『
TBSニュース 2015/03/07
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2438980.html
大気汚染告発の動画が視聴不能に 中国
中国で国営テレビの元女性記者が自主制作し、ネット上で大反響を呼んでいた大気汚染のドキュメンタリーが、6日夜から中国国内で視聴できなくなっていることがわかりました。
国営中国中央テレビの元記者、柴静さんが先月、無料動画サイトで公開した「PM2.5」をめぐる大気汚染のドキュメンタリーは、
再生回数が初めの24時間で1億回、
公開から4日後には3億回
を超えました。
ところが6日夜になって、中国の各動画サイトで一斉に柴さんのドキュメンタリーが視聴できなくなっていることがわかりました。
習近平指導部はこれまで柴さんのドキュメンタリー公開を事実上容認してきましたが、大気汚染が「全人代」でも主要なテーマとなる中、あまりの反響の大きさに国民の不満が膨れ上がることを恐れた政府が公開を制限した可能性があります
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年3月3日(火) 14時10分
http://www.recordchina.co.jp/a103464.html
中国で環境保護がテーマのドキュメンタリーが話題、
PM2.5に焦点―中国メディア

●2日、中国中央テレビの元記者・柴静さんが自費製作した環境保護がテーマのドキュメンタリーが話題を呼んでいる
●高清版:柴静雾霾调查:穹顶之下
2015/02/28 に公開 511,584
<予備>
https://www.youtube.com/watch?v=BgEpruEOrFg
●[半小時短版] 柴靜霧霾調查:穹頂之下(2015)
2015/03/01 に公開 2,362
2015年3月2日、中国中央テレビ(CCTV)の元記者・柴静(チャイ・ジン)さんが自費製作した環境保護がテーマのドキュメンタリー「穹頂之下」(103分)が先月28日、インターネットを通して発信され、話題を呼んでいる。新華社が伝えた。
大手サイトにおける同作品のクリック・ダウンロード数は1日で延べ1億回に達したとの統計もあり、SNSなどでも同作品の話題で持ちきりだ。
柴さんが複数の協力者と共に1年かけて製作した同作品は、大気汚染が原因のスモッグが問題になる過程やその解決策にスポットを合わせており、目を覆いたくなるような汚染現場も度々登場するほか、多くの専門家も取材。
関連のデータを収めると同時に、製作者の思いも込められている。
ここ数年、工場などからの排煙や自動車の排気ガス、工事現場から出るホコリなどが原因のスモッグが中国の一部の地域の大きな問題となっている。
ネット上では、
「同作品は問題の的をついており、米国の作家レイチェル・カーソンの『沈黙の春』(1962年)を思わせる」
との声もある。
同書は、米国において1960年代、環境保護が進むきっかけとなり、世界でも環境問題に注目が集まった。
しかし、
「同作品には不正確な部分も存在する」
という声のほか、製作者個人の環境保護に違反するとされる行為に対する批判、
「個人の感情が入りすぎ」
という声なども上がっている。
それでも、
「作品の内容と個人は無関係で、正しいことが論じられているのであれば支持するべき」
との声も多い。
同作品は影響力が強く、社会の環境保護に対する意識や科学知識の向上を促進しているほか、知識を行動に移すよう促す力を持っている。
北京で開幕する全国両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)を目前に控えた時期に、同作品が配信されたこともあり、全国政治協商会議(政協)の呂新華(ルー・シンホア)報道官は、
「私も同作品を見た。科学的な観点で論じられている点が重要」
とし、
「微小粒子状物質PM2.5の成分は何なのか、人の脳や血管、心臓、肺、胃にどのような影響があるのかなどの調査が時間をかけて行われている」
と評価した。
呂報道官はさらに、
「同作品が国民の注目を集めているのはいいこと」
とした上で、
「中国が特殊な発展段階にあることや、
中国政府がスモッグ解決のために大きな努力を払っていることにも注目しなければならない」
との見方を示している。
環境業界の関係者の多くは、
「中国の汚染はまだ悪化しており、今後、工業化の中間レベルに達する。
発展を遂げながら、汚染も改善しなければならない。
『発展の権利』と『健康の権利』のせめぎ合い」
と分析している。
中国で1月1日から史上最も厳格と言われる「新環境保護法」が施行された。
全国政協委員である中国環境保護部生態レッドライン制定専門家グループの高吉喜(ガオ・ジーシー)グループ長は、
「環境問題は非常に大きな問題。監督と法律の遵守が重要」
と指摘している。
(提供/人民網日本語版・翻訳/KN・編集/武藤)
』
『
Jiji.com (2015/03/06-16:32)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2015030600659
称賛と批判、社会分裂の現実
=PM2.5番組の余波広がる-中国政府「統制」に転換

●中国の著名女性記者、柴静さん=2012年3月、北京(Imaginechina=時事)
【北京時事】
中国国営・中央テレビを離職した著名女性記者、柴静さん(39)が、微小粒子状物質PM2.5の実態を調査し自主制作したドキュメンタリー番組の余波が拡大している。
「称賛」と「批判」。
大気汚染という全国民が抱える難題でも世論が分裂するのは、「共通認識」を得て共に行動を起こすことが難しい中国社会の現実を露呈した形だ。
◇「改革後押し」か「政府が利用」か
「穹頂(天空)の下」と題した103分のドキュメンタリーは、5日の全国人民代表大会(全人代=国会)開幕を控えた2月28日、インターネットの動画サイトで公開。
大きな反響を呼び、数億人が視聴したとされる。
環境規制があっても守られていない現実を批判し、利権のため市場を独占して質の悪いガソリンを供給し続ける大手石油会社の体質に切り込んだ。
★.「称賛派」は、民間の視点で市民の環境意識を高めた勇気ある柴さんの行動に心を打たれ、「民間から改革を後押しできる」と歓迎した。
★.一方、「批判派」の一部は「陰謀論」を唱える。
