以前、中国には「保八」というのがあった。
経済成長率が8%を切るとヤバイ、なんとしても「8%を保つ」というものである。
しかし、8%台の成長率を見ることなく、アッサリと9%から7%にダウンしてしまった。
では「保七」があるかというと、
「中国経済を維持するためにはぜひとも7%が必要」
というのが巷で大きく叫ばれていたが、用語としては定着していない。
変わってでてきたのが「新常態:ニューノーマル」という言葉。
これは習近平の発言のものとされているが、中身は
「6%台」を経済成長の常態にする
というものである。
よって、2015年から2017年の3年間は「6%台」で推移すると見られている。
2018年はじめに、習近平は主席任期を終了する。
それまでの3年間を新常態として維持するということである。
この間、中央政府は「280兆円」の財政融資をして支えるという。
2018年にはおそらく、習近平は2度目の5年間の党主席に着任するものとみられているから、次の
2018年から2022年の5年間はもしかしたら「新々常態」を宣言して「4%台」を常態とする
かもしれない。
また、
2015年にバブル崩壊の兆しが顕れ、2016年、2017年とその崩壊が続く、
と見る人が多い。
日本のバブル崩壊は2年8カ月とされている。
それを目安にすると、
今年後半をスタートとすると、2017年一杯続く
ということになる。
その後は日本と同じ長い「失われた中国の20年時代」に入り込んでいくのだろうか。
果たして、中国バブル崩壊は本当に来るのか。
バブル崩壊が始まる信号はなにか。
今知られているのは、
1].佳兆業集団 の「約6千7百億円」の返済
2].恒盛地産の「約3千7百億円」の純負債
などがある。
このいずれかがデフォルトすればバブル崩壊が始まったとみなされる。
「バブル崩壊はない」とする意見はこれらが
中央の健全な財政によって救済される(肩代わりされる)はずだ
というものである。
この2つが肩代わりされるとしても、これらがデフォルトしたということは、今後同じようなケースが頻発するということでもある。
それらすべてを中央が肩代わりするのであろうか。
もしそのすべてを肩代わりすれば確かにバブル崩壊は発生しない。
しかし、地方の尻拭いをすべて中央がやる、なんてことが可能だろうか。
もし、1つでもデフォルトが発生すれば連鎖がおき、それによってバブル崩壊が雪崩を打つことになる。
さて、中央はどこまで借金の肩代わりをする気があるのだろうか。
すべてはこの一点にかかっていると言ってよい。
280兆円の財政融資にシャドーバンク全面救済が織り込まれているのだろうか。
【参考】
『
NAVER まとめ
http://matome.naver.jp/odai/2142011670895894001
"バブル景気(バブルけいき)とは、
景気動向指数(CI)上は、1986年(昭和61年)12月から1991年(平成3年)2月までの51か月間に、日本で起こった資産価格の上昇と好景気、およびそれに付随して起こった社会現象とされる。
情勢自体はバブル経済と同一であり、平成景気(へいせいけいき)とも呼ばれる 。
日本国政府の公式見解では数値上、第11循環という呼称で、指標を示している。"
"バブル崩壊(バブルほうかい)は、
日本のバブル景気後退期または後退期末期から景気回復に転じるまでの期間を指す。
内閣府景気基準日付でのバブル崩壊期間(平成不況(第1次平成不況)や複合不況とも呼ばれる)は、
1991年(平成3年)3月から1993年(平成5年)10月までの景気後退期を指す(2年8カ月)。
バブル崩壊により1973年(昭和48年)12月から続いた安定成長期は終わり、
「失われた20年と呼ばれる低成長期」
に突入した。"
』
『
JB Press 2015.02.13(金) 藤 和彦
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42895
中国経済の急減速で原油価格は二番底へ
