『
ウォールストリートジャーナル 2015 年 3 月 5 日 09:14 JST
http://jp.wsj.com/articles/SB11167655035836774773204580498680827952548
中国の全人代、きょう開幕
【北京】
中国では5日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が始まるが、
同国は低経済成長時代を迎えたとする見方を否定する人はいない
だろう。
同国の経済情勢は、ほぼ全ての面で下降しており、これはより良い学校や年金、それに汚染のない空に対する国民の要求が高まる中で、
政府の果たす役割が次第に小さくなっている
ことを意味する。
指導部は、世界第2の経済大国の成長鈍化は何ら心配することはなく、「新常態(ニューノーマル)」だと国民を説得しようとしている。
それにもかかわらず、李克強首相が全人代開幕時に経済に関する演説を行う時、北京がどのような策を取るのかの手掛かりは一つの数字にある。つまり経済成長目標だ。
昨年の目標は「約7.5%」だった。
実際の数字は7.4%で、20年以上ぶりの低水準だった。
これよりも一段と低い目標となれば、北京は現在進められている経済モデルを見直すという難しい問題に取り組むことになるかもしれない。
逆に、目標がほとんど変わらなければ、指導部は成長を促す戦略に固執し、改革を危うくするかもしれない。
スタンダード・ライフ・インベストメンツのエコノミスト、アレグザンダー・ウルフ氏は
「彼らの動きは緩慢すぎる」
とし、
「彼らは改革が容易だった高成長期に改革を推進すべきだった」
と述べた。
同氏は、膨張した国営企業の見直しやその他の改革をないがしろにすれば、成長はさらに鈍るだろうとし、
「経済モデルに変化がないなら、それが本当の懸念材料だ」
と語った。
北京はここ数週間、経済を再び勢いづかせるために、銀行貸し出しを増やす劇的な措置を打ち出している。
しかし、こうした措置は、輸出と膨れ上がった不動産市場、それに政府支出への過度の依存から脱却するための政策を後退させる懸念がある。
中国指導部がどのような戦略を取るかは、世界的な問題だ。
短期的な成長に力点を置いた計画は、欧州の低迷と米国の不確実な回復で悩む世界経済を押し上げる可能性はあるものの、世界経済の原動力としての中国の長期的役割に疑問符を付けるかもしれない。
国内では、中国の指導部はもっと積極的な行動を取るよう強い圧力にさらされている。
多くの企業は、需要が弱いため借り入れも事業拡張もするつもりがないとしており、
中小企業は、銀行が不良債権化を恐れて融資を抑制しているという。
中国南部・仏山の電子機器メーカー、Ake Electronicsのゼネラルマネジャー、チャン・ウェンフェイ氏は「低金利は役立たない」と述べた。
一方で、国営メディアの調査によると、国民の関心が高いのは所得格差、医療、年金などだ。
★.もう一つが、何十年にもわたる急成長の結果である環境の悪化だ。
最近ネットに公開された、中国の環境政策を静かに批判するドキュメンタリーは視聴回数が100万を超え、検閲当局は視聴ができないように規制した。
By Mark Magnier 原文(英語)
』
『
ロイター 2015年 03月 5日 14:37 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0M02NY20150305
中国全人代GDP目標7%に引き下げ、
李首相「新常態」入り宣言
[北京 5日 ロイター] -
中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が5日、北京で開幕した。
李克強首相は冒頭、政府活動報告の中で2015年の経済目標について明らかにし、
★.国内総生産(GDP)伸び率を7%前後に、
★.消費者物価指数(CPI)伸び率を3%前後に
それぞれ設定した。
経済成長率とCPI上昇率の目標は、
それぞれ昨年の7.5%、3.5%から引き下げられた。
昨年の経済成長率は7.4%で、住宅市場の低迷、工業部門の生産能力過剰、政府支出の減少を背景に24年ぶりの低水準となった。
