大量・安価に輸送できる喜望峰回りの東洋貿易ルートが確立したため、従来ハブ機能を果たしていたベネチア経由の貿易が衰退してしまった。
これら歴史上繁栄を極めた国々の衰亡の足跡を辿ると、国家繁栄の根幹をなす基盤に変化が顕在化しているにもかかわらず(既得権益を持つ先見性のない有力者の抵抗に抗しきれず)当時の為政者をはじめ国民がその問題点を先送りして「今までうまくことが進んでいたのだから、しばらく様子を見よう」とするか、最悪なのは「現状維持」と言い逃れして大切な機会を逃してしまうことであると思う。
今まで順調に進んでいたことが急に失速を始めたとき、リーダーはその原因を解明し、その改善・改革には蛮勇とも言える決断と実行力が不可欠である。
■日本が直面している問題点
さて、前述した特徴的な国家の興亡を見た時、今日本が直面している大きな変化は主に次の3点が挙げられるだろう。
(1)日本が人類史上、類を見ない少子高齢化社会に突入していること
(2)近隣国の急激な軍事力増大と我が国への恫喝が顕在化していること
(3)技術・情報・物資・民族の流動化が激しくなって多様な価値観を持つ国民の声に流され(選挙を意識して長期的洞察からすればより重要なことも蔑ろにして)確固たる信念と勇気に欠けるリーダーが多く、政治・経済が世界的に不安的化していること
(2)と(3)はともに今の日本を取り巻く安全保障上、非常に不穏な状況を呈しており、その危険が現実に生起した時、
リーダーは「前例のないことじゃから・・・!」や「想定外の出来事だ・・・!」など惚けたことを言っている暇はない。
日本が今日のように平和と繁栄を享受して来たのは先達の叡知と努力の賜物であることは論を俟たないが、さらに幸運にも四周を軍事面で障害となる海に囲まれていることと有能で勤勉な労働力が豊富であったことだ。
科学技術の発達によって、海を越える手段が多岐・大量かつ高速になって、軍事力の発揮は容易になったとは言えるが、我が国の四周を囲んでいる海は今でもやはり大きな防壁となっており、日本の防衛上は有利である。
(2)と(3)の項目は多くの論客が深く洞察されて素晴らしい説が巷に溢れており、筆者も関連する拙文を書いているので、本論では(1)に重点をおいて論考を試みたい。
■少子高齢化社会を克服する日本社会の再構築

図1 日本人口ピラミッド(1950年、人口問題研究所)
まず、日本の人口構成の推移を見てみよう。
右に1950年から50年間隔の日本人口ピラミッドを示した。
この図からここでは労働力人口を20歳から65歳と仮定して抽出し、それ以下の年齢を未就労人口、それ以上を高齢者人口とするとその各構成ゾーンの人口は、図の2労働力人口と被扶養者人口の推移の通りである(次ページ)。
この図から分かるように、1950年頃には未就労人口は多かったが、高齢者人口は非常に少ない。
しかし、1950年に比べると2000年の労働力人口が2倍に増加している一方、高齢者人口は約5倍になっている。

●2000年
さらに2050年の予想を見ると、労働力人口が2000年の6割に減少し高齢者人口が約2倍(1950年の実に12倍)近く増加している。
また、未就労人口は1950年から半分以下、2000年からは3分の2以下に減少している。
ここに紹介した50年ごとの人口構成を大雑把に見ると、日本が今後50年ほどの間の大きな問題は高齢者人口の急激な増加にあると言えよう。
この図2から2050年には労働力人口1人分で1人の高齢者と0.5人の未就労者を支えなければならないことが分かる。
その中身を少し考えてみる。

●2050年(予測)
若い未就労者は一般的に学費や生活費は必要ではあるが、1950年当時(高学歴社会でなく、教育費も低かった)と比べても出費上に極端な変化はない。
そして、その年代ゾーンの人は若くて健康上も安定しているので医療費は少なくて済む。
一方、高齢者人口は極端に増加しているうえ、何よりも健康上問題を抱える人が多く、医療・介護に多額の費用と関係施設・人材が必要であり、国家の重大な懸案事項となっている。
この問題を改善するため、余裕有る女性の職場進出に加え高齢者と定義する人口を減らして労働力人口を増やすことを提案したい。
「高齢者と定義する人口を減らす」などと書くと暴論と非難されるかもしれないが、
1つの方法として労働力人口を前期高齢者65~75歳も労働力人口に加えて20歳~75歳に引き上げること(図2に示した2050年Aのグラフ参照)だ。

