中国はいま「新常態」という名の「失われた時代」へ入ろうとしている。
その時代がどんな形で顕れてくるかは、まだ先のことである。
しかし、豊かな時代は終わった、ということは事実だろう。
中国政府もそれを認めて、新常態という言葉を操りはじめてきた。
豊かな時代が終われば、その後にくるものは
「中国人はさらに「貧しく」なる!?」
ということになる可能性も大きい。
格差が社会の新常態になると、富裕層と貧困層がぶつかる危険性も大きくなる。
国外問題よりも国内問題を注視せねばならないのだが、「中国の夢」という言語プロパガンダをぶちあげてしまったいま、中国の大国意識のメンツから、ドロ沼に足をとられているようである。
社会体制の崩壊は大半外国問題ではない。
国内問題の悪化によって起こっている。
国は豊かになるが、国民はさらに貧しくなる。
おそらく、この歴史法則から中国とてのがれることはあるまい。
成長が止まれば「国が国民の富を食いつぶして」いく、しかない。
『
サーチナニュース 2015-04-13 17:31
http://news.searchina.net/id/1569433?page=1
中国人はさらに「貧しく」なる!?
・・・「国の制度に問題あり」=香港メディア
香港メディアの鳳凰網は10日、
★.米国の基準で計算すれば中国国民の9割が「貧困層」になってしまう
だろうとし、
なぜ中国人はますます貧しくなるのか
と疑問を投げかける記事を掲載した。
記事は、中国の学者である劉植栄氏が発表した世界の教育や不動産価格、給与制度などを比較した報告書を引用し、
「同報告書によれば、中国の最低年収は世界平均の15%に満たず、世界159位だった」
と伝えた。
続けて、劉植栄氏が
「中国が追求すべきは公正な社会だ」
と主張し、より多く働いた者がより多くを得る社会だと指摘し、
「中国の社会は公正ではない」
と批判したことを紹介。
さらに中国では農民工をはじめとする労働者の多くが辛い労働に従事しているにもかかわらず、
「彼らが得られる富はごく僅か」であり、富の分配が公正に行われていないと指摘したことを伝えた。
さらに、中国の財政収入は20年間で約30倍に増加したと伝え、その平均成長率は19.5%に達して国内総生産の伸びを大きく上回ったと指摘。
一方、中国政府は財政収入を教育や医療など国民と密接な関係のある分野に還元していないと批判し、さらに政府関係者の海外出張や公務車の購入、維持などといった公務支出は驚くべき多さだと指摘。
財政支出に占める公務支出の割合について、
★.米国は9.9%、日本は2.8%だと紹介し、中国は38%に達する
と批判した。
続けて、
★.中国政府が「高コスト体質」である
ことを批判したうえで、中国国民がなぜ貧しいか一目瞭然だと指摘、
「国の制度こそ国民を豊かにも、貧しくもするものだ」
と論じた。
』
『
2015.3.27(金) The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43328
香港と中国本土:遠のく関係
(英エコノミスト誌 2015年3月21日号)
本土からの買い物客に対する抗議は、
より重大な問題を浮き彫りにしている。

●昨年は人口700万人の香港に、中国本土から4700万人の訪問者が押し寄せた〔AFPBB News〕
昨年後半、何千人もの民主派デモ隊が、北京の中央政府の干渉を受けずに2017年に香港政府トップの行政長官を選ぶ権利を求めて香港の街頭に繰り出した。
この数週間で抗議活動が再燃している。
今回はかなり規模が小さいが、より暴力的で、昨年と同様に本土からの侵略に対する憤怒によってかき立てられている。
問題になっているのは、
★.香港で買ったものを地元の闇市場で転売するために訪問する本土の中国人の群衆だ。
これは香港で「パラレルトレーディング(並行交易)」と呼ばれている商売だ。
以前よりひどい不満の爆発は買い物に対するものにとどまらない。
こうした抗議は、本土に対する敵意が深まり、香港都心を越えて広がっていることを示唆している。
これが境界線の双方の当局者の間で不安を引き起こしている。
2002年、英国による植民地支配が終わった5年後に、香港政府は中国人旅行者の人数制限を廃止した。
2009年以降、香港と隣接する深圳市の住民は、好きなだけ境界線を越えられるようになった。
★.香港になだれ込む「イナゴ」の大群衆に怒り爆発
香港当局者らは、低迷していた香港経済が復活を遂げたのは、この制限緩和のおかげだと考えている。
だが、多くの香港人は自分たちが圧倒されていると感じている。
2000年以降、中国人訪問者の数は10倍に増えた。
人口700万人の香港にあって、昨年の訪問者は4700万人と、2013年から16.5%増加した。