柴さんが通常では取材が難しい環境政策の政府高官にインタビューでき、番組が共産党機関紙・人民日報のサイトでも公開されたことから、「全人代を前に大気汚染対策をアピールしたい党・政府に利用されている」と主張する。
汚染対策の強化や国有企業の利権解体は全人代の焦点。
李克強首相は5日の政府活動報告で
「環境汚染は民生の患い、民心の痛みだ」
と訴えた。
これに対して「批判派」の中には、
「大気汚染の根本的原因は共産党一党体制による弊害が背景にあるが、柴さんはここを強く批判していない」
とした上で、政府との協調姿勢では問題解決は厳しいという声も出ている。
◇世論安定へ「民間」排除
1日には番組を視聴した陳吉寧・新環境保護相が記者団に柴さんの行動を絶賛したが、番組へのあまりに大きな反響に、
メディア規制を統括する党中央宣伝部は3日、国内メディアに対し、全人代では柴さんの番組をこれ以上報道・評論しないよう指示。
「秘密」扱いの指示内容がネット上で暴露された。
結局、全人代や中国メディアから番組に関する話題は消え、李首相ら政府高官の公式見解だけがクローズアップされた。
政府が選んだのは「民間」の言論を排除して世論の安定を保つといういつもの管理方法だった。
言論統制が厳しい中国では、当局の意向を無視すれば、番組を世に出すこともできないのが現実。
柴さんもPM2.5問題の深層を告発するため、ギリギリの線で番組を制作した。
改革派学者は
「中国に言論の自由があれば、(思い切って表現できるため、作品に対して)大きな主張の争いは起こらないだろう」
と解説する。
著名な自由派作家・慕容雪村氏は「柴静事件と中国の言論空間」と題する文章をネットで発表。
「(意見が対立する)両派ともPM2.5が嫌で、根絶を願っている。
同じ目標を持っても激烈な争論になるのは、中国言論空間の状況を表している」
とした上で、こう続けた。
「(言論統制で)言論空間が圧縮され、
一部は党・政府寄りに、
一部は沈黙し、
一部は(体制に)過激になり、
中間派は減っている。
政治、経済、環境などいかなる議題でも、よく似た衝突と騒ぎが引き起こされるだろう」。
』
『
AFPBB ニュース 2015年03月08日 13:34 発信地:北京/中国
http://www.afpbb.com/articles/-/3041832
ネットで大ヒットの大気汚染映画、動画サイトで視聴不可に 中国

●ネットで大ヒットの大気汚染映画、動画サイトで視聴不可に 中国 写真拡大 ×中国・上海で建設中の上海タワーの109階部分から撮影した、スモッグで灰色にかすんだ同市の市街地(2014年10月16日撮影、資料写真)。(c)AFP/JOHANNES EISELE
【3月8日 AFP】
インターネット上で公開され、再生回数が1億5000万回を超える大ヒットとなった中国の深刻な大気汚染問題を告発するドキュメンタリー映画が、公開からわずか数日で閲覧できない状態となっている。
国営中国中央テレビ(CCTV)のニュースキャスターだった柴静(Chai Jing)氏が自主制作した「穹頂之下(Under the Dome)」は7日午後の時点で、
★.「優酷(Youku)」、「愛奇芸(iQiyi)」など国内の主要な動画サイトのいずれでも視聴不可
となっていた。
中国版の『不都合な真実(An Inconvenient Truth)』
として称賛する人もいる全編103分のこの映画は、動画投稿サイトのユーチューブ(YouTube)では現在も再生が可能。
★.ただ、中国ではユーチューブ自体が遮断されている。
先月28日にインターネット上に公開されてからわずか1日で中国本土での再生回数が1億5500万回を超えたこの映画が遮断されたことは、大気汚染問題に関する国民の声に中国共産党が敏感になっていることを改めて示すものだ。
また、中国当局はこの動画を国営の出版物や放送メディアに積極的に取り上げさせる方針をわずか数日前に示したばかりだったが、その方針が突然変わったことも意味している。(c)AFP/Felicia SONMEZ
』
★.中国国内では視聴不能になっているのに人民網が記事にするとは。
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年3月8日(日) 14時3分
http://www.recordchina.co.jp/a103669.html
中国の環境汚染問題、
日本の高度経済成長期の経験を教訓に―中国メディア
2015年3月5日、中国中央テレビ(CCTV)の元記者、柴静(チャイ・ジン)さんが自費製作した環境保護がテーマのドキュメンタリー「穹頂之下」が話題になっている。
多くの国の高度経済成長期において、多かれ少なかれ公害問題が発生してきた。
隣国日本でも、1950年から1970年にかけての高度経済成長期には公害が発生し、多くの市民に被害をもたらした。人民網が伝えた。
当時の日本は、欧米諸国に追いつき追い越すために重工業および化学工業を発展させ、世界の経済大国の仲間入りを果たすことに全国民が熱狂していた。
しかし、日本人は自国が急速に東洋の経済大国へと成長するのに酔いしれる一方で、経済活動によってもたらされる環境への負荷と公害に気づく人はほとんどいなかった。
目先の利益ばかりを追求した結果、
20世紀初頭に発生した世界の8大公害事件のうち、4件は日本で発生する
ことになった。
ここからも、当時の日本の公害問題の重大さがうかがえる。
当時、日本全国で重度の環境汚染による公害問題が相次いで発生した。
4大公害病(イタイイタイ病、水俣病、新潟水俣病、四日市ぜんそく)のうちの3つは重金属汚染による公害であった。
公害事件による日本社会および政治への影響は今に至るまで続いている。
公害対策基本法の制定後、重金属汚染問題は管理統制されるようになったが、発生した汚染の影響は今もこの島国から完全には消えていない。
厚生労働省による調査では、1911年に神通川流域で最初のイタイイタイ病患者の症例が発生したと推定されている。
しかし1950年代までこの恐ろしく得体の知れない疾病が認知されることはなかった。
イタイイタイ病の最初の患者の発生から約100年が経った今、中国の南都都市報記者は日本へ渡り、公害病被害者および、土壌学者、弁護団、市民団体の代表、および政府高官等各関係者への取材を敢行した。
中国への重金属汚染問題の未来への啓発になることを願う。