政府は景気減速を容認しつつ、消費を主体とした質の高い長期安定的な成長を目指す構えだ。
李首相は政府活動報告の中で
「中国経済に対する下振れ圧力は増している」
と説明。
「中国の経済発展における根深い問題は、一段と明確になっている。
われわれが今年直面する困難は、昨年よりも大きくなるだろう。
今年は、全面的な改革深化において極めて重要な年だ」
と述べた。
★.「各種の矛盾やリスクをなくし、『中所得国のわな』を回避し、現代化を達成するため発展に頼らなくてはならず、適切な成長速度が必要だ」
と指摘。
★.「わが国の経済発展は『新常態(ニューノーマル)』に入った」
との認識を表明した。
首相は国有企業改革を進め、銀行システムや金融市場の自由化に乗り出すと表明。
「安定成長や経済再編にとっても、極めて重要な年だ」
と指摘した。
また、環境汚染や腐敗問題に対処すると宣言。
「今年は法治を推し進める」としたうえで、環境汚染は
「人民の生活の質を損なう」とし、
「環境関連法や規制を厳格に執行しなければならない」
と訴えた。
腐敗問題に対しては「ゼロ容認」だと強調し、腐敗に関与した者については地位の高低を問わず厳格に対処する姿勢を示した。
15年のマネーサプライ(M2)伸び率目標は12%前後とした。
今年の財政赤字については、対GDP比2.3%となる見通し。
新規雇用については1000万人超の創出を目指す。
<「国防強化」、2桁増続く>
政府はまた、今年の
国防予算は10.1%増の8869億元(1414億5000万ドル)
になると公表。
これにより、中国の国防予算は過去20年間、ほぼ途切れることなく2桁増となる。
14年の国防予算は前年比12.2%増の1300億ドルで、米国に次ぐ規模だった。
李首相は政府活動報告の中で
「国防を強化し、新たなハイテク兵器および装備の研究開発を進め、防衛関連科学技術産業を発展させる」
と説明。
「全ての政府部門は常に、国防および軍の強化に積極的な関心を持ち、これを支援しなければならない」
と指摘した。
中国は国防予算の詳細な内訳を公表していないが、複数の専門家によると、
増額分は海軍の対潜艦増強や空母建造に
充てられる見通しだ。
国営新華社は4日、国防予算の伸び率は5年ぶりの低水準になると伝えていた。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年3月5日(木) 14時5分
http://www.recordchina.co.jp/a103653.html
中国政府「高速成長の終えん」認め政策転換、
経済成長目標「7%前後」に引き下げ
=物価は「3%」、デフレリスク懸念も―全人代開幕
2015年3月5日、中国の国会に相当する第12期全国人民代表大会(全人代)が北京の人民大会堂で開幕した。
李克強首相が政府活動報告し、2015年の実質経済成長率の目標を14年より0.5ポイント低い「7%前後」とする方針を表明した。
★.公共投資などで高成長を達成してきたこれまでの政策を転換、
経済改革を通じた安定成長への軟着陸を目指すことを打ち出した。
李首相は同報告の中で、
「改革推進と構造調整を行わなければ、安定した健全な成長を達成するのは困難だ」
と指摘、
経済構造改革を重視する方針を強調した。
成長率目標に関し
「必要性と可能性について考慮、客観的な実情に即した」
と説明、
「中国経済は『新常態(ニューノーマル)』に突入した」
と強調し、年2ケタの伸びを続けるような高速成長が終わり、7%前後の中高速成長の時代に入ったとの認識を示した。
14年の実質成長率は7.4%と24年ぶりの低い伸びにとどまり、政府目標の7.5%に届かなかった。
中国が経済成長目標を引き下げるのは3年ぶり。
景気の安定の重点目標として雇用確保を打ち出し、
「都市部で年1千万人以上の新規就業」
を目指す。
最近伸びが大幅に鈍化している物価上昇率については、抑制目標を14年よりも0.5ポイント下げ、3%前後とした。
デフレのリスクも懸念されており、回避できるか注目される。
李首相は、15年の主要な政策課題として、