バブル崩壊、1バレル10ドル台突入の可能性も
2015年1月末からWTI原油先物価格は反転、2月3日に1カ月ぶりに1バレル当たり54ドル台まで上昇した。
過去7カ月に及ぶ価格急落局面を抜け出し、「強気相場に転じた」との観測が出された。米国で稼働中のリグ(石油掘削装置)の数が、2014年10月時点の1609基から1223基まで24%減り、3年ぶりの水準に落ち込んだからだ。
しかし翌4日、米エネルギー省が発表した米原油在庫統計は4週連続で増加し、過去最高を記録したため、50ドル割れの大幅安となった。
その後、中国人民銀行が金融緩和措置を発表すると再び50ドルを超えるなど、原油市場は2009年4月以来の高いボラテイリテイーであった(原油価格の2週間の上昇率は過去17年で最大であった)。
■膨大な原油在庫を抱え輸入量が減少した中国
供給面を見ると、米シェール企業の生産はいまだマイナスに転じておらず、OPEC諸国も増産基調にある。
ロシアの生産も2015年を通じて高水準で推移することが予想されている。
このため世界の原油在庫は歴史的な高水準が当分続き、原油価格の上値を抑える展開が続くと見込まれている(2月2日の週の米原油在庫が1982年8月以来の最高水準となったため、2月11日の原油価格は48ドル台に下落した)。
しかし、不透明な状況が続く中で筆者が注目しているのは、
中国経済の減速など需要面から悪影響が出てくること
である。
2014年末、市場関係者の間では、今回の原油安の要因について「65~80%が供給面で、需要面は残る20~35%」として、需要面での影響は「逆オイルショック」の時と比べて少ないとされていた。
確かに、現在の原油価格は需要面の要素はあまり織り込んでいない。
中国は、 2013年までの10年間で世界の原油需要の伸びの51%を占めてきた。
中国の2014年の原油需要は前年比3%増の日量1006万バレルと堅調であり、IEA(国際エネルギー機関)の予測によれば今後も年率約2.5%増とその伸びは安定的に推移し、2020年には日量約1200万バレルとなる見込みだ。
しかし、足元の原油需要拡大は原油価格上昇の材料となっていない。
政府が戦略備蓄を積み増しているとの見方が多いためだ。
2015年に入ると中国の1月の輸入額は前年比19.9%の減と5年8カ月ぶりの落ち幅だった。
原油輸入量も前年比0.6%減、前月比では7.9%減少している。
■日に日に深刻さを増す中国のキャッシュフロー
改革開放以来、特に21世紀以降「大躍進」を遂げてきた中国経済だが、いよいよ陰りが出始めている。
「日本経済新聞」は2015年2月3日付の紙面で「中国で賃金上昇が止まらない」という記事を掲載した。
中国でもっとも賃金水準が高い広東省深セン市は、3月1日付で最低賃金(1カ月)を現行から12.3%引き上げ、2030元(約3万8000円)とすることを決めた。
これは中国で初めての2000元の大台超えであり、2009年の同1000元からわずか6年で倍増したことになる。
景気減速で続く中国だが、賃金上昇の波は全国に及ぶと見られている。
中国の生産者物価指数はすでに3年近くマイナスであるにもかかわらず、賃金上昇率が毎年2ケタ台で推移している。
そのため、企業の多くは実質的には赤字に陥り、
キャッシュフロー不足が常態化しているのではないかとの懸念が高まっている。
また、中国の4大銀行の預金残高が統計開始以来初めて減少するとともに、政府の規制強化により、ここ数年爆発的に伸びてきたシャドーバンキング(信託会社やリース会社が資金を投資家から集めて一般の銀行が貸さないリスクのある事業に資金を提供する仕組み)部門の減速も見込まれている。
中国経済のキャッシュフロー不足は、日に日に深刻さを増している。
■人民銀行の懸案が「資金流入」から「資金流出」へ
中国は国内のキャッシュフロー不足に加えて、資金の国内外の流れも変わってきている。
特に注目すべきは、2014年第3四半期に統計開始後初めて
★.対外直接投資額が対内直接投資額を上回った
