日本はオバマを信用していない。
ということはアメリカ自体をあまり信用していない。
しかし、現代情勢ではアメリカ抜きでは政治は語れない。
日本はいかにこの強国大国をうまく利用するか、というのが外交基本になっている。
アメリカを利用するというのは、金銭的負担もあるし、政治リスクもある。
しかし、それ以上の見返りがあるというのがアメリカとの関係である、というのが本音で故にアメリカの顔色を伺いながら、いかにこの国をうまく利用するかである。
そして利用できなくなったときがきたら、自立できるように環境を整えている、そんな政治をやっているのが今の日本政府だろう。
政治というのは騙し合いの世界だ。
いかにうまく
「騙されていると分からせることなく騙すか」
それが外交政治の基本でもある。
これが理解できていない国の外交は「シロウト外交」である。
そして、
騙されていることが分かっていても、いかにうまく騙されるか、
がまた外交の基本でもある。
やたらと自分の主張を押し通すことは外交にはならない。
『
2015.4.24(金) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43627
絶対に沈まない日米太平洋同盟
戦後70年続く緊密な関係、中国の台頭が与える影響は?
(2015年4月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
米国人と日本人にそんな嗜好があったとすれば、自分たちの関係を唇と歯のように近いと表現するかもしれない。
実際には、唇と歯というのは、中国と北朝鮮が伝統的に両国関係を分類して使う表現だ。
米国政府と日本政府は生真面目に、仲間の民主主義国、市場経済国として両国が「共有する価値観」について語ることを好む。
だが、面白い言葉遣いがないにもかかわらず、日米関係は戦後の国家間関係として最も緊密で最も永続する関係の1つだ。
両国はテロリズムから知的財産に至るまで、大半の問題について一致協力している。
第2次世界大戦の灰の中で築かれたその親密さは、イデオロギーの枠にとどまらない。
両国は具体的な形で互いに大きく依存している。
■注目される安倍首相の米議会演説
米国は日本のことをアジアにおける自国の代理人と見なしている。
債務を賄ううえでも日本を頼りにしている。
米国債を最も多く保有している国は、僅差とはいえ、中国ではなく日本だ。
日本は、お金、そして次第に後方支援の形で米国の軍事介入を支援してきた。
日本は米国の核の傘と日本に駐留する3万5000人の米軍部隊が与えてくれる保護に依存している。
1980年代半ばに首相を務めた中曽根康弘氏は日米関係を率直に描写し、日本のことを太平洋における米国の不沈空母と呼んだ。
中曽根氏以来、最も強い日本の指導者かもしれない安倍晋三首相は来週、めったにない米議会上下両院合同会議での演説で70年間にわたるこの関係を称える。
首相は自国経済を復活させるための日本の協調的な取り組みを強調するだろう。
米議会に対しては、バラク・オバマ大統領が環太平洋経済連携協定(TPP)を締結させるために必要なファストトラック権限を与えるよう要請する。
一部の米国議員の好みからすれば不十分かもしれないが、戦争に対する一定の悔悟の念を表すだろう。
戦後の憲法の縛りから解かれた日本が、米国が世界を安全で法律が守られる場所にしておく手助けをするうえで、より積極的な役割を担える将来を描いてみせるだろう。
安倍氏は恐らく中国には言及しない。
だが、首相が意味することは誰もが分かる。
安倍氏は概ね、温かく受け入れられるだろう。
ワシントンはアベノミクスがうまくいくことを望んでおり、もしそれが強い指導者の代償であるのだとすれば、多少の「Abenesia*1」――日本の戦歴を軽く扱うこと――は容認する用意がある。
実際、ワシントンの多くの人は安倍氏のことを、この20~30年で最高の日本国首相と見なしている。
*1=安倍首相と「amnesia(記憶喪失、健忘症の意)」をかけた造語かと思われます(JBpress編集)
ある意味では、これらはすべて額面通りに受け止めるべきだ。
日米が70年前に互いと戦った際の敵意を考えると、この関係は驚くべきものだ。
ただ、別の意味では、日米関係は両国が認める以上に脆い基盤の上に成り立っている。
ピュー・リサーチ・センターの最近の調査は、
一部の問題については日米の態度が大きくかけ離れている
ことを示している。
確かに、どちらも互いに大きな信頼を置き、どちらも中国に不信感を抱いている。
★.中国を信頼すると答えた人は、米国では30%、日本ではわずか7%だ。
だが、大きな違いもある。
★.日本に対する原爆の使用が正当だったと考える人は日本には14%しかいないが、米国人の56%は正当だったと思っている。
この歴史的な年に、安倍氏がパールハーバーを訪れ、オバマ氏が広島を訪れるかもしれないという望みは結局かなわなかった。
この2つの出来事が意味することについて、双方が完全には同意できないからだ。
戦争の記憶にもかかわらず、米国人の47%が日本は地域問題についてより積極的な軍事的役割を果たすべきだと話している。
日本を「普通」の国にしたいと思っている安倍氏にとっては残念な結果だろうが、
★.日本政府が軍事外交を強化するという考えをすんなり受け入れる日本人は23%しかいない。
ピューの調査以外にも摩擦はある。
日本の右派は、日米同盟の確固たる支持者だが、日本を一意的に悪として描き、「属国」として扱う戦後処理に憤慨している。
こうした相違点は誇張され得る。
大部分において、日本は米国の忠実な友人だ。
両国が合意に至ることができないことは、普天間飛行場の移設を巡る15年間の論争など、稀にしかない。
どちらかと言えば、中国の台頭は日米を一段と接近させている。
自衛隊を強化し、TPPに参加しようとする安倍氏の取り組みは、中国の脅威と認識されるものに対する直接的な対応だ。
■中国が日米間に楔を打ち込む日
それでも、中国の台頭は対立を招く可能性もある。
もし日本が、例えば中国と争う島を巡って米国が日本の利益を守っていないと感じたら、恨みが募るかもしれない。
米大統領から言質を得ているにもかかわらず、
★.日本政府の一部の人は、米国が日本を防衛することを疑っている。
時機が来たら、
★.中国政府は恐らく日米間に楔を打ち込もうとするだろう。
その時になって初めて、日米関係があと70年続くかどうかが明らかになる。
By David Pilling
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