2015年1月11日日曜日

2015年の中国(4):激動の2015年へ、2017年までの3年間はアジアにとって「激甚の時代」になる

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 2012年--2014年の3年間は中国の矛盾が一気に吹き出した時代
であった。

★.2012年の反日デモは全国規模で行われ、それが反政府・反共産党の色合いを持つものと分かったときの中国政府の驚愕はすさまじかった。
 以降、デモ・集会は一切すべて禁止になった。
 言論統制は確実にハードなものになってきており、マルクス主義教育すら奨励されるようになった。

★.それまでの輝く明るい中国は、2012年末のスモッグで一気に灰色に覆われてしまった’。
 海外メデイアの論調は中国の将来に疑念を抱き、
 昨日まで中国ヨイショに固まっていたのにかかわらず、かくもと思える変わり身の速さでコロッと論調を変え、
 中国の環境汚染を水・地面・大気・海まであらゆるところから集めて報道し始めた。

★.外交では東シナ海防空識別圏から南シナ海の領有まで中国恫喝外交が切って落とされた。
 悪魔のドラゴンがゴジラのように、火を吹いた。

★.2013年はじめには日中韓のトップが姿を現した。
 2017年までは同じリーダーが各国を取り仕切っていく。

 次の3年、すなわち2015年から2017年の3年間
アジアにとっておそらく激動の時代に
なる。
 経済成長が止まりつつある中国
がどう出てくるか、すべてはこれを中心に回っていく。 
 間違いなく、今年から始まる3年間は激動から、もしかしてさらにはげしい激甚の時代へ入っていくかもしれない。


レコードチャイナ 配信日時:2015年1月11日 1時0分
http://www.recordchina.co.jp/a100235.html

2015年の中国の5つの課題とは?―香港紙

 2015年1月4日、香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト電子版は、中国の2015年5つの課題を指摘した。
 6日、参考消息網が伝えた。

(1)外交:友人を増やし緊張を緩和せよ。
 中国は新シルクロード計画など開発援助を武器に世界での影響力を強め、また中国が関連する領土問題を有利に進めようとしている。
 外交ウォッチャーは領土問題では南シナ海が焦点だと予測している。

(2)経済:“ニューノーマル”に適応せよ。
 成長率が7%前後にまで減速し、不動産の冷え込みも続く。
 成長率がやや低下した中で構造転換を進めるニューノーマルへの対応が迫られる。
 また米国の金融緩和の終了に伴いホットマネー引き上げのリスクも高まる。

(3)反汚職:中国共産党中央政治局は「汚職のまん延を一定程度抑制することに成功した」
との認識を示しているが、なお厳しい状況にあるとして反汚職の取り組みを続ける姿勢を示している。

(4)環境保護:
 PM2.5測定値のリアルタイム配信対象都市が2014年の161都市から338都市に増加するなど対策が進められている。
 電力、セメント、鉄鋼などの高汚染業種では排出基準の厳格化が実施される。

(5)安全保障:さまざまな面で安全保障対策が強化される。
 従来の範囲を超え、インターネットや海外非政府組織(NGO)に対する管理も安全保障の一環に組み込まれた。またテロ対策も課題となる。



レコードチャイナ 毎日新聞 2015年01月13日 12時56分
http://mainichi.jp/select/news/20150113k0000e030187000c.html

中国:貿易総額3.4%増 14年伸び率は大幅鈍化

 【北京・井出晋平】
 中国税関総署が13日発表した2014年の貿易統計によると、
★.輸入と輸出を合わせた貿易総額は前年比3.4%増の4兆3030億ドル(約508兆円)
で、伸び率は前年(7.6%増)から大幅に鈍化した。
 世界経済の低迷と中国の景気減速が要因。
 一方、日本との貿易総額は前年並みとなり、ひとまず縮小に歯止めがかかった。

 貿易総額の伸びは3年連続で1桁となり、政府目標(7.5%増)にも届かなかった。
 内訳は、
★.輸出が6.1%増で前年(7.9%増)から小幅減少、
★.輸入は0.4%増と前年(7.3%増)から失速した。
 ただ、今のところ輸出の伸びは米国を上回っており、貿易総額では2年連続で世界一の可能性がある。

★.日本との貿易総額は3124億3837万ドルで、前年の3123億7785万ドルから微増だった。
 尖閣諸島問題で日中関係が悪化した12、13年は減少しており、増加は3年ぶり。
★.最大の貿易相手である欧州連合(EU)が9.9%増、
★.米国が6.6%増、
★.東南アジア諸国連合(ASEAN)が8.3%増
だった。