現在の日本においても、重金属汚染が直接的な原因で発病した患者であると認定されることは依然として困難である。
現在98歳になる女性は、96歳当時カドミウム汚染による疾病患者と診断された被害者の一人だ。
彼女が患った病気は非常にめずらしく、歩行ができない、また体への軽度の接触が骨のきしむような痛みを伴うため親族の支えを受けられない状態となっている。
公害問題への取り組みは1970年代から始まったにも関わらず、神通川の河流から土壌、住民に60年間流され続けていた鉱毒の影響は、日本で起きた大震災からの復興以上に複雑で解決困難であり、今も日本社会に影を落としている。
環境問題及び公害への取り組みがはじまって40年以上経つ今でも、被害者は不安を抱えつつ生活しており、日本社会が大きな経済的負担を払ったにも関わらず、土壌汚染の影は完全に消すことはできていない。
(提供/人民網日本語版・翻訳/YW・編集/武藤)
』
『
テレ朝ニュース 03/08 05:54
http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000045900.html
「大気汚染ドキュメント」中国のネットから削除
中国国営テレビの元人気キャスターが制作し、大きな話題となっている大気汚染のドキュメンタリー動画が中国のインターネットから削除されたことが分かりました。
ドキュメンタリー動画は元人気女性キャスターが制作し、先月末、インターネット上に公開したものです。
これまでに数億回以上、再生されていましたが、7日までに動画サイトから削除されました。
北京市民:「とても残念だ。同じ母親として共感していたのに」
動画には政府に批判的な内容も含まれていて、日本の国会にあたる全人代(全国人民代表大会)が開かれているなか、影響が広がることを恐れた中国政府が動画の削除を命じたとみられます。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年3月11日(水) 9時25分
http://www.recordchina.co.jp/a103969.html
各地で大気汚染反対デモ、警察は解散を命令―中国
2015年3月10日、RFI中国語版は記事
「中国各地で大気汚染反対デモが発生、警察が解散命じる」
を掲載した。
台湾・中央通訊社によると、陝西省西安市で8日、省政府庁舎前で大気汚染に抗議するデモが行われた。
参加者は約10人。
「ガンを引き起こすスモッグ、すべての人々に危害与える」
「スモッグ対策は政府に責任あり」
などのプラカードを抱えた。
その後、江西省カン州市寧都県、四川省楽山市、広東省東莞市でも呼応するデモが開催されている。
しかし検閲によりインターネットでは関連する写真や書き込みが削除されたほか、西安市デモの発起人らが拘束された。
デモの引き金となったのは著名な女性ジャーナリスト、柴静(チャイ・ジン)氏が発表したドキュメンタリー「ドームの下で」だ。
中国の大気汚染の現状を告発し、数億人が視聴したとされる。現在では検閲の対象となり中国国内では視聴できない状態となっている。
ある人権活動家は
「検閲の状況をみるに、中国当局は人々が大気汚染について議論することを望んでいないし、
プラカードを掲げて抗議することに反対しているようだ」
と嘆いている。
』
『
東洋経済onnline 2015年03月19日 野嶋 剛 :ジャーナリスト
http://toyokeizai.net/articles/-/63471
話題の「中国環境番組」、なぜ封殺されたのか
「当局お墨付き」のはずが、一転規制の対象に

●中国全土で話題になったドキュメンタリー。 なぜ消えてしまったのでしょう。
中国中央テレビ(CCTV)の元キャスターで、150万部のベストセラー作家、柴静(チャイ・ジン、39歳)という女性が制作したドキュメンタリーが2週間ほど前に突然、無料のネット視聴の形で発表された。
タイトルは『穹頂之下(Under the Dome)』(「ドームの下で」、リンクはYouTubeの日本語字幕つき動画)。
★:
発表と同時に広がった巨大な反響を理解するには、視聴回数を紹介するだけで十分だろう。
中国の動画配信サービス「優酷」や「愛奇芸」「騰訊」などでの
視聴回数は28日に5000万回、3月1日に1億5000万回、2日には2億回
に達したとされる。
発表直後から「人民網」という人民日報系のウエブサイトは大々的に紹介し、本人のインタビューも掲載。
ほかの政府系メディアでも盛んに報道され、SNS上ではリンクを張ったコメントが洪水のようにあふれた。
■中国人は「PM2.5」なんてあまりわからない?
ここままでは文句のつけようのない大成功だった。
ところが、暗雲はすぐに漂い始める。
中国当局の言論規制のメカニズムが動き出したのである。
現在、中国国内で「ドームの下で」はいっさい、公の場で語られることも報じられることもない。
たった2週間あまりで、何が起きたのだろうか。
日本では「PM2.5」と言えば、それ以上の説明がいらないぐらい、中国での大気汚染問題の深刻さは誰もが知っている話になった。
しかし、中国でPM2.5と言っても中国人はあまり分からない。
中国語では、このPM2.5をひっくるめた大気汚染問題のことを「霧霾」と呼ぶ。
読みは「ウーマイ」。
霧はそのままの意味で、霾は硫酸や硝酸、ほこりなど微粒物質が空気中にただよって視界が悪くなる状態のこと。
要するに、工場排煙や車の排ガスなど人為的な公害で空気が悪くなった状態のことである。
中国語は語感が大切にされる言葉だ。
この「ウーマイ」という単語が今中国語の中で持つ、ただならぬ毒々しさは、「病毒」(ウイルス)とか「屠殺(虐殺)」などの言葉並みの悪辣なニュアンスを漂わせている。
そこには、中国の人々にとって、この問題への嫌悪感や憎しみ、諦め、不満などが言葉にこもっているからだ。
そんな不快な気分が「ドームの下で」で一瞬、すっきりと晴れ渡ったように一掃されてしまったのだ。
まるで、春一番のようなもので確かに「快挙」であった。
問題は、この告発ドキュメンタリーが、いかなる意図と経緯で制作され、いかなる理由と判断によって禁じられたのかという点だ。
柴静は中国メディアの体制内ジャーナリストとしては最高レベルの知名度を誇っている女性で、CCTVの看板番組でキャスターを務め、SARSや四川震災における果敢な現場報道で有名になった。