行政の簡素化と権限委譲、金
融改革、
国有企業改革、
金利自由化、
人民元の国際化
などを列挙した。
一方、15年の国防予算(中央政府分)は前年実績比10.1%増の8868億9800万元(約16兆8500億円)と、5年連続で2ケタの伸びとなった。
全人代は15日まで開催され、
一層の腐敗撲滅、
国営企業改革、
民間経済部門の自由化
などの重点施策が打ち出される。
習近平国家主席は権力集中を背景に、2020年までに
規制緩和、
権限委譲、
国有企業改革、
経済改革、
司法改革、
戸籍改革、
地方財政改革
を断行する構えだ。
(八牧浩行)
』
中央政府自身が「高速成長の終えん」認め政策転換している今、果たして、
『抜群に健全な中央が、地方を救う』
というジャーナリストの中国神話は生き延びることができるのだろうか。
『
サーチナニュース 【経済ニュース】 2015/03/06(金) 08:42
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0306&f=business_0306_009.shtml
中国7%成長の達成難度増し金融政策による下支えも用意=大和総研
3月5日に始まった中国の全国人民代表会議(全人代)は、初日の李克強首相による政府活動報告が行われ、経済成長率の目標を7.5%前後から7%前後へと引き下げるという方針が示された。
大和総研経済調査部のシニアエコノミスト齋藤尚登氏は3月5日にレポート(全3ページ)を発表し、
「成長目標を引き下げたが、その達成の難易度は増している」
という見解を示した。レポートの要旨は以下の通り。
◆2015年3月5日~15日の予定で第12期全国人民代表大会(全人代=日本の国会に相当)第3回会議が開催される。
初日の5日には李克強首相による政府活動報告が行われた。
注目された2015年の政府経済成長率目標は7%前後と、2012年~2014年の目標7.5%前後から引き下げられた。
◆昨年秋口までのような分野を限定した下支えでは、増大する景気下振れリスクに抗するのは難しくなっており、2014年11月22日の2年4カ月ぶりの利下げと2015年3月1日の追加利下げ、そして2015年2月5日の全ての銀行を対象とした預金準備率引き下げ、といった具合に、金融政策の下支えの対象は経済全体へと範囲が広がっている。
◆全人代の政府活動報告では、
(1):2015年の財政赤字を前年比で2,700億元多い、1兆6,200億元(約31.4兆円)とし、財政赤字のGDP比を2014年の2.1%から2015年は2.3%に拡大する。
うち地方財政赤字(地方債発行額)は前年比1,000億元多い、5,000億元とするほか、特別債を適宜発行する、
(2):マネーサプライ(M2)増加率は前年比12%前後とするが、必要に応じて多少高くなっても構わない、とするなど、景気下支えのための政策的な余地を残すような配慮もなされている。
財政・金融面での下支えによって、雇用の悪化を招くような景気下振れを回避しようとしているのであろう。
』
『
現代ビジネス 2015年03月08日(日) 真壁 昭夫
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42400
なぜ李克強首相は
中国経済の急減速を「新常態」と正当化
したのか
2015年の成長目標は7%程度と発表され、李首相は今後の経済は“新常態”に入ったと宣言した。
★.指導部は“新常態”という言葉を使って、
景気の急減速を正当化する姿勢
を示している。
また、同首相は中国経済が抱える構造問題を指摘し、景気の下振れ圧力が増大していることをアピールした。
足許、中国経済は輸出や投資に代わる成長源泉を確保できていない。
また、都市部への富の集中よる貧富格差拡大を解消することも容易ではない。
中国経済は高成長時代を過ぎて、新しい成長過程を見いだせるかの正念場を迎えている。
■成長急減速下の“新常態”
“新常態”とは、景気拡大を最優先に掲げた時代への決別だ。
経済構造の改革を進めることによって、
成長率低下の下でも共産党政権を維持することを可能にするパラダイム