2020年には本土からの訪問者が1億人に上ると言う者もいる。
しかし、訪問者1人当たりの平均支出は2009年当時よりも減っている。
中国の反腐敗運動が贅沢品に対する需要を押し潰した。
昨年12月には、そうした高級品の売り上げが前年比で16.3%減少した。
香港人にとっては迷惑なことに、新しいタイプの買い物客が現れた。
香港の0%の消費税(中国本土の税率は17%)を利用し、家庭用の生活必需品を買うためにやって来る人々だ。
組織化されたチームに参加する人もいて、各人がスーツケースいっぱいの品物を持ち帰り、境界線の反対側の仲介業者に引き渡している。
彼らが香港で買い物をするのは、価格だけでなく、質のためでもある。
多くの中国人は国産品を信用していない。
2008年、本土の乳幼児用粉ミルクの汚染が発覚した後、香港は粉ミルク不足に見舞われた。
これに対し、香港政府は粉ミルクの輸出に厳しい制限をかけた。
中国人の需要は香港の買い物環境を変えている。
本土との境界に近い上水の新康街では、店という店に、おむつ、粉ミルク、歯磨き剤、食器洗い洗剤が山のように積み上げられている。
店のオーナーたちは熱狂的な常連客に満足しているが、地元の多くの人はそうではない。
賃料が上昇し、たくさんの古い店舗が閉鎖したからだ。
並行輸入活動に反対する団体「北区水貨客関注組」のリャン・キム・シン氏は、本土からの訪問者を対象に商売している店は「上水文化を締め出している」と言う。
■都心から境界線の近くまで広がる反本土感情
大半の香港人は過去1世紀の間に本土から移ってきたが、香港と本土の間のギャップは広がっている。
昨年の世論調査では、自分のことを「中国人」と考える香港人がかつてないほど少なくなったことが分かった。
香港人の多くは本土の同胞たちのがさつな振る舞いに不満を漏らし、店の棚を空っぽにする「イナゴ」というレッテルを張っている。
2月にカメラにとらえられた映像は、ある本土女性と泣いている娘に対して群衆が叫んだりやじを飛ばしたりする場面を映し出していた。
本土の人間は、マスクで顔を覆った抗議者たちに罵倒されたり、突き飛ばされたりする。
「人々は怒っており、苦々しい気持ちを抱いている」。
香港の立法会(議会)議員で民主党党首の劉慧卿(エミリー・ラウ)氏はこう言い、かつては、中国本土が関係するデモが通常行われる人口密度の高い都心部よりも本土との一体感が強かった境界線に近い場所にも、こうした感情が広がっていると指摘する。
香港政府は苦しい立場に立たされている。
買い物客は鬱陶しいかもしれないが、香港で違法なことをしている人はほとんどいない。
本土の規制は、香港を訪れた人に最大5000元(800ドル)相当の品物を持ち帰ることを認めている。
多くの買い物客は、闇市場の商人でさえ、この規制を守っている。
いずれにせよ、この制限の施行は弱い。
香港政府は、抗議者の味方をすることで反本土感情に迎合する気はない。
しかし、一方では、市民の不満を無視することによって民主化運動を煽ることも望んでいないのだ。
香港の所得格差は極めて大きく、
人口は急激に高齢化しており、
不動産価格は法外に高い。
多くの人は、これらの問題を悪化させた責任は本土の人間にあると考えている。
およそ4万人の深圳住民が香港で働いており、2万人の深圳の子供が香港の学校に通っている。
これらすべての状況が、特に若い人たちの間で、香港政府は北京の中央政府に寝返ったという感情の高まりを生んでいる。
中央政府は、香港の窮状に敏感だ。
今月、香港問題の責任を負う本土の政府高官、周派氏は、香港の旅行者受け入れ能力は「概ね飽和状態に達した」と述べたと伝えられた。
しかし、ビザ制度の変更は、本土、特に深圳市の住民に受けが悪いだろう。
中国政府は、本土側での変更を検討している兆候は一切見せていない。
■微妙な行事が目白押し
たとえ買い物客の大量流入を食い止める方法が見つかったとしても、香港は難しい1年に直面する。
2017年の行政長官選挙の取り決めに関する立法会での議論は夏までにまとまる予定で、新たな対立のきっかけになる可能性がある(中国政府は、選挙に関する制限的な計画について妥協する気配をまったく見せていない)。
その他の火種としては、6月に予定されている、学校での中国の歴史の教え方に関する再評価がある。
一部の生徒は、これが「愛国」教育の導入に向けた新たな取り組みを意味するのではないかと懸念している。
6月4日には、香港人は1989年の天安門広場でのデモ弾圧を記念する毎年恒例の集会を行う。
7月1日は、やはり大規模デモの機会になることが多い香港の中国返還記念日だ。
政府には、息抜きする暇はほとんどない。