 中国の貿易総額は、10〜11年は20〜30%台の伸びを示したが、12年以降は鈍化
 日欧の景気回復の遅れや、中国の人件費上昇などで輸出の勢いがそがれている。



FOCUS-ASIA.COM 1月14日(水)15時13分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150114-00000019-xinhua-cn

2014年の輸出入伸び率3.4% 3年連続目標未達―中国

 中国の税関総署が公表した2014年の輸出入の伸びは米ドルベースで3.4%と、7.5%の目標に届かなかった。
 目標未達は3年連続。
 1月14日、新京報が伝えた。

 2014年の中国の輸出入総額は26兆4300億元で、人民元ベースだと前年比2.3%増加した。
 鄭躍声報道官は
 「目標未達の理由はやや複雑だ。
 中国の経済成長がニューノーマル(新たな標準)に入ったことや、世界経済の回復の歩みが遅く、国際市場の需要が低迷していることなどが背景にある」
と述べた。

 また、昨年12月の貿易輸出先行指数は40.1と3カ月連続で下降し、2013年12月以来最低の水準となった。
 調査機関の多くが2015年の輸出状況を悲観的に見ており、中国戦略思想庫の田雲秘書長は
 「今年は世界経済に新たな成長ポイントがない。需要は少なく、地方政府の負債率も高いなど、明るい材料に乏しい」
と語った。




 WEDGE Infinity 日本をもっと、考える  2015年01月13日(Tue)  岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4614

「勢力圏」拡大を目指す中露

 Gideon Rachman英フィナンシャル・タイムズ紙主席外交論説委員は、2014年11月24日付の同紙で、世界をいくつかの勢力圏に分け、それらの間のバランスをはかることで世界の安定を確保していくとの思想に反対し、米国を中心とする自発的な同盟体制の維持を主唱しています。

 すなわち、中国、ロシアは11月下旬北京での軍事協力委員会で、2015年春に地中海で共同海軍演習を行うと発表した。
 両国とも、自国の国境近接地域で西側が軍事行動を行っているのに反発し、自分たちもNATOの懐でパトロールができることを示そうというのである。

 この示威行為の背景には、「勢力圏」という考え方がある。
 両国とも、自分の周辺領域では他者の干渉を排する権利を持ちたいのである。
 ロシアがウクライナのNATO加盟に反対し、更に旧ソ連の領域にロシアの勢力圏を確立するため「ユーラシア連合」を作ろうとしていることは、その一例である。

 中国はこれまで主として経済力でアジアでの影響力を拡大してきたが、今や安全保障問題についても自己主張を強めている。
 2013年に中国が東シナ海に設定した「防空識別圏」はその一例である。

 西側には、平和を乱さないためにこの現実を認め、ロシア、中国にこの「勢力圏」を暗黙の裡に認めてしまえとする者もいる。
 例えばキッシンジャーは、ウクライナに対して、お前たちは自分の将来を勝手に決めることはできないのだよと諭して、平然としている。

 しかしオバマ政権は、そのような考え方に対して明確に反対の立場をとっている。
 勢力圏を認めれば、ロシアはウクライナがNATOやEUに加盟するのを禁ずることができるだろうし、中国はベトナム、フィリピン、そして日本にさえ、朝貢を強制するだろう。

 米国は、世界の諸国は自ら望んで米国との同盟関係を結んでいることを指摘する。
 米国の希望と同意に基づく勢力圏と、中国、ロシアの脅迫と力によって作られた勢力圏の間には大きな差がある。
 どの国も、ロシアや中国の勢力圏に組み込まれそうになると、米国との同盟を固めようとするのだ。
 ポーランドから日本に至るまで、そしてその中間の諸国も含めて、米国の同盟国は別に米国に説得されずとも、米国の安全保障の傘の下にいることを望むのである。
 2015年中国海軍が地中海に現れれば、周辺国はNATOを益々頼りにすることだろう、と述べています。

出典:Gideon Rachman ‘China, Russia and the Sinatra doctrine’ (Financial Times, November 24, 2014)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/74419cd6-71a7-11e4-b178-00144feabdc0.html#axzz3KCnNDVpf

* * *

 筆者のGideon Rachmanは、英フィナンシャル・タイムズ紙の国際問題論説委員長です。
 彼は、例えばキッシンジャーが近著『World Order』で主張したような、世界をいくつかの勢力圏に分け、それらの間で世界の安定を確保していくという思想に反対し、米国を中心とする同盟体制の維持を主唱しています。
 キッシンジャーの思想では、アジア及び日本を中国の差配に委ねることを意味するので、本件論説は、日本にとっては、日本の利益にかなったものと言えるでしょう。