と言ってよいだろう。
都市部への富の集中等が批判されてきた中国の国内事情を考えれば、何とかして一般民衆の支持を得るためのスローガンが必要になる。
内需拡大や経済の質の向上が達成されれば、それなりに“新常態”を正当化することは可能だろう。
それが共産党指導部の考えであるはずだ。
しかし、今のところ、中国のGDP(国内総生産)の大半は輸出と投資に依存している。
安定した成長の要である個人消費はGDPの4割以下でしかない。
しかも、消費のほとんどは都市部に依存している。
特に、不動産価格が下落する中、金融の重要要素である信用リスクの動向は懸念材料だ。
拡大する下方リスクを眼前にして、痛みを伴う改革を実行することは容易ではない。
“新常態”の本質を追求することは容易ではないのである。
“新常態”は景気の下方リスク、低成長率の容認と解釈することもできる。
今後、“新常態”を追求するためには、不良債権処理などの“痛み”は避けられない。
問題は、中国には社会の不安定化リスクがあるため、経済運営は相対的に安全な対症療法に陥りやすい。
■金融緩和の効果は限定的
対症療法の典型が金融の緩和だ。
インフレからディスインフレへという足元の経済状況を考えると、2月末の利下げは避けて通れなかったプロセスといえる。
昨年11月に続いて利下げを行うことは、全人代に対するメッセージとも考えられる。
利下げ等の金融緩和は株価上昇など、一時的に将来への期待を高める。
それは不良債権を温存する時間稼ぎにはなるが、構造改革にはつながらない。
金融緩和によって景気回復が確認された時に、中長期的な発展を睨んだ策を打てるかが重要だ。
利下げの最大の目的は、企業の調達コストを引き下げることで景気を刺激することだ。
特に、不動産価格の下げ止まりを念頭に置いたのだろう。
また、人民元の減価を通した輸出のサポートも期待できる。
ただ、中国が抱える不動産バブルなどの構造問題を考えると、金融緩和策にはそれほど大きな効果を期待することは難しい。
中国経済の専門家の間では、今年中に、財政刺激策の実施に追い込まれる可能性が高いとの見方もある。
それほど、中国経済の現状は深刻さを増している。
今や中国経済の急減速は、世界経済が抱えるリスク要因に一つになっている。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年3月9日(月) 13時51分
http://www.recordchina.co.jp/a103739.html
中国は経済成長を確信、短期的GDP変動に懸念ない―中国メディア
2015年3月5日、中国の国内総生産(GDP)の増加率がここ数年に鈍化していることが世界の注目を集めている。
国家統計局が2月末に発表した2014年のデータコミュニケによると、昨年の中国GDP増加率は7.4%で、24年ぶりの低い数字となったが、年初に設定された目標値の「約7.5%」は基本的に達成できた。
人民日報が伝えた。
慣例によれば、両会(全国人民代表大会と全国政協会議)における政府活動報告で、李克強(リー・カーチアン)首相が今年の経済成長の目標を提起することになっている。
アナリストは、
「北京(中央政府)は短期的なGDP増加率の変動については懸念しておらず、未来の経済成長を確信している」
と指摘する。
同アナリストは、
「投資が鈍化し輸出が低下している状況の中、経済成長で消費が重要な役割を演じることになる。
一例を挙げると、中国の昨年の『ダブル11』(11月11日)、すなわち大手ネット通販業者がうち出して定着したショッピングイベントの期間に、一日あたりの取引額は350億元(約6700億円)に達した。
最新のデータによると、2014年は最終的な消費支出の対GDP貢献度が初めて50%を上回って51.2%に達し、前年比3.0ポイント上昇した」
と話す。
「ダブル11」の取引額には中国の消費がもつ巨大な潜在力がある程度反映されている。
GDPに占める内需の割合を高め、投資や輸出への依存度を引き下げることを方向性として、中央政府はこれまでずっと努力を続けてきた。