もともと大気汚染がひどいことで有名な中西部の山西省出身ということもあり、環境問題に熱心でもあった。
2013年に発表した「看見」は150万部のベストセラーとなり、日本語にも「中国メディアの現場は何を伝えようとしているか」というタイトルで翻訳されている。
■「当局の仕込み」なのか
ドキュメンタリーの内容については、すでに各方面で紹介されているので簡単にとどめるが、各地の大気汚染の深刻さを紹介しながら、汚染物質を垂れ流す企業を批判し、人民1人ひとりに「告発」をする行動を求めている。
104分の長さだが、映像効果的にもアップルの新商品発売のように、柴静が聴衆に向かってパワーポイントを用い語りかけるスタイルで、引き込まれるように見てしまう。
内容への批判はいろいろあるが、細かい点をつつこうとすれば何とでも言える。
全体の印象として、ドキュメンタリー番組として非常によくできたもになっていることは間違いない。
「ドームの下で」が発表されたのが中国で年に一度開かれる「両会」(全国人民代表大会と全国政治協商会議)の開催直前ということもあって大きな話題となったが、熱が少し冷めた頃に人々が議論を始めたのが、これが「当局の仕込み」だったのかどうか、だった。
中国共産党の情報統制に長年痛い目にあってきている「公知(公共知識人の略)」と呼ばれる作家やコラムニスト、メディア人たちは、総じて、柴静の報道に対して懐疑的な視線を向けた。それには主にこんな推察がある。
・ 両会の直前という政治的敏感期に、あえてこうしたコントラバーシャルな番組を発表したこと自体、何かのバックがなければできない。
・ 人民日報傘下の「人民網」などが大々的に報じたことは、当初は宣伝部門も了解していた可能性がある。
・ 取材に応じた多くの学者や官僚たちは「フリージャーナリスト」のインタビューに応じることはないので、当局お墨付きの取材との理解があったはず。
一方で、柴静の個人的問題に対しても、いろいろな批判が出た。
たとえば、彼女が大型のランドクルーザーを運転していることや、自身ではタバコを吸っていることなどを理由に、必ずしもエコライフを送っていないという批判も広がり、ネット上は「柴静支持派」と「反柴静派」で割れてしまった。
また柴静が、出産のために一時米国に渡っていたことから、米国が資金を出した、との陰謀説もあった。
作品のスタンスがゴアの「不都合な真実」に似ていたことも米国陰謀説の推測を生んだ理由の一つだろう。
いずれにせよ、当初は優勢だった「仕込み説」だが、「ドームの下で」が言論規制の取り締り対象になると、それが揺らぐことになる。
現地のメディア関係者などによると、最初は1日に口頭などで「ドームの下で」に関する報道や評論を目立った形で掲載しないよう、口頭の指示が宣伝部門から伝えられたという。
人民網をはじめとする主要メディアは、ここで報道をサイトから下ろした。
私がコラムを持っているブログサイト「大家」でも、1日までにあった別々の筆者が書いた2本のコラムが、同時に消えてしまった。
そのあと3日(5日という説もある)にはいっさいの報道をしないように文書での指示が出され、すべての記事が消去された。
この指示のコピーと見られる内容が海外の中国人向けニュースサイトで報じられているが、コピーを流したとされる上海の新聞社の社員が停職になったとも伝えられている。
8日までに、とうとう残っていた「優酷」などのオリジナルの動画も見られなくなった。
いまも
YouTubeなど海外の動画サイトでは見ることができるが、
完全に中国大陸では「封殺」されてしまった
のである。
こうしたところから見れば、確かに、このドキュメンタリーが当局と柴静による完全な「協力作品」であるとは言えないように思える。
■「政府を挙げてのキャンペーン」にできなかった?
今回の件について、中国のベテラン記者はこう解説する。
「少なくとも、柴静の報道は、当局の一部の支持、あるいは暗黙の了解を受けた中で行われたことは明らかですが、
全党、全政府までの支持を得たものではなかったので、対応に一貫性が欠けた形になっているのです」。
柴静に協力した政府部門は明らかに環境保護部だった。
「ドームの下で」を発表した翌日、ちょうど新任の環境保護部長の陳吉寧が就任した日で、陳吉寧が柴静の番組を賞賛し、
「大衆の環境や健康への問題意識を呼び起こした。この点は特に素晴らしい」
と述べている。
また、陳吉寧は、柴静の番組をレイチェル・カーソンの「沈黙の春」になぞらえたという。
「ドームの下で」の中でも、柴静の取材に対し、環境保護部の幹部は、石油や鉄鋼など環境汚染の元凶とされる大企業を指して「一部の企業は我々の指導を無視している」と批判していることからしても、環境保護部門の理解と支持を得ていたことは推察できる。
同時に、これらの企業からいっせいに内容について批判や反論のコメントが出たことからも分かるように、「政府を挙げてのキャンペーン」でもなかったことは間違いない。
そのため、政治闘争の一貫として柴静が利用されたとの説も出ている。
習近平政権が展開する反腐敗闘争の中で、江沢民氏や周永康ら敵方の背後にいるとされるのは、環境汚染の元凶でもある石油・石化関連企業。
「ドームの下で」によってこれらのグループに打撃を与えようとした習指導部が背後いたが、当初の予想を超えた反響もあって、宣伝部門も巻き込んだ巻き返しが行われ、報道禁止や動画の削除に至ったという見方だ。
すべてが「政治」に帰納する中国的な世界では一定の説得力を持って語られている。
何か真実であったかは現段階では確定することは難しい。
しかし、「環境」「大気汚染」といったテーマが、中国の人々がすでに爆発寸前のストレスを抱えていることは「ドームの下で」への異常とも言える反響からしても明らかだ。
16日に閉幕した全人代でも明らかになったように、中国は高度成長の時代を終えて、中成長の時期に入ろうとしている。
そんな中で、高度成長の犠牲品となっていた環境問題に取り組むことが次の中国の最重要課題の一つであることは「ドームの下で」という一つの実験で改めて浮き彫りにされたと言えそうだ。
』
レコードチャイナ 配信日時:2015年3月3日(火) 14時10分
http://www.recordchina.co.jp/a103464.html
中国で環境保護がテーマのドキュメンタリーが話題、
PM2.5に焦点―中国メディア

●2日、中国中央テレビの元記者・柴静さんが自費製作した環境保護がテーマのドキュメンタリーが話題を呼んでいる