ことだ。
2014年全体の対内直接投資額は前年比1.7%増の1196億ドルで、米国を抜いて初めて世界一となったが、対外直接投資額も初めて1000億ドルを突破し、対内直接投資額を上回った。
2014年後半から中国資本による海外企業、特に不動産企業(ニューヨークのウオルドルフ・アストリア・ホテルなど)の買収などが話題を呼んでいる。
対外直接投資が急増している要因として、いわゆる「汚職マネー」の対外流出に関する規制が非常に厳しくなっている中で、直接投資に対する規制は相対的に緩いことが指摘されている。
★.直接投資分野での黒字が急減したことから、2014年の中国の外貨準備高の伸びは2000年以来の低水準だった。
★.2015年の直接投資収支は年間で赤字になる可能性が高く、これにより外貨準備高もマイナスに転じる可能性がある。
人民銀行が2月3日に発表した2014年第4四半期の資本・金融収支は912億ドルの赤字となり、1998年以降でもっとも大きな赤字幅となった。
★.このことは人民銀行の懸案が「資金流入」から「資金流出」へと様変わりしたことを意味する。
★.中国の場合、外貨準備高が「4兆ドル」もあるのに
国全体の対外純資産が「2兆ドル」しかない。
このことは民間部門が対外負債超過であることを意味する。
対外債務の中にはドル建てが多いため、米FRBによる2015年半ばの利上げ観測が高まっている状況下では、ドル債務の借り換えが一層困難になることは間違いない。
■電力消費量の伸び率も石炭の生産量も減少
世界銀行は、2014年の中国経済は購買力平価(PPP)で166年ぶりに世界一になると試算したが、2014年の経済成長率は前年比7.4%増と24年ぶりの低水準だった。
しかし政府が発表したこの「7.4%」という成長率を信じる専門家は少ない。
かつては「爆食経済」と称されたように、中国の生産活動には相変わらず大量のエネルギー資源が投入されている。
★.中国経済が本当に伸びているかどうかを見るには、
エネルギー消費量の伸びをチェック
するのが一番だ。
2013年の経済成長率は7.7%だったが、全国の電力消費量は同じ7%台の7.5%だった。
しかし、2014年の電力消費量の伸び率は、2013年の半分程度の3.8%に急減している。
エネルギー消費の7割を占める石炭の2014年の生産量も2000年以降初めて減少に転じている。
また、2014年1月から11月までの中国国内の鉄道貨物輸送量は前年比で3.2%減少している。
物流の大黒柱である鉄道の貨物輸送量がマイナス成長に転じていることは、エネルギー消費の動向と併せて考えると、
中国全体の経済活動がかなり冷え込んでいる
と考えて間違いはない。
国家統計局が発表した2015年1月の製造業購買担当者指数(PMI)は49.8となり、景況判断の節目となる50を2年4カ月ぶりに割り込んだ。
だが、中国政府は成長刺激のために財政支出を拡大する計画はないとの見解を繰り返している。
■中国経済はいよいよバブル崩壊のカウントダウンに
IMFは中国の経済成長率を
2015年は6.8%、2016年は6.3%に
なると予測しているが、深刻なのは労働力人口の減少である。
2014年の労働年齢人口(16~59歳)は3年連続の減少となり(2014年は371万人、2013年は244万人、2012年は345万人)、今後10年は労働力が過去20年間ほどは成長に寄与しないことが明らかになっている。
高齢化が急速に進行し、
「5年後には人口13億人のうち6億人を、働く世代が支えなければならない時代が来る」
とする向きもある。
中国の粗鋼生産量は1996年に1億トンを突破して世界一になった。
それ以降、21世紀に入っても急拡大を続けてきたが、2014年の伸びは2000年以来の低水準だった。
2015年にはついに生産のピークに達するとの見方が一般的になっている。
中国の鉱工業生産額は2001年にドイツ、2006年に日本、2009年に米国を抜き、2013年には3646億ドルに達した。