市場には、不動産などの産業は温度が低下しているが、力強い雇用に助けられて、経済の安定装置としての消費の役割が徐々に顕在化しているとの見方が広がる。
ネット通販の活発さが関連サービスの発展を促している。
中国の東部・浙江省にある青岩劉村はごく普通の村だが、有名な「ネット店舗のトップ村」でもある。
ここには全国各地から1万5000人を超える若者が集まり、ネット店舗約2800社と宅配便会社約30社が設立された。
青岩劉村の現状は中国経済のモデル転換の中の新たな活力を代表するものだ。
習近平(シー・ジンピン)国家主席は、経済が中くらいのペースの成長段階に入ったことを、経済発展の「新常態」(ニューノーマル)と呼び、中国の発展は引き続き重要な戦略的チャンスの時期を迎えているという。
素晴らしい数字よりも、中央政府は新常態の下で経済運営の質により重きを置いており、構造の最適化・バージョンアップや国民生活の実質的な改善により関心を抱いている。
統計コミュニケによれば、GDPに占める工業の割合は低下した一方、サービス業の占める割合が上昇を続けており、14年は48.2%に達した。
これと同時に、ジニ係数は低下を続け、ハイテク技術産業と設備製造業の増加率はいずれも2けたに達し、工業全体の平均増加率を上回った。
こうしたことから中国の経済構造には良好な調整が行われつつあることがわかる。
経済の成長率は低下したが、雇用は低下するどころか上昇している。
統計年報によると、14年の都市部の新規雇用数は1322万人に上った。
また都市部住民の所得が増加を続けており、14年の国民一人あたりの平均可処分所得は前年比10.1%増加した。
物価は2.0%の上昇で、物価上昇要因を考慮した所得の実質増加率は8.0%に達し、GDP増加率を上回った。
中央政府は15年を、改革を全面的に深化させる重要な年と位置づける。
ウォッチャーによると、中央政府が経済分野でスタートした、または今後展開する予定の一連の改革が市場の活力を発揮させ、中国の発展は新たなチャンスを迎えることになるという。
同局の馬建堂(マー・ジエンタン)局長は統計年報の発表会で、
「中国は経済発展の新常態に主体的に適応し、経済運営を合理的な範囲で維持している。
経済は大きな下方圧力に直面しているが、全体としてリスクはコントロール可能だ」
と述べた。
政策決定層に近い経済学専門家は、
「世界各国と比べれば、GDP増加率が7%にとどまったとしても、世界の中ではトップレベルの増加率だ。
雇用が十分にあり、物価が安定し、所得がGDPと同じ歩調で増加しさえすれば、経済成長率が少しくらい高くても低くても、すべて受け入れることが可能だ」
と述べた。
(提供/人民網日本語版・翻訳/KS・編集/武藤)
』
『
2015.03.10(火) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43154
いくら大騒ぎしても外国勢力に依存する中国
(2015年3月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
3月5日に開幕するまで、中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の年次全体会議は、例年よりは興味深いものになる見込みだった。
もっとも、それも特に言うほどのことではないことは認めざるを得ない。
何しろ、大半の立法措置は、175人から成る全人代常務委員会によって1年を通して行われる。
概ね退屈な11日間の全体会議では、
現在北京に集まっている2964人の「人民の代表」がさまざまな政府報告を圧倒的多数で承認し、この国を統治する中国共産党の指導部を称賛し、恐らく1つ、法制定の手続きをいじる改正「立法法」を可決するだけだろう。
だが、ここ数週間、中国政界の各方面から上がった声は、それよりはるかに活発な全人代になることを示唆していた。
■開幕前は外国批判が高まっていたが・・・
労働組合の有力者は「敵対的な外国勢力」が中国国内の労働運動に入り込んでいると警告した。
人民解放軍のある将官は、昨年の香港の民主化デモは失敗した「カラー革命」に相当すると発言した。