●高清版:柴静雾霾调查:穹顶之下
2015/02/28 に公開 511,584
<予備>
https://www.youtube.com/watch?v=BgEpruEOrFg
●[半小時短版] 柴靜霧霾調查:穹頂之下(2015)
2015/03/01 に公開 2,362
2015年3月2日、中国中央テレビ(CCTV)の元記者・柴静(チャイ・ジン)さんが自費製作した環境保護がテーマのドキュメンタリー「穹頂之下」(103分)が先月28日、インターネットを通して発信され、話題を呼んでいる。新華社が伝えた。
大手サイトにおける同作品のクリック・ダウンロード数は1日で延べ1億回に達したとの統計もあり、SNSなどでも同作品の話題で持ちきりだ。
柴さんが複数の協力者と共に1年かけて製作した同作品は、大気汚染が原因のスモッグが問題になる過程やその解決策にスポットを合わせており、目を覆いたくなるような汚染現場も度々登場するほか、多くの専門家も取材。
関連のデータを収めると同時に、製作者の思いも込められている。
ここ数年、工場などからの排煙や自動車の排気ガス、工事現場から出るホコリなどが原因のスモッグが中国の一部の地域の大きな問題となっている。
ネット上では、
「同作品は問題の的をついており、米国の作家レイチェル・カーソンの『沈黙の春』(1962年)を思わせる」
との声もある。
同書は、米国において1960年代、環境保護が進むきっかけとなり、世界でも環境問題に注目が集まった。
しかし、
「同作品には不正確な部分も存在する」
という声のほか、製作者個人の環境保護に違反するとされる行為に対する批判、
「個人の感情が入りすぎ」
という声なども上がっている。
それでも、
「作品の内容と個人は無関係で、正しいことが論じられているのであれば支持するべき」
との声も多い。
同作品は影響力が強く、社会の環境保護に対する意識や科学知識の向上を促進しているほか、知識を行動に移すよう促す力を持っている。
北京で開幕する全国両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)を目前に控えた時期に、同作品が配信されたこともあり、全国政治協商会議(政協)の呂新華(ルー・シンホア)報道官は、
「私も同作品を見た。科学的な観点で論じられている点が重要」
とし、
「微小粒子状物質PM2.5の成分は何なのか、人の脳や血管、心臓、肺、胃にどのような影響があるのかなどの調査が時間をかけて行われている」
と評価した。
呂報道官はさらに、
「同作品が国民の注目を集めているのはいいこと」
とした上で、
「中国が特殊な発展段階にあることや、
中国政府がスモッグ解決のために大きな努力を払っていることにも注目しなければならない」
との見方を示している。
環境業界の関係者の多くは、
「中国の汚染はまだ悪化しており、今後、工業化の中間レベルに達する。
発展を遂げながら、汚染も改善しなければならない。
『発展の権利』と『健康の権利』のせめぎ合い」
と分析している。
中国で1月1日から史上最も厳格と言われる「新環境保護法」が施行された。
全国政協委員である中国環境保護部生態レッドライン制定専門家グループの高吉喜(ガオ・ジーシー)グループ長は、
「環境問題は非常に大きな問題。監督と法律の遵守が重要」
と指摘している。
(提供/人民網日本語版・翻訳/KN・編集/武藤)
』
『
Jiji.com (2015/03/06-16:32)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2015030600659
称賛と批判、社会分裂の現実
=PM2.5番組の余波広がる-中国政府「統制」に転換

●中国の著名女性記者、柴静さん=2012年3月、北京(Imaginechina=時事)
【北京時事】
中国国営・中央テレビを離職した著名女性記者、柴静さん(39)が、微小粒子状物質PM2.5の実態を調査し自主制作したドキュメンタリー番組の余波が拡大している。
「称賛」と「批判」。
大気汚染という全国民が抱える難題でも世論が分裂するのは、「共通認識」を得て共に行動を起こすことが難しい中国社会の現実を露呈した形だ。
◇「改革後押し」か「政府が利用」か
「穹頂(天空)の下」と題した103分のドキュメンタリーは、5日の全国人民代表大会(全人代=国会)開幕を控えた2月28日、インターネットの動画サイトで公開。
大きな反響を呼び、数億人が視聴したとされる。
環境規制があっても守られていない現実を批判し、利権のため市場を独占して質の悪いガソリンを供給し続ける大手石油会社の体質に切り込んだ。
★.「称賛派」は、民間の視点で市民の環境意識を高めた勇気ある柴さんの行動に心を打たれ、「民間から改革を後押しできる」と歓迎した。
★.一方、「批判派」の一部は「陰謀論」を唱える。
柴さんが通常では取材が難しい環境政策の政府高官にインタビューでき、番組が共産党機関紙・人民日報のサイトでも公開されたことから、「全人代を前に大気汚染対策をアピールしたい党・政府に利用されている」と主張する。
汚染対策の強化や国有企業の利権解体は全人代の焦点。
李克強首相は5日の政府活動報告で
「環境汚染は民生の患い、民心の痛みだ」
と訴えた。
これに対して「批判派」の中には、
「大気汚染の根本的原因は共産党一党体制による弊害が背景にあるが、柴さんはここを強く批判していない」
とした上で、政府との協調姿勢では問題解決は厳しいという声も出ている。
◇世論安定へ「民間」排除
1日には番組を視聴した陳吉寧・新環境保護相が記者団に柴さんの行動を絶賛したが、番組へのあまりに大きな反響に、
メディア規制を統括する党中央宣伝部は3日、国内メディアに対し、全人代では柴さんの番組をこれ以上報道・評論しないよう指示。
「秘密」扱いの指示内容がネット上で暴露された。
結局、全人代や中国メディアから番組に関する話題は消え、李首相ら政府高官の公式見解だけがクローズアップされた。
政府が選んだのは「民間」の言論を排除して世論の安定を保つといういつもの管理方法だった。
言論統制が厳しい中国では、当局の意向を無視すれば、番組を世に出すこともできないのが現実。
柴さんもPM2.5問題の深層を告発するため、ギリギリの線で番組を制作した。
改革派学者は
「中国に言論の自由があれば、(思い切って表現できるため、作品に対して)大きな主張の争いは起こらないだろう」