 従って、この論説には賛成です。
 第2次世界大戦後の世界では、それまでの植民地分割体制を破って、米国による世界市場の統一が成し遂げられました。
 その世界市場は、IMF、GATTによって経済的に、米国との同盟体制によって軍事的に維持されてきましたが、日本、西欧諸国はそれに組み込まれたと言うよりは、むしろ主体的に利用してきたと言えましょう。

 一方、中国やソ連は、冷戦中、保護主義を取って、後れた経済と、それに基づく権力を守っていましたが、1990年代にはグローバル市場に参入し、それでもロシアは後れた経済を守るために、旧ソ連という市場を政治力・軍事力で維持しようとし、中国は台湾併合についてのフリー・ハンドを得たいがために、周辺海域から米軍を押し出そうとし始めました。

 地中海は、日本から程遠い所です。
 日本が念頭に置いておかなければならないのは、周永康事件も片づけて習近平体制を固めつつある中国が、力によってではなく、経済力等のソフト・パワー、スマイルを前面に出して「勢力圏」構築の動きに出てきた場合、ASEAN等もそれになびき、日本が不利な立場に置かれる可能性があることです。
 その際に、米国がアジアを中国に委ねるようなことがないように、日本は、更に日米同盟を強化しておくことが必要です。


JB Press 2015.01.14(水)  川島 博之
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42617

2015年の中国:
これまで以上に注意深く観察しなければならない理由
中国は周辺に覇を唱える大国になるのか

 中国の歴史には1つのパターンがある。

★.混乱の中に英雄が出現して新たな王朝を打ち立てる。
★.その後、2代目や3代目の時に、クーデターや地方の反乱が頻発する。
 武力で王権を打ち立てた反動なのだろう。
★.この混乱を上手く乗り切る名君が出現した時に、王朝は隆盛期を迎えて外征を行う。

 ただ、名君はそれほど出ない。
★.ダメ皇帝が現れると後宮が力を持つ。
 皇帝の母親、皇后、時にお婆さんや側室までが入り乱れて政治に介入して、ドタバタ劇となる。
 宦官が力を持つことも度々である。

★.そして官僚機構は必ず腐敗する。
 1人の皇帝が広い国土と億を超える民衆を支配する中国の宿命である。
 地方に派遣された官僚は必ずと言ってよいほど汚職を行う。

 中国の官僚は科挙に受かった秀才なのだが、秀才といえども所詮は人間であり仏様ではない。
★.世襲制でないこともあり一代で富を築こうとする。
 国が大きいから汚職をしても中央にバレないと思うのだろう。
 汚職のスケールが大きい。
 このあたりの感覚は狭い日本に住んでいたのでは分からない。

■数えるほどしかなかった周辺諸国への侵攻

 こんな国柄だから3000年以上にもわたって東アジアに君臨しながら、周辺の諸国を攻めたことは数えるほどしかない。
 外征して領土を広げることに成功したのは漢の武帝、唐の太宗、明の洪武帝、そして清の乾隆帝ぐらいである。
 そして、その全てが今でも名君として称えられている。

 ついでに言えば、約250年前に乾隆帝が広げた国境がほぼ現在の国境になっている。
 長い歴史の中で中国の領土は現在よりずっと狭かった。
 新疆やチベット、そして中国東北部(旧満州)が中国の領土になったのはつい最近のことである。

 洪武帝の時代(15世紀)に鄭和がアフリカまで遠征したが、それは洪武帝一代の事業で終わってしまった。
★.内乱が怖いから、よほど優れた皇帝でない限り遠征はできない。
 凡庸な皇帝が外征にかまけていると寝首をかかれる。

■過去の皇帝をなぞる毛沢東と鄧小平

 これは歴史の話ではない。
★.中華人民共和国を西欧の流れを汲む近代的な国家と見るよりも、中華王朝と見る方がずっとその本質が分かる。

 一代の英雄である毛沢東が新たな王朝を作った。
 建国の余勢を借りてチベットや新疆を中国に繰り入れて、乾隆帝時代の領土を取り戻すことに成功した。
 しかしその後、皇帝の気まぐれによって大躍進政策や文化大革命が行われたために、国は大きく混乱した。
 近代的な国家なら皇帝の気まぐれを諌めるシステム(議会)が存在するのだが、毛沢東の存命中に全国人民代表大会が皇帝の意に逆らうことはなかった。