中国最高人民法院(最高裁)と教育省のトップはそろって、「西側の価値観」の有害な影響を激しく非難した。
より具体的に言えば、
★.外国の銀行とハイテク企業は、中国の対テロ法案と、規制当局が「安全と見なし、制御できる」コンピューターとネットワーク機器の購入を強制する新規制の潜在的影響に対して身構えている。
★.外国の非政府組織(NGO)も同様に、まだ起草中のNGO法の影響を恐れている。
だが、全人代の開幕から4日経った今、敵対的な外国勢力の幽霊はまだ人民大会堂に姿を見せていない。
李克強首相は年に1度の政府活動報告で、外国勢力、特に外国企業に関して何一つ悪いことを言わなかった。
李首相は外国人投資家に、市場へのアクセス拡大と、外国の人材をもっと呼び込むための措置を約束した。
西側の価値観の批判に最も近かった発言は、学生が「中国の特色ある社会主義への献身を強化する」必要性に遠回しに言及したことくらいだ。
李首相の活動報告では、テロ対策やNGO法は一言も言及されなかった。
どちらも全人代でこれから議題に上る可能性はあるものの、年内に常務委員会によって可決される可能性の方が高い。
外国嫌いの発言を唯一したのは、李首相の演説後に記者団に取り囲まれ、今年の軍事費の10%増額は「敵が中国を脅す気を起こさない」ことを確実にするために必要だったと語った人民解放軍将官だった。
■中国共産党の真の意図は?
では、中国共産党の本当のムードと意図を表しているのは、どちらなのだろうか?
全人代の開幕前の騒々しい怒りの声なのか、それとも、李首相の心地よい言葉なのか?
もしかしたら、米国のスパイ活動に関するエドワード・スノーデン氏の暴露が、国産品がシスコのルーターやオラクルのソフトウエアほど安定していないのであれば、政治的に正しい国産ネットワーク機器の購入を国内銀行に強いることは愚行だと主張しかねない北京の実利主義者を黙らせる、ということなのかもしれない。
「指導部は非常に不安を覚えている」。
ある西側企業の上級幹部はこう語る。
「不確実性が非常に高いため、これはビジネスに影響を与える」。
それでも、大半の企業幹部は、歴史は自分たちの味方だと考えている。
米議会で中国を叩く人たちが米国大統領にとって有益な引き立て役になり得るように、怒りっぽい中国の将官や教育相は中国政府にとって利用価値がある。
ただし、それは、もっと大きな利害が問題になるまでの話だ。
李首相は活動報告で、歴史的な逆転が起きるという事前の予想を覆し、
★.昨年の外国からの対内直接投資(1200億ドル)が中国自身の対外投資(1030億ドル)を上回った
と指摘した。
中国政府はこの気前のいい投資を台無しにしたくない。
インフラやその他の固定資産に対する政府主導の投資への中国経済の依存度を下げようとしている時は、なおのことだ。
好むと好まざるとにかかわらず、中国の最高指導者たちは、自分たちがいわゆる敵対的な外国勢力、特に米国と経済的に結びついていることを認識している。
だから、この共生関係が続く限り、全人代の会議は多分に退屈な出来事であり続けるだろう。
By Tom Mitchell in Beijing
© The Financial Times Limited 2015. All Rights Reserved. Please do not cut and
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2015.03.10(火) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43154
いくら大騒ぎしても外国勢力に依存する中国
(2015年3月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
3月5日に開幕するまで、中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の年次全体会議は、例年よりは興味深いものになる見込みだった。
もっとも、それも特に言うほどのことではないことは認めざるを得ない。