図2
単に定義年齢を10歳引き上げるだけであるが、このことによって多くの高齢者の気持ちは若返り、自分で出来る仕事を見つけ毎日前向きに生きる姿勢が出てくるのではないかと期待する。
また、1950年当時と違い国民の栄養状態や住環境も改善されているので可能だと思う。
国家としてもこの高齢者の労働力活用のための支援をすると、彼らが稼ぐことで税収に貢献するだけでなく、マインドが向上して病気も少なくなり、結果として財政を圧迫する医療費軽減にもつながっていくと思う。
さらに、昨今は各種職場で機械化・自動化・知能化が進み、半世紀前には若くて強靱な肉体でなければ就労出来なかった労働・作業にも機械が広範な援助をしてくれる。
■過疎地対策
次の問題点として地方の農山漁村の人口が減少、特に若年層が激減して義務教育が成り立たなくなるとともに取り残された老人の生活基盤も崩壊しつつあることが挙げられよう。
過疎地においては、宅地が広域に分散し、通学路は遠く、就学児童も極端に少なくなっているため、子供を育てようと望んでも、義務教育を受けるためのハードルが高く、加えて収入源となる労働需要が極めて限定される二重苦となっている。
さらに、高齢者の状況を見ると一人暮らしの比率が高く、生活必需品の調達や医療機関への通院さえままならない状況もある。
このように生活が成り立ち難い状況では、人口流出に歯止めがかからないのは当たり前である。
極端な過疎地は(少し厳しい言い方になるが)1950年以前の△型人口ピラミッド時代の主に第1次産業対応型集落が主で現在の各種社会システムとの不整合が生じており、人体に例えるなら、骨肉が痩せ細ったうえ、血流も滞って壊死状態に近づいていくようなものである。
この状態は政府も当然認識していて、それ救うために地方への多額の支援をしていることはよく承知している。
しかし、その効果は対処療法的であり、限界を越えているのではないか?
まして将来を見ると成り立たないのではないかと思う。
これを回復するには居住環境を大胆にスクラップアンドビルドする抜本的改革の必要性があると思う。
すなわち、広域に分散した過疎を改めて新街区(クラスタータウン)の構築が不可欠だと思う。
私事で申し訳ないが、私が幼少の時代は団塊世代初期のため、小さな村でも小中学校の教室には児童が溢れていた。
私は昭和21年生まれで1学級26人であったが、1年下の下級生からは毎年約50人規模に膨らんだと記憶している。
その小さな村に4つの小学校と3つの中学校があった。
従って村全体の小中学校の児童・生徒数は合計約1000人程度だったと思う。
この程度の児童数が集まれば学習・体育・遊び・郊外活動など義務教育を行う学校としての機能は成り立ち活気も出てくると思う。
私はこのような長閑な山村で幼少期を過ごしていた。
しかし、最近送られてきた村の便りによると、村全体の小中学校の児童・生徒数は(平成14年当時)167人とのことである。
私が住んでいた頃の村の人口は約5000人であったが、今は若者の流出と高齢化が進み村民全体で(1950年頃の約半数の)2500人くらいである。
当然小学校・中学校は各々1校に統廃合されている。
さらに、この現状を子細に見ると小さな児童が遠い村外れから登校するのは容易ではない。
昔はせいぜい2キロ以内で全員徒歩通学であったが、統廃合されると6~8キロも離れた場所から通学することになり通学バスがいる。
台風や大雪などの荒天、夕方遅くなって暗くなると遠路通学は危険でもある。
このような環境の中で若い人たちに子供を育て、将来への夢や希望が薄れていくのは致し方ない現実だ。
この問題点を改善するため何よりも重要な「日本人育成」のため、全国津々浦々まで質の高い義務教育の充実をいかに図るかが緊要であると思う。
すなわち、親が安心して子供を通学させられる良い環境を構築する必要がある。
そのため、現在広域に分散している過疎地を長期計画で新街区に改造してはどうかと思う。
少なくとも5000人程度の町村住民の居住区を役所・学校・病院等公共施設を中心に“その地域の安全で住み心地の良い場所を選んで”半径約2~3キロ以内に集約し、田畑・山林・漁港など遠方への仕事には車で往復する。
言わば局所的に人口密度を上げることでコミュニティを活性化するわけである。
図1から2050年頃の人口ピラミッドから義務教育修学人数は概ね8%程度であるから、5000人の町村では400人程度の児童生徒数が見込めるのではないか?