 皇帝の晩年には妻である江青が政治に介入した。
 皇帝が死去するまで江青は政治を壟断(ろうだん)したのだが、皇帝が死去するとすぐ逮捕された。
 このあたりの出来事は法治国家と言うよりもまさに中華王朝である。

 その後、鄧小平という優れた2代目が出現し、改革・開放路線に舵を切ったことから国家の隆盛を見た。
 だが、経済が発展すると過去の王朝と同じように官僚の腐敗が蔓延し始めた。
 そして過去と同様に汚職のスケールが大きい。
 薄熙来は2000億円、周永康は1兆円もの資金を不正蓄財したと言われる。
 汚職騒動に妻や一族郎党が登場するところも、過去の王朝にそっくりだ。
 日本の政治家の汚職に妻や子供が出て来ることは稀だろう。

■汚職撲滅運動と「習近平の夢」

 ここまでは中国史のおさらい。
 日本が関連するのはここからだ。

 歴史が教えるところによると、中国が周辺を侵攻し始めるのは、国が成立してから少し時間が経って、名君が出現した時である。
 国内の混乱が収まらない時に中国が周辺を攻めたことはない。
 国内が混乱している時は、逆に周辺から攻められることが多かった。
 周辺から攻められていた時間の方がずっと長い。

 このような歴史を振り返ると、習近平が汚職撲滅運動を進める理由が分かる。
 日本では汚職撲滅運動を、習近平が江沢民派や共産党青年団の力を削ぐための権力闘争と見ている。
 だがそれは事の一面でしかない。

 庶民は、汚職高官のドラ息子が若い女の子を乗せてフェラーリを乗り回す姿を苦々しい思いで見ていた。
 習近平の汚職撲滅運動はそんな庶民から喝采を浴びている。
 それは庶民感情を巧みに操った権力固めであり、今のところ成功している。

 その習近平の成功は、歴史に学べば日本にとっては悪夢になる可能性が高い。
 それは、既に世界第2位の経済力を持つようになった隣国に、強い権力と求心力を持つ指導者が現れることになるからだ。

 就任当初から習近平は「中国の夢」なるわけのわからないキャンペーンを行っていた。
 中国人に聞いても、多くの人はそれがなにを意味するのか分からないと言っていた。
 しかし、汚職撲滅運動に成功して強い力を持つようになった今、「習近平の夢」が見えてきた。

 秦の始皇帝、漢の劉邦、明の朱元璋など建国の英雄に相当する者は毛沢東である。
 そして、彼らの後で外征を行って領土を広げたのが漢の武帝、唐の太宗、明の洪武帝、清の乾隆帝である。

 中国の経済力が世界経済に占める割合は既に過去の偉大な王朝の水準に達している。
 中央の権力闘争を鎮めて地方官僚の汚職を撲滅することができれば、その力を持って周辺に覇を唱えることができる。
 それが「習近平の夢」であり、中国民衆の夢とも重なる。
 まさに「中国の夢」なのだ。

■「偉大な皇帝」は覇権主義に突き進む

 もし2015年に汚職撲滅がさらに進み、習近平の求心力が一層強まることになれば、それは清の乾隆帝以来250年ぶりに国力が充実し、かつ求心力のある政権が生まれたことを意味する。

 習近平が中国史に残る偉大な皇帝たらんことを夢見れば、当然のこととして周辺に覇を唱えることになる。
 それは日本にとってはまさに悪夢である。
 少子高齢化が進む中で、隣国の覇権主義に対抗しなければならなくなるからだ。
 尖閣諸島だけの問題ではなくなるかも知れない。

 それを占う上でも、2015年の中国の政治から目を離すことができない。



JB Press 2015.01.19(月)  柯 隆
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42621

鄧小平の時代に終止符を打った習近平
中国の新時代が幕開け、
しかし先行きは不透明

 日本では2014年の世相を表す漢字として「税」が選ばれた。
 もしも中国で2014年の世相を表す漢字を選ぶとすれば、おそらく「腐」になるだろう。

 中国では2014年の1年間で、大臣・副大臣級の共産党幹部が60人も摘発された。
 中国の若者たちはネット上で「腐敗していない共産党幹部がいるだろうか」と書き込んでいる。
 「腐敗幹部による腐敗幹部の摘発に何の意味があるのか」
という辛辣な書き込みもあった。
 しかし、そうはいっても、腐敗幹部を摘発しないよりは摘発したほうがいいだろう。

 共産党中央委員会政治局前常務委員の周永康氏が腐敗、姦通、機密漏えいなどの罪に問われ逮捕されてから、ネット上では習近平国家主席を支持する書き込みが増えている。
 だが習近平氏の反腐敗キャンペーンには大きな落とし穴がある。
 それは、腐敗して罪を犯した幹部を摘発しているが、その幹部がなぜ腐敗したかという総括がない点だ。
 共産党幹部が今後腐敗しなくなるような制度作りはなされていないのである。