何しろ、大半の立法措置は、175人から成る全人代常務委員会によって1年を通して行われる。
概ね退屈な11日間の全体会議では、
現在北京に集まっている2964人の「人民の代表」がさまざまな政府報告を圧倒的多数で承認し、この国を統治する中国共産党の指導部を称賛し、恐らく1つ、法制定の手続きをいじる改正「立法法」を可決するだけだろう。
だが、ここ数週間、中国政界の各方面から上がった声は、それよりはるかに活発な全人代になることを示唆していた。
■開幕前は外国批判が高まっていたが・・・
労働組合の有力者は「敵対的な外国勢力」が中国国内の労働運動に入り込んでいると警告した。
人民解放軍のある将官は、昨年の香港の民主化デモは失敗した「カラー革命」に相当すると発言した。
中国最高人民法院(最高裁)と教育省のトップはそろって、「西側の価値観」の有害な影響を激しく非難した。
より具体的に言えば、
★.外国の銀行とハイテク企業は、中国の対テロ法案と、規制当局が「安全と見なし、制御できる」コンピューターとネットワーク機器の購入を強制する新規制の潜在的影響に対して身構えている。
★.外国の非政府組織(NGO)も同様に、まだ起草中のNGO法の影響を恐れている。
だが、全人代の開幕から4日経った今、敵対的な外国勢力の幽霊はまだ人民大会堂に姿を見せていない。
李克強首相は年に1度の政府活動報告で、外国勢力、特に外国企業に関して何一つ悪いことを言わなかった。
李首相は外国人投資家に、市場へのアクセス拡大と、外国の人材をもっと呼び込むための措置を約束した。
西側の価値観の批判に最も近かった発言は、学生が「中国の特色ある社会主義への献身を強化する」必要性に遠回しに言及したことくらいだ。
李首相の活動報告では、テロ対策やNGO法は一言も言及されなかった。
どちらも全人代でこれから議題に上る可能性はあるものの、年内に常務委員会によって可決される可能性の方が高い。
外国嫌いの発言を唯一したのは、李首相の演説後に記者団に取り囲まれ、今年の軍事費の10%増額は「敵が中国を脅す気を起こさない」ことを確実にするために必要だったと語った人民解放軍将官だった。
■中国共産党の真の意図は?
では、中国共産党の本当のムードと意図を表しているのは、どちらなのだろうか?
全人代の開幕前の騒々しい怒りの声なのか、それとも、李首相の心地よい言葉なのか?
もしかしたら、米国のスパイ活動に関するエドワード・スノーデン氏の暴露が、国産品がシスコのルーターやオラクルのソフトウエアほど安定していないのであれば、政治的に正しい国産ネットワーク機器の購入を国内銀行に強いることは愚行だと主張しかねない北京の実利主義者を黙らせる、ということなのかもしれない。
「指導部は非常に不安を覚えている」。
ある西側企業の上級幹部はこう語る。
「不確実性が非常に高いため、これはビジネスに影響を与える」。
それでも、大半の企業幹部は、歴史は自分たちの味方だと考えている。
米議会で中国を叩く人たちが米国大統領にとって有益な引き立て役になり得るように、怒りっぽい中国の将官や教育相は中国政府にとって利用価値がある。
ただし、それは、もっと大きな利害が問題になるまでの話だ。
李首相は活動報告で、歴史的な逆転が起きるという事前の予想を覆し、
★.昨年の外国からの対内直接投資(1200億ドル)が中国自身の対外投資(1030億ドル)を上回った
と指摘した。
中国政府はこの気前のいい投資を台無しにしたくない。
インフラやその他の固定資産に対する政府主導の投資への中国経済の依存度を下げようとしている時は、なおのことだ。
好むと好まざるとにかかわらず、中国の最高指導者たちは、自分たちがいわゆる敵対的な外国勢力、特に米国と経済的に結びついていることを認識している。
だから、この共生関係が続く限り、全人代の会議は多分に退屈な出来事であり続けるだろう。
By Tom Mitchell in Beijing
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【何かと不安な大国:中国】
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