2000年から2013年にかけての伸び率を平均すると33.4%となる。
これは世界全体の10倍以上のスピードである。
世界経済のデフレ化が懸念される中で、3646億ドルという数字が今後10年間で3分の2になったとしても、
世界経済の供給過剰状態は解消できない
かもしれない。
また、2014年12月の新築住宅価格が8カ月連続で下落するなど不動産市場の在庫が依然として高水準であることから、不動産会社のデフォルト懸念が日増しに高まっている。
2014年末には国家所属のシンクタンク(国務院発展研究センター)が、「長年蓄積してきた不動産場バブルが、需要の萎縮によって2015年に破裂するかもしれない」とバブル崩壊の可能性を認めるまでになっている。
このため国内の社債市場も変調をきたしており、資金の流通速度はますます下がっていくことだろう。
★.企業がデフォルトに追い込まれるのは不良資産の大きさではなく資金繰りがつかなくなった時である。
かつてないほど資金繰りが困難になっている
中国経済はいよいよバブル崩壊のカウントダウンに入った
のではないだろうか。
過去20年以上続けてきた債務バブルが破裂してしまえば、原油価格下落による恩恵など役に立たない。
中国経済が2015年以降本格的に減速すれば、中国の原油需要の伸びが大幅なマイナスに転じる可能性があり、世界の原油需要が減少に転じるのは必至だ。
原油価格に対してもう一段の下押し圧力になることは間違いない。
★.中国のバブル崩壊で1バレル10ドル台の可能性も
今後の原油価格を占う点で注目すべきポイントは、以上のように、シェール企業とサウジとのチキンゲームという供給面から、中国経済の急減速という需要面に変わりつつある。
元日銀審議委員の中原伸之氏も2015年1月6日に、
「最近の原油市況は中国経済の成長ペースに連動しており、今後は中国の成長率が5%台などへ減速する中、原油価格が本格反転する材料はない」
との見方を示し、その上で原油価格は「20ドル台まで下落しても全く不自然ではない」とコメントしていた。
1月16日付「ウオール・ストリート・ジャーナル」も、
「1985年11月から1986年3月にかけて原油価格は67%暴落した。
2014年6月から今日までに原油価格は57%急落したが、さらに下げる可能性が高い」
と指摘している。
★.中国で不動産バブル崩壊による金融危機が発生すれば、原油価格は1バレル当たり10ドル台になる可能性すらある。
このように今回の原油価格の下落局面はまだ6合目程度であり、さらなる下落前の「踊り場」に過ぎない。
足元の原油価格の上げ下げに一喜一憂するのではなく、以前から指摘しているように、原油価格の新しい取引レンジは「1バレル当たり20ドルから50ドル」になったと覚悟し、デフレ化する世界経済に対して毅然として立ち向かうことが肝要である。
』
『
FOCUS-ASIA.COM 2月16日(月)11時42分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150216-00000017-xinhua-cn
「次期五カ年計画中のGDP成長率は最低6.5%必要」 中国発改委幹部
国家発展改革委員会発展計画司の徐林司長は
「今年のGDP成長率が7%を維持するなら、
第十三次五カ年計画(2016-2020年)中のGDP成長率は最低でも6.5%が必要になる」
と述べた。
2月16日、中国証券網が伝えた。
徐林司長は
「第十三次五カ年計画中は科学技術、人材、教育など経済成長のための新たな動力を加速させ、国際競争力の優位性を伸ばさなければならない。
海外進出のためには、生産設備の移転だけでなく、国際ルールの制定にも積極的に参加するべきだ」
などと提示した。
』
『
サーチナニュース 【経済ニュース】 2015/02/20(金) 13:10
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0220&f=business_0220_051.shtml