© 2015 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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『
サーチナニュース 【経済ニュース】 2015/04/15(水) 15:24
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0415&f=business_0415_052.shtml
【今日の言葉】新常態と日本の格差
『新常態と日本の格差』=中国・国家統計局が15日に発表した2015年1-3月期のGDPはプラス7.0%だった。
今年3月の全人代で打ち出した、経済の高速成長から中高速成長を目指すという、『新常態』(GDP7%前後の目標)に沿ったものとなっている。
10数パーセント成長から7%へ大きくスピードダウンしているのだから自由主義経済の下なら、かつての日本のバブル崩壊のように大変な状況となっていたはずだが、そこは共産党一党支配による良さとでもいうべきかうまく軟着陸している。
一部には不動産価格の急落による影響もみられるようだが、全体の経済に波及させていないところは立派である。
かといって、日本が中国のように社会主義国家になりたいと思っているわけではないが、ただ、日本国内のいろいろなところで格差がついていることは自由主義だから仕方ないと切り捨てることはできない。
適当な格差なら目標ができて励みになるが、あまりにも格差が開きすぎるとヤル気が失せるし社会不安の火種になる心配がある。
早く、国民の間に投資の裾野を広め株価上昇の効果を分かち合うようにするところに来ているように思われる。
』
『
JB Press 2015.4.20(月) 瀬口 清之
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43560
中国の「新常態:ニューノーマル」の本質は何か
習近平政権が目指す2つのアブノーマルからの脱却
昨年12月に開催された中央経済工作会議において、
「新常態」は次のように説明された。
(1).高速成長から中高速成長への転換
(2).成長率重視型の粗放型成長モデルから
成長の質・効率重視の集約型成長モデルへの転換
(3).供給能力拡大重視型経済構造から
供給能力適正化重視型経済構造への転換
(4).伝統的経済発展推進力から
新型経済発展推進力への転換
このような中国政府による新常態(ニューノーマル)の説明を読んでも、その中身が分かりにくいと感じるのは外国人だけではなく、おそらく大半の中国人も同様であろう。
中国経済は2012年第2四半期以降、雇用と物価の安定を保持しており、不動産市場も昨秋以降、徐々に安定を回復しつつあるなど、マクロ経済のバランスは良好な状態にある。
しかし、そうした全体像の実態を理解せず、一部の経済指標の動きや特定地域の経済状況だけを見て、
中国経済は失速している、不動産市場はバブル崩壊が迫っていると誤解している人が多い。
そこで以下では、やや粗っぽい表現ではあるが、「新常態」下の経済政策運営について、筆者なりの分かりやすい解釈を紹介したい。
■「新常態」の分かりやすい理解の仕方
「新常態」=ニューノーマルとは2つのアブノーマルからの脱却を意味すると理解すれば分かりやすい。
2つのアブノーマルというのは、2002年から2012年までの10年間にわたる胡錦濤・温家宝政権時代に見られた不適切な経済政策運営のことである。
2012年春以降、実質的に習近平・李克強体制の主導により、中国経済はアブノーマルな時代からニューノーマルの時代へと移行したというのが筆者の理解である。
■成長速度の適正化
★.前政権時代の第1のアブノーマルは速すぎた成長速度である。
前政権の最高指導部は中国国内のあらゆる地域のあらゆる産業が好景気を謳歌する状態が望ましいと考えていたように見える。
このため、中央および地方政府、国有企業等の景気拡大重視派の求めに応じて、全産業、全地域が喜ぶように景気刺激策を実施した。
米国、中国、日本のような経済大国では通常、産業分野別、および地域別の経済状態のばらつきが大きい。
金利引下げ、貸出増大、財政支出拡大といったマクロ経済刺激策によって景気が悪い産業や地域経済を全て救済しようとすると、元々景気が良かった産業や地域は景気が良くなり過ぎて景気過熱に陥る。
こうした経済政策運営により、前政権時代は景気回復局面において景気刺激が行き過ぎて景気過熱に陥った。
事実、前政権の10年間に3度もインフレが発生し、一般庶民は物価高に苦しんだ。
中央政府はインフレを未然に防ぐことに失敗し、景気過熱になってから急速な金融引き締めを実施したため、景気変動の波が大きく、中国経済は常に不安定な状態だった。