と解説する。
著名な自由派作家・慕容雪村氏は「柴静事件と中国の言論空間」と題する文章をネットで発表。
「(意見が対立する)両派ともPM2.5が嫌で、根絶を願っている。
同じ目標を持っても激烈な争論になるのは、中国言論空間の状況を表している」
とした上で、こう続けた。
「(言論統制で)言論空間が圧縮され、
一部は党・政府寄りに、
一部は沈黙し、
一部は(体制に)過激になり、
中間派は減っている。
政治、経済、環境などいかなる議題でも、よく似た衝突と騒ぎが引き起こされるだろう」。
』
『
AFPBB ニュース 2015年03月08日 13:34 発信地:北京/中国
http://www.afpbb.com/articles/-/3041832
ネットで大ヒットの大気汚染映画、動画サイトで視聴不可に 中国

●ネットで大ヒットの大気汚染映画、動画サイトで視聴不可に 中国 写真拡大 ×中国・上海で建設中の上海タワーの109階部分から撮影した、スモッグで灰色にかすんだ同市の市街地(2014年10月16日撮影、資料写真)。(c)AFP/JOHANNES EISELE
【3月8日 AFP】
インターネット上で公開され、再生回数が1億5000万回を超える大ヒットとなった中国の深刻な大気汚染問題を告発するドキュメンタリー映画が、公開からわずか数日で閲覧できない状態となっている。
国営中国中央テレビ(CCTV)のニュースキャスターだった柴静(Chai Jing)氏が自主制作した「穹頂之下(Under the Dome)」は7日午後の時点で、
★.「優酷(Youku)」、「愛奇芸(iQiyi)」など国内の主要な動画サイトのいずれでも視聴不可
となっていた。
中国版の『不都合な真実(An Inconvenient Truth)』
として称賛する人もいる全編103分のこの映画は、動画投稿サイトのユーチューブ(YouTube)では現在も再生が可能。
★.ただ、中国ではユーチューブ自体が遮断されている。
先月28日にインターネット上に公開されてからわずか1日で中国本土での再生回数が1億5500万回を超えたこの映画が遮断されたことは、大気汚染問題に関する国民の声に中国共産党が敏感になっていることを改めて示すものだ。
また、中国当局はこの動画を国営の出版物や放送メディアに積極的に取り上げさせる方針をわずか数日前に示したばかりだったが、その方針が突然変わったことも意味している。(c)AFP/Felicia SONMEZ
』
★.中国国内では視聴不能になっているのに人民網が記事にするとは。
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年3月8日(日) 14時3分
http://www.recordchina.co.jp/a103669.html
中国の環境汚染問題、
日本の高度経済成長期の経験を教訓に―中国メディア
2015年3月5日、中国中央テレビ(CCTV)の元記者、柴静(チャイ・ジン)さんが自費製作した環境保護がテーマのドキュメンタリー「穹頂之下」が話題になっている。
多くの国の高度経済成長期において、多かれ少なかれ公害問題が発生してきた。
隣国日本でも、1950年から1970年にかけての高度経済成長期には公害が発生し、多くの市民に被害をもたらした。人民網が伝えた。
当時の日本は、欧米諸国に追いつき追い越すために重工業および化学工業を発展させ、世界の経済大国の仲間入りを果たすことに全国民が熱狂していた。
しかし、日本人は自国が急速に東洋の経済大国へと成長するのに酔いしれる一方で、経済活動によってもたらされる環境への負荷と公害に気づく人はほとんどいなかった。
目先の利益ばかりを追求した結果、
20世紀初頭に発生した世界の8大公害事件のうち、4件は日本で発生する
ことになった。
ここからも、当時の日本の公害問題の重大さがうかがえる。
当時、日本全国で重度の環境汚染による公害問題が相次いで発生した。
4大公害病(イタイイタイ病、水俣病、新潟水俣病、四日市ぜんそく)のうちの3つは重金属汚染による公害であった。
公害事件による日本社会および政治への影響は今に至るまで続いている。
公害対策基本法の制定後、重金属汚染問題は管理統制されるようになったが、発生した汚染の影響は今もこの島国から完全には消えていない。
厚生労働省による調査では、1911年に神通川流域で最初のイタイイタイ病患者の症例が発生したと推定されている。
しかし1950年代までこの恐ろしく得体の知れない疾病が認知されることはなかった。
イタイイタイ病の最初の患者の発生から約100年が経った今、中国の南都都市報記者は日本へ渡り、公害病被害者および、土壌学者、弁護団、市民団体の代表、および政府高官等各関係者への取材を敢行した。
中国への重金属汚染問題の未来への啓発になることを願う。
現在の日本においても、重金属汚染が直接的な原因で発病した患者であると認定されることは依然として困難である。
現在98歳になる女性は、96歳当時カドミウム汚染による疾病患者と診断された被害者の一人だ。
彼女が患った病気は非常にめずらしく、歩行ができない、また体への軽度の接触が骨のきしむような痛みを伴うため親族の支えを受けられない状態となっている。
公害問題への取り組みは1970年代から始まったにも関わらず、神通川の河流から土壌、住民に60年間流され続けていた鉱毒の影響は、日本で起きた大震災からの復興以上に複雑で解決困難であり、今も日本社会に影を落としている。
環境問題及び公害への取り組みがはじまって40年以上経つ今でも、被害者は不安を抱えつつ生活しており、日本社会が大きな経済的負担を払ったにも関わらず、土壌汚染の影は完全に消すことはできていない。
(提供/人民網日本語版・翻訳/YW・編集/武藤)
』
『
テレ朝ニュース 03/08 05:54
http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000045900.html
「大気汚染ドキュメント」中国のネットから削除
中国国営テレビの元人気キャスターが制作し、大きな話題となっている大気汚染のドキュメンタリー動画が中国のインターネットから削除されたことが分かりました。
ドキュメンタリー動画は元人気女性キャスターが制作し、先月末、インターネット上に公開したものです。