ニューノーマルがもたらす地方経済の成長格差
全人代はどう応えるか=大和総研が注目
全国人民代表大会(全人代)の開催を3月5日に控え、各省・自治区・直轄市での人民代表大会が開催され、各地域ごとの2015年の経済目標が明らかになった。
大和総研経済調査部のシニアエコノミスト齋藤尚登氏が各地方の経済目標に基づいて2015年2月20日にレポート
「地方政府から見たニューノーマル」(全9ページ)
を発表した。
経済構造の高度化を推し進めようとするニューノーマル(新常態)は、重工業を産業の中心に置く地方経済の成長鈍化をもたらしている。
齋藤氏は、
「全人代で資源・重工業の比率が大きな省へのサポート政策が示されるか注目される」
としている。
レポートの要旨は以下のとおり。
◆:ニューノーマル(新常態)には、
経済構造の高度化や質的向上を内包する、前向きなニュアンスが込められているが、
その痛みが、一部地方に集中して発現していることも事実である。
2014年の実質経済成長率は、
中国全体の前年比7.4%に対して、
山西省は同4.9%、
黒竜江省は同5.6%、
遼寧省は同5.8%
にとどまった。
これらは石炭など資源や鉄鋼・セメントなど重工業を中心とする地方であり、内需減速による需要低迷や過剰生産設備を抱える重工業分野の新規投資の落ち込みなどが、鉱工業生産の低迷や固定資産投資の大幅減速をもたらした。
遼寧省に至っては、2014年の固定資産投資は同1.5%のマイナスに落ち込んだ。
◆2014年の実質成長率の実績と2015年の目標を比較すると、
19地方が2015年の目標を低くし、3地方が同じ、
9地方が実績より高い目標設定となっている。
2015年の成長鈍化を想定する地方は、
(1):製造業投資は質の高いものを厳選する
その一方、産業構造高度化に寄与する戦略的新興産業向け投資などを促進するというメリハリを付けつつ、固定資産投資の全体の伸びは抑制する、
(2):伝統的サービス産業に加え、ハイテク関連サービス(情報、研究開発)など現代サービス産業をリード役とする、
との方針を掲げたところが多い。
◆2015年の目標を2014年の実績よりも高く設定した地方は、
1).経済発展段階が低いためにやや高めの成長率を維持したい西部のいくつかの省と、
2).2014年の成長率が大幅に低下した資源・重工業大省
に二分される。
難しいのは、中国全体として固定資産投資の減速が想定されるなか、後者を如何にして下支えするかであろう。
大和総研は、3月5日から開催される全人代で、景気失速リスクを抱える資源・重工業大省への政策対応、特に財政政策でどのような方針が打ち出されるかに注目している。
2015年は財政赤字と地方債発行のある程度の拡大が想定され、財政支出の向け先や地方債発行の配分における資源・重工業大省へのサポートが注目される。
さらに、一部地方政府の財政収入の伸び鈍化が想定されるなか、中央政府からの財政移転の重要度が増していることは言うまでもない。
』
『
サーチナニュース 【経済ニュース】 2015/02/26(木) 09:10
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0226&f=business_0226_011.shtml
24年ぶりの低成長となった中国経済
ニューノーマル(新常態)とは=大和総研
2014年の実質成長率が7.4%と24年ぶりの低成長となった中国経済は、習近平政権が掲げる
「ニューノーマル」(新たな状態)
を旗印に、高成長から中高成長への軌道修正を図っている。
★.2015年の経済成長率は7%程度と目される中国が、「想定以上の減速」になると、世界経済のリスク要因にもなりかねない。
大和総研の経済調査部長である小林卓典氏が2015年2月25日に「中国経済のニューノーマル」(全1ページ)を発表し、中国経済の現状についての見方を示した。
レポートの要旨は以下のとおり。
「