それによって、役所・学校・病院・商店等々へのアクセスも容易で児童生徒や高齢者のみならずすべての住民が自分の故郷で安心して暮らせるのではないかと思う。また、人が集まれば新たな事業も展開できインフラ整備も容易である。
これは私の生まれた故郷の過去と現在をイメージしての思いつきであるが、何かほかにも良い方法があれば、日本の政治経済に活力がある今の内に次世代への計画立案と投資を大胆に行うべきだと思う。
加えて高齢者対策上、改善すべき着目点の1つは「寝たきり老人」になる確率が加齢と共に増加することだ。
この「寝たきり老人」の増加は国家としての財政負担が大きくなるのはもちろんだが、何よりも本人にとって残り少ない人生を「寝たきり」のまま閉じる不幸は余りにも残酷だと思う。
私自身その圏内に入っているので他人事ではない。
私は将来、例え一時「寝たきり」となっても再起して限定された病院や自宅内の狭い空間であっても自分の意志による行動領域を確保して「生き甲斐」と「費用負担の軽減」の一石二鳥を追求したいと思う。
最近は車椅子や介護ロボットなど便利な器材がいろいろあるが、自力歩行を回復させる概念が見あたらない。
そこで、天井に走行レールを施して、要介護者を天井から吊って該当者の脚力の不足を補うと共に病室のベッドからトイレ、風呂、リハビリ室、治療室、外出用車椅子置き場などに独力で移動できるシステムを構築すればどうか?と考えている。
この方法によれば、体重の支持点が重心より上部に有るため歩行に際して転倒を防止でき、目的地へはリモコンによって天井レールのポイントを切り替えていけるし、点滴器具なども吊下げ可能で同行持参でき安全である。
この方法は、器材の屋内床面の設置スペースも省け、高度な技術を駆使した高額な装置ではない事も魅力だと自画自賛している。
そして高齢者は『負担を強いられる』と考えるのではなく、「自助努力で豊かな老後を勝ち取る」と考えるべきだと思う。
(参照:歩行補助及びリハビリ用介護システムH14.5.1公開特許:篠田)
■まとめ
国家にとって危機管理ができない人物がトップの座につくことの不幸は計りしれない。
20年前の1月17日、阪神淡路大震災が発生、甚大な被害をもたらした。
その時、総理大臣の対応の不手際が問われたが
「なにせ初めてのことじゃけん・・?」
とかの迷言はあまりにも有名で日本民族として世界に大恥をかいた。
また、4年前の3月11日には東日本大震災が発生、福島原子力発電所の壊滅的な打撃も加わって、阪神淡路大震災を上回る未曾有の大災害となったが、この時の総理大臣も「想定外の震災だ!」とか言ったと伝え聞いている。
言っちゃ悪いが、総理たるスーパーマンは国家が非常の時、日本国のすべての責任を最終的に支える人物として存在している。
日本国にとって深刻かつ重大な事案すべてが「初めてのこと」であり「想定外」の連続であって、有能な部下でさえ右往左往する事態に至ったとしても、総理は混沌とした状況の中にあって少ない情報で至短時間内に考えを纏め、判断し、決心し、最適と思う当面の処置を下して、それに敢然と立ち向かい国家と国民をいかなる危険からも守らなければならない。
短時間での判断にはミスもあろうが、情報が集まり次第、適度な結節でより良い方向へと修正を加えてゆくのは当然のことである。
私ごとき凡庸な一国民でさえこの時発した一言はスーパーマンたる総理が絶対に口にすべきことでないと心得ていた。
それにもかかわらず軽く口にしたのである・・・まさに「失望した!」の一言であった。
』
【何かと不安な大国:中国】
_