これまでに数億回以上、再生されていましたが、7日までに動画サイトから削除されました。
北京市民:「とても残念だ。同じ母親として共感していたのに」
動画には政府に批判的な内容も含まれていて、日本の国会にあたる全人代(全国人民代表大会)が開かれているなか、影響が広がることを恐れた中国政府が動画の削除を命じたとみられます。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年3月11日(水) 9時25分
http://www.recordchina.co.jp/a103969.html
各地で大気汚染反対デモ、警察は解散を命令―中国
2015年3月10日、RFI中国語版は記事
「中国各地で大気汚染反対デモが発生、警察が解散命じる」
を掲載した。
台湾・中央通訊社によると、陝西省西安市で8日、省政府庁舎前で大気汚染に抗議するデモが行われた。
参加者は約10人。
「ガンを引き起こすスモッグ、すべての人々に危害与える」
「スモッグ対策は政府に責任あり」
などのプラカードを抱えた。
その後、江西省カン州市寧都県、四川省楽山市、広東省東莞市でも呼応するデモが開催されている。
しかし検閲によりインターネットでは関連する写真や書き込みが削除されたほか、西安市デモの発起人らが拘束された。
デモの引き金となったのは著名な女性ジャーナリスト、柴静(チャイ・ジン)氏が発表したドキュメンタリー「ドームの下で」だ。
中国の大気汚染の現状を告発し、数億人が視聴したとされる。現在では検閲の対象となり中国国内では視聴できない状態となっている。
ある人権活動家は
「検閲の状況をみるに、中国当局は人々が大気汚染について議論することを望んでいないし、
プラカードを掲げて抗議することに反対しているようだ」
と嘆いている。
』
東洋経済onnline 2015年03月19日 野嶋 剛 :ジャーナリスト
http://toyokeizai.net/articles/-/63471
話題の「中国環境番組」、なぜ封殺されたのか
「当局お墨付き」のはずが、一転規制の対象に

●中国全土で話題になったドキュメンタリー。 なぜ消えてしまったのでしょう。
中国中央テレビ(CCTV)の元キャスターで、150万部のベストセラー作家、柴静(チャイ・ジン、39歳)という女性が制作したドキュメンタリーが2週間ほど前に突然、無料のネット視聴の形で発表された。
タイトルは『穹頂之下(Under the Dome)』(「ドームの下で」、リンクはYouTubeの日本語字幕つき動画)。
★:
発表と同時に広がった巨大な反響を理解するには、視聴回数を紹介するだけで十分だろう。
中国の動画配信サービス「優酷」や「愛奇芸」「騰訊」などでの
視聴回数は28日に5000万回、3月1日に1億5000万回、2日には2億回
に達したとされる。
発表直後から「人民網」という人民日報系のウエブサイトは大々的に紹介し、本人のインタビューも掲載。
ほかの政府系メディアでも盛んに報道され、SNS上ではリンクを張ったコメントが洪水のようにあふれた。
■中国人は「PM2.5」なんてあまりわからない?
ここままでは文句のつけようのない大成功だった。
ところが、暗雲はすぐに漂い始める。
中国当局の言論規制のメカニズムが動き出したのである。
現在、中国国内で「ドームの下で」はいっさい、公の場で語られることも報じられることもない。
たった2週間あまりで、何が起きたのだろうか。
日本では「PM2.5」と言えば、それ以上の説明がいらないぐらい、中国での大気汚染問題の深刻さは誰もが知っている話になった。
しかし、中国でPM2.5と言っても中国人はあまり分からない。
中国語では、このPM2.5をひっくるめた大気汚染問題のことを「霧霾」と呼ぶ。
読みは「ウーマイ」。
霧はそのままの意味で、霾は硫酸や硝酸、ほこりなど微粒物質が空気中にただよって視界が悪くなる状態のこと。
要するに、工場排煙や車の排ガスなど人為的な公害で空気が悪くなった状態のことである。
中国語は語感が大切にされる言葉だ。
この「ウーマイ」という単語が今中国語の中で持つ、ただならぬ毒々しさは、「病毒」(ウイルス)とか「屠殺(虐殺)」などの言葉並みの悪辣なニュアンスを漂わせている。
そこには、中国の人々にとって、この問題への嫌悪感や憎しみ、諦め、不満などが言葉にこもっているからだ。
そんな不快な気分が「ドームの下で」で一瞬、すっきりと晴れ渡ったように一掃されてしまったのだ。
まるで、春一番のようなもので確かに「快挙」であった。
問題は、この告発ドキュメンタリーが、いかなる意図と経緯で制作され、いかなる理由と判断によって禁じられたのかという点だ。
柴静は中国メディアの体制内ジャーナリストとしては最高レベルの知名度を誇っている女性で、CCTVの看板番組でキャスターを務め、SARSや四川震災における果敢な現場報道で有名になった。
もともと大気汚染がひどいことで有名な中西部の山西省出身ということもあり、環境問題に熱心でもあった。
2013年に発表した「看見」は150万部のベストセラーとなり、日本語にも「中国メディアの現場は何を伝えようとしているか」というタイトルで翻訳されている。
■「当局の仕込み」なのか
ドキュメンタリーの内容については、すでに各方面で紹介されているので簡単にとどめるが、各地の大気汚染の深刻さを紹介しながら、汚染物質を垂れ流す企業を批判し、人民1人ひとりに「告発」をする行動を求めている。
104分の長さだが、映像効果的にもアップルの新商品発売のように、柴静が聴衆に向かってパワーポイントを用い語りかけるスタイルで、引き込まれるように見てしまう。
内容への批判はいろいろあるが、細かい点をつつこうとすれば何とでも言える。
全体の印象として、ドキュメンタリー番組として非常によくできたもになっていることは間違いない。
「ドームの下で」が発表されたのが中国で年に一度開かれる「両会」(全国人民代表大会と全国政治協商会議)の開催直前ということもあって大きな話題となったが、熱が少し冷めた頃に人々が議論を始めたのが、これが「当局の仕込み」だったのかどうか、だった。
中国共産党の情報統制に長年痛い目にあってきている「公知(公共知識人の略)」と呼ばれる作家やコラムニスト、メディア人たちは、総じて、柴静の報道に対して懐疑的な視線を向けた。それには主にこんな推察がある。
・ 両会の直前という政治的敏感期に、あえてこうしたコントラバーシャルな番組を発表したこと自体、何かのバックがなければできない。