習近平政権は高成長から中高成長へ移行した中国経済の姿をニューノーマル「新たな常態」と表現している。
他方、中国経済が想定以上に減速する可能性を、世界経済にとってのリスク要因として位置づける見方は今年も多い。
昨年の実質成長率7.4%は24年ぶりの低成長であったが、景気減速に悩む新興国の中では依然として高い数字である。
しかし、本当に7%台の持続的な成長が可能なのか、内需の低迷は深刻ではないかと懸念させる材料は多い。
代表例は粗鋼生産量である。
世界鉄鋼協会(World Steel Association)によれば、2014年の中国の粗鋼生産量は約8億2千万トン、世界シェアは約50%と、圧倒的な存在感を示した。
しかし、伸び率は前年からわずか0.9%増に止まり、1981年以来の低さとなった。
2013年の11.5%増から急ブレーキがかかり、供給過剰の解消を急ぐ必要に見舞われた格好だ。
これは鉄鋼価格の下落と急激な輸出拡大をもたらした。
2014年の粗鋼輸出量は50.4%増の約9千4百万トンと急増した。
同年の日本の粗鋼生産量が、約1億1千万トンであったから、中国はそれに近いすさまじい量の鉄鋼を輸出したことになる。
中国の内需低迷によってアジア市場で鉄鋼価格は下落。
原料の鉄鉱石は過剰となり、原料を供給する資源国の景気にも大きな影響を与えている。
当社では、2015年の中国の実質GDP成長率を7.0%と予想している。
その意図するところは、今年の四半期ごとの成長率は7%を上回ることもあれば下回ることもあり得る、
仮に中国の成長率が「6%台」に低下したとしても、もはや驚くにはあたらない
ということである。
」
中国のニューノーマルが安定成長への軌道修正を果たすのか、供給過剰体質ゆえの不安定性を見せ続けるかは、世界経済の先行きを占う上での重要な論点である。
(情報提供:大和総研、編集担当:徳永浩)
』
『
2015.03.05(木) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43115
中国全人代、李克強首相が年間の政策目標発表へ
(2015年3月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
中国の代用的な国会である全国人民代表大会(全人代)が1週間の年次全体会議に向けて準備している。
北京の人民大会堂で行われる3月5日の開幕式典では、李克強首相が年に1度の政府「活動報告」を発表する。
報告書には過去1年間の成果と次の1年間の高い目標が盛り込まれ、防衛から宗教問題、「中国の特色ある社会主義的法治」の追求における勝利まで、あらゆるものが網羅される。
李首相は3時間近くにわたり、ほとんど休むことなく、厳選された数千人の代表団を相手に報告書全体を律儀に読み上げる。
これは中国の指導者たちが秘密の教養学校で訓練されると言われている妙技だ。
1週間ほどすると、報告書は共産党によって事前に慎重に用意されたその他いくつかの文書とともに、全人代に集まった数千人の代表団によって圧倒的多数で承認される。
今年の全人代の手続きで注目すべき重要な点をいくつか挙げよう。
■中央計画の名残
経済が減速し、デフレが迫り来る中で、中国政府は年間国内総生産(GDP)成長率の目標を昨年の「7.5%前後」から2015年の「7%前後」へ引き下げることになるだろう。
消費者物価上昇率の目標も恐らく、昨年の3.5%から3%へと引き下げられる。
昨年、中国は購買力ベースで米国を抜いて世界最大の経済大国になったが、成長率はほぼ四半世紀ぶりの低さだった。
7.4%という成長率は、厳密に言えばまだ「7.5%前後」だが、政府の年間目標には届かなかった。目標に届かなかったのは、中国が1980年代半ばに年間成長目標を公表し始めて以来、わずか3度目のことだ。
通常保守的な国際通貨基金(IMF)は直近の予想で、主に不動産市場の落ち込みのために、
中国は7%に引き下げられた成長目標にさえ届かず、6.8%の成長を記録する可能性が高い
と述べた。
』
_