こうした政策運営の下では、企業や地方政府は短期的に好景気を謳歌するが、良好な状態は長続きせず、すぐに景気過熱を招き、一般庶民はインフレによって生活苦を強いられた。
これに対して習近平政権への移行後、中国経済は雇用・物価ともに中長期的に安定を保持しており 、産業別・地域別ばらつきはあるが、一般庶民の生活は概ね安定している。
ただし、経済全体としての適正な成長速度の保持を重視しているため、一部の産業は好調な一方、一部の産業は不景気が続くなど、産業別・地域別にはまだら模様の状態が続いている。
競争力が乏しく不景気が続いている産業分野の企業や地域の政府関係者は当然この状態に不満を持っている。
しかし、習近平政権はそうした産業や地域に対して補助金を与えて甘やかすことをしない。
市場メカニズムに基づき競争力のない企業の整理淘汰を促進している。
以上が「新常態」の1つ目の特徴である。
■経済構造の筋肉質化
★.第2のアブノーマルは経済成長の中味の不健全さである。
現在中国は、鉄鋼、セメント、硝子、石油化学、造船など主要製造業の過剰設備と3~4級都市における住宅の過剰在庫の削減に取り組んでいる。
これらは主に、2008年9月のリーマンショック後の深刻な景気後退からの回復のために実施された、
★.いわゆる「4兆元(800兆円)」の景気刺激策によって生じた過剰投資のつけである。
2011年以降、固定資産投資全体の伸び率鈍化傾向が続いている。
2010年頃までは固定資産投資の伸び率が前年比30%近い高い伸び率を示していた。
しかし、その後年々伸び率が鈍化し続け、2014年は通年で15.7%の伸びに留まり、今年の1~3月は13.5%にまで低下した。
これは非効率な企業への補助金の削減、銀行貸出の抑制などにより経済構造の効率化・健全化を図ることを目指している政府の政策運営の意図した結果である。
過剰設備、過剰住宅在庫など、いわば余分な脂肪をそぎ落とし、筋肉質の体へと肉体改造を図っている。
前政権下では、高過ぎる経済成長率目標が設定され、その目標達成ばかりが重視され、成長の中味は厳しく問われなかった。
設備投資でも住宅投資でも投資の質にかかわらず投資金額さえ増えれば、GDPは増大する。
しかし、そうした盲目的な投資によって生じた非効率・不健全な投資は不良債権化し、そのつけは将来の設備の稼働率低下による企業収益の悪化や不動産価格の下落による損失という形で大きなダメージとなる。
習近平政権はこのような形で前政権が残した負の遺産の処理に取り組んでいる。
以上のように、前政権による2つの不適切=アブノーマルな経済政策運営を改め、適切=ノーマルな政策運営へと移行したことが「新常態」の意味である。
■今後の中国経済の展望
「新常態」下の経済政策運営によって経済成長の速度と中味が健全化すれば、企業は収益拡大を持続しやすくなる。
同時に、健全な市場競争の導入により非効率企業が淘汰され、トータルとしての中国の産業競争力が向上する。
ただし、「新常態」だけでは十分ではない。
そこに国有企業改革の断行と規制撤廃による市場メカニズムの導入促進が加わって初めて、産業競争力の持続的な向上が実現する。
筆者は2020年から2025年の間に中国の高度成長時代が終わる可能性が高いと予想している。
もし「新常態」下の経済政策に国有企業改革の早期実行と規制撤廃が加われば、高度成長が長期化する可能性が高まるほか、安定成長への移行後も経済が急減速するリスクを小さくする効果が期待できる。
その間、日本企業にとっての中国市場の拡大速度はGDPの拡大速度を上回り、日本企業に大きな恩恵をもたらす。
日本企業にとっての潜在的な顧客層の人口は、1人当たりGDPが1万ドルに達した都市の人口の総合計である。
それは2010年の1億人から、2020年には7~8億人にまで増大する見通しである。
中国の高度成長時代の長期化は、日本企業にとって中国市場の需要拡大を活用できる「チャイナノミクス」の時代が長くなることを意味する。
2020年には日本経済の3倍以上に達する巨大市場の高度成長は日本経済にとって強力な経済成長押し上げのエンジンとなるはずである。
日本政府のアベノミクスによる自律的景気拡大とチャイナノミクスの組み合わせによって、日本経済が復活すれば、それは日本にとっての「新常態」である。
』
『
WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2015年04月21日(Tue) 岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4905
中国崩壊論と「5つの亀裂」
米国の著名な中国学者であるシャンボー米ジョージワシントン大学教授は、3月6日付けの米ウォールストリート・ジャーナル紙に、