・ 人民日報傘下の「人民網」などが大々的に報じたことは、当初は宣伝部門も了解していた可能性がある。
・ 取材に応じた多くの学者や官僚たちは「フリージャーナリスト」のインタビューに応じることはないので、当局お墨付きの取材との理解があったはず。
一方で、柴静の個人的問題に対しても、いろいろな批判が出た。
たとえば、彼女が大型のランドクルーザーを運転していることや、自身ではタバコを吸っていることなどを理由に、必ずしもエコライフを送っていないという批判も広がり、ネット上は「柴静支持派」と「反柴静派」で割れてしまった。
また柴静が、出産のために一時米国に渡っていたことから、米国が資金を出した、との陰謀説もあった。
作品のスタンスがゴアの「不都合な真実」に似ていたことも米国陰謀説の推測を生んだ理由の一つだろう。
いずれにせよ、当初は優勢だった「仕込み説」だが、「ドームの下で」が言論規制の取り締り対象になると、それが揺らぐことになる。
現地のメディア関係者などによると、最初は1日に口頭などで「ドームの下で」に関する報道や評論を目立った形で掲載しないよう、口頭の指示が宣伝部門から伝えられたという。
人民網をはじめとする主要メディアは、ここで報道をサイトから下ろした。
私がコラムを持っているブログサイト「大家」でも、1日までにあった別々の筆者が書いた2本のコラムが、同時に消えてしまった。
そのあと3日(5日という説もある)にはいっさいの報道をしないように文書での指示が出され、すべての記事が消去された。
この指示のコピーと見られる内容が海外の中国人向けニュースサイトで報じられているが、コピーを流したとされる上海の新聞社の社員が停職になったとも伝えられている。
8日までに、とうとう残っていた「優酷」などのオリジナルの動画も見られなくなった。
いまも
YouTubeなど海外の動画サイトでは見ることができるが、
完全に中国大陸では「封殺」されてしまった
のである。
こうしたところから見れば、確かに、このドキュメンタリーが当局と柴静による完全な「協力作品」であるとは言えないように思える。
■「政府を挙げてのキャンペーン」にできなかった?
今回の件について、中国のベテラン記者はこう解説する。
「少なくとも、柴静の報道は、当局の一部の支持、あるいは暗黙の了解を受けた中で行われたことは明らかですが、
全党、全政府までの支持を得たものではなかったので、対応に一貫性が欠けた形になっているのです」。
柴静に協力した政府部門は明らかに環境保護部だった。
「ドームの下で」を発表した翌日、ちょうど新任の環境保護部長の陳吉寧が就任した日で、陳吉寧が柴静の番組を賞賛し、
「大衆の環境や健康への問題意識を呼び起こした。この点は特に素晴らしい」
と述べている。
また、陳吉寧は、柴静の番組をレイチェル・カーソンの「沈黙の春」になぞらえたという。
「ドームの下で」の中でも、柴静の取材に対し、環境保護部の幹部は、石油や鉄鋼など環境汚染の元凶とされる大企業を指して「一部の企業は我々の指導を無視している」と批判していることからしても、環境保護部門の理解と支持を得ていたことは推察できる。
同時に、これらの企業からいっせいに内容について批判や反論のコメントが出たことからも分かるように、「政府を挙げてのキャンペーン」でもなかったことは間違いない。
そのため、政治闘争の一貫として柴静が利用されたとの説も出ている。
習近平政権が展開する反腐敗闘争の中で、江沢民氏や周永康ら敵方の背後にいるとされるのは、環境汚染の元凶でもある石油・石化関連企業。
「ドームの下で」によってこれらのグループに打撃を与えようとした習指導部が背後いたが、当初の予想を超えた反響もあって、宣伝部門も巻き込んだ巻き返しが行われ、報道禁止や動画の削除に至ったという見方だ。
すべてが「政治」に帰納する中国的な世界では一定の説得力を持って語られている。
何か真実であったかは現段階では確定することは難しい。
しかし、「環境」「大気汚染」といったテーマが、中国の人々がすでに爆発寸前のストレスを抱えていることは「ドームの下で」への異常とも言える反響からしても明らかだ。
16日に閉幕した全人代でも明らかになったように、中国は高度成長の時代を終えて、中成長の時期に入ろうとしている。
そんな中で、高度成長の犠牲品となっていた環境問題に取り組むことが次の中国の最重要課題の一つであることは「ドームの下で」という一つの実験で改めて浮き彫りにされたと言えそうだ。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年3月27日(金) 0時54分
http://www.recordchina.co.jp/a104873.html
中国の大気汚染告発動画の閲覧禁止、五輪立候補が関係か―香港紙

●24日、中国国営中央テレビの元記者・柴静さんが制作した大気汚染を告発する動画が中国当局の統制でネットで視聴できなくなった問題について、香港紙・蘋果日報は「中国が22年冬季五輪招致レースに立候補しているため」と伝えた。写真は柴さんの著書。
2015年3月24日、中国国営中央テレビ(CCTV)の元記者・柴静(チャイ・ジン)さんが制作した大気汚染を告発する動画「穹頂之下」が中国当局の統制でネットで視聴できなくなった問題について、香港紙・蘋果日報は
「中国が22年冬季五輪招致レースに立候補しているため、当局が全力で封じ込めようとした可能性がある」
と伝えた。
新華社通信によると、国際オリンピック委員会(IOC)評価委員会のジューコフ委員長は24日、北京で現地調査を開始した。
北京市内の施設のほか、河北省張家口のスノーボード会場など競技会場を28日まで視察する。招致レースは現在、北京とカザフスタンのアルマトイの争いとなっている。
中国は08年の夏季五輪に続いて冬季五輪の開催も狙っている。
しかし、折しも中国では柴さんの動画「穹頂之下」がネット上で話題沸騰中。
専門家は
「当局は動画が北京の印象を悪くすることを恐れたのではないか」
と分析している。
また、香港の時事評論家は
「多くのメディア関係者が動画を評価し、紹介したことで、市民の自発的な組織力、行動力があることが示された。
当局はそこに敏感に反応したのだろう」
と指摘している。
』
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