「来たるべき中国の崩壊」
と題する論説を掲載しました。
これは、中国専門家の間に大きな波紋を投じました。
それは、シャンボーが、今まで中国崩壊論に慎重な立場をとり続けていたからでもあります。
論説の要旨は、次の通りです。
「
すなわち、中国の政治体制は見かけ以上に壊れており、習近平は反対派と腐敗を厳しく取り締まることで党の支配を強化しようとしている。
だが彼の独裁政治は中国の体制と社会に強いストレスを与えており、限界点は近づいている。
共産党の支配の最終段階はすでに始まっており、思った以上に進んでいる。
共産党支配が静かに終わる可能性は小さく、逆に長びき、混沌とした、暴力を伴うものになりそうだ。
習近平がクーデターによって失脚する可能性すらある。
体制の脆弱性を示す5つの兆候がある。
(1):中国の経済エリートたちはすでに片足をドアの外に出しており、
体制が揺らぎ始めれば、大挙して逃げ出す用意ができている。
(2):習近平は、政治的な抑圧を大幅に強化している。
これは党の指導者たちの不安と自信のなさの表れである。
(3):政権に忠誠を誓っているように見える者たちも、
実際にはそう装っているだけである。
(4):党政機関及び軍にはびこる腐敗は、社会全体に蔓延している。
根本的原因は一党支配体制にあるのであり、
反腐敗キャンペーンでは問題を解決することはできない。
(5):中国経済は、制度的な落とし穴にはまっており、
簡単には、そこから脱出できない。
党が打ちだした大胆な経済改革パッケージも既得権益層が実施を阻んでいる。
★.これら5つの亀裂は、政治改革によってのみ解決できる。
現在の政治システムこそが、社会・経済改革にとっての最大の障害となっている。
習近平の「中国の夢」は、実はソ連共産党の悪夢を回避する「夢」でもある。
ゴルバチョフと逆の方向で、それを目指そうとしているが、それが唯一の選択肢ではない。
江沢民と胡錦濤は、変化を拒否するのではなく変化を管理しようとして、限定的ながらも政治改革を目指した。
だが、
習近平政権は、政治をゼロサム・ゲームだ
と考えており、
管理を緩めることが統治システムの終わりの始まりと考えている。
中国共産党の支配がいつ崩壊するかを予測することはできないが、現在、我々はその最終段階を目撃していると結論せざるを得ない、と述べています。
出典:David Shambaugh‘The Coming Chinese Crackup’(Wall Street Journal, March 6, 2015)
http://www.wsj.com/articles/the-coming-chinese-crack-up-1425659198
」
* * *
中国の将来を予測することは至難の業です。
ただ、シャンボーの挙げた5つの「亀裂」を理由に、中国共産党の統治が崩壊すると結論付けるのは不十分だと思います。
中国共産党の直面する課題は、確実に増大し深刻化しています。
しかし同時に、諸課題に対処する共産党の能力も向上しています。
Suisheng Zhaoデンバー大学教授は、中国の近代は中央政府の“権威”を確立するプロセスそのものであり、習近平の昨今の動きも、この流れの中にあると言っています。
★.中国では、権力が集中されないと、何もやれないのです。
だから習近平は、腐敗問題を使って権力を集中してきました。
それほど中国の現状は、多くの、しかも大きな改革をあらゆる面で行う必要があるのです。
★.鍵は、習近平が権力をどこまで集中でき、その権力を使って「改革の全面的深化」(2013年党中央委員会決定)をどこまでやれるかにかかっています。
基本は、持続的経済成長が可能かどうかであり、司法改革も、環境対策も、社会福祉も、そのための環境整備の側面が強いです。
目標の2020年までに良い結果を出せれば、共産党統治は、逆に安定するでしょう。
現在の一連の改革をある程度終えても、共産党は、今度は発展した国民社会と一党支配との関係をどうするのかという根本的な、もっと困難な問題に直面せざるを得ません。
まさに政治改革という巨大な課題に直面せざるを得ないのです。
それは、習近平が鄧小平を越えることができるかどうかという次元の問題でもあります。
問題の深刻化のスピードが、共産党の能力向上のスピードを上回れば、共産党の統治は終わるのだと思います。
シャンボーは「中国共産党の統治の最終段階を目撃している」と言っていますが、いつその最終段階が本当に終わるのかについては、現時点で予測できないし、シャンボーが思っているよりは遅くなるでしょう。
』
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