 習近平政権がこの2年にわたって繰り広げてきた反腐敗キャンペーンは、日本の年末の大掃除のような“恒例行事”であり、効果は一時的と見る向きがある。
 また、反腐敗キャンペーンは権力闘争の一環に過ぎず、習近平氏が政敵を倒すために展開しているだけだという見方もある。
 これらの見方はいずれも一理ある。

■鄧小平路線を終わらせる習近平政権

 ここで改めて習近平政権誕生の意味を検証してみよう。
 筆者は、1つの時代の終焉を象徴するものと捉えている。

 すなわち、
★.鄧小平の時代が習近平政権の誕生で終わったのである。
 鄧小平路線は35年にわたって奇跡的な経済高成長を成し遂げたが、行き詰まっているのも明白である。
 経済こそ成長したが、環境汚染が深刻化し、所得格差も極端に拡大してしまった。
 政治改革がまったく着手されなかったため、共産党幹部の腐敗も空前絶後と言われるほど深刻化している。

 習近平国家主席にとって、鄧小平路線を継承する選択肢はもはやない。
 習近平政権の誕生は中国では新たな時代が始まったことを意味するものと言えるかもしれない。
 つまり、成長一辺倒よりも公平、公正、平等を追求する時代になるということだ。

 習近平氏の改革で新年早々から予想外の展開を見せているのは、国有企業経営者の年収の上限を制限する通達が出されたことである。
 国有企業経営者の年収は従業員平均の8倍以内に抑えなければならない、その上、すべて公開する、というものだ。
 決して100点満点の改革ではないが、一歩前進といったところである。

 むろん、研究者の間では習近平氏がきちんと改革を遂行できるかについて疑問視する声が少なくない。
 一部の研究者は習近平氏のカリスマ性の弱さを問題視している。
 別の研究グループは国家主席への権力集中を懸念している。

 こうした研究はまったく無意味とは言わないが、いかなる政治家も、改革して何も得られないのであれば改革を遂げようとはしない。
 必要性があり、成果が期待できるから改革に挑むのである。

 35年前、鄧小平も改革しなくて済むならば改革を断行しなかっただろう。
 ただ、当時、毛沢東時代末期、中国経済は破綻寸前にまで陥っていた。
 実権を握った鄧小平は改革を進めなければ、中国が崩壊する恐れがあった。

 この文脈で言えば、習近平国家主席にとっても改革を先送りする選択肢はもはやない。
 問題はいかに改革を進めるかである。
 ここで問われているのは習近平氏の描く国家像である。

■民族主義、毛沢東主義、資本主義を束ねられるか

 専制政治の特徴は、民主主義の合議制で物事が決まるのではなく、政治指導者の権威がものを言うことである。
 胡錦濤政権の10年間、胡主席の権威は予想以上に弱体化してしまった。
 その結果、ほとんどの改革が先送りされた。

 その負の遺産を引き継いだ習近平国家主席は同じ轍を踏まないように、毛沢東主義に回帰し、反腐敗キャンペーンを展開するなかで自らの権威を急速に強化しようとしている。 
 毛沢東主義は強権政治が特徴である。

 習近平氏は毛沢東時代の経済運営の失敗を実際に体験したので、統制経済の実施はあり得ない。
 2年前にも習近平氏は市場メカニズムの機能を強化するための改革を推進すると強調した。
 経済的には資本主義のやり方を受け入れ、それを一段と強化する考えのようだ。

 さらに、中国社会において充満している民衆の不満と怒りをガス抜きしなければ、社会はますます不安定化する。
★.では、どのようにして中国社会の不満をガス抜きしていくのだろうか。

★.即効性のあるやり方はナショナリズムを煽る民族主義である。
 このやり方は綱渡りのような危険な賭けだが、それ以外の良い処置法は見つかっていない。

 これまでの2年間を振り返ると、習近平国家主席は就任当初から「中国の夢」を国民に唱え、中華民族の復興を提唱してきた。
 これはまさに民族主義の鼓吹(こすい)である。
 そして、2014年、習近平氏の一存で国内の有名な左派芸能人たちが集められ「文芸座談会」が開かれた。
 その座談会で習近平氏は、
 「かつての毛沢東を見習って、いかなる文芸活動も社会主義に貢献しなければならない」
という談話を発表した。
 その座談会に参加した画家の1人は即興で漢詩を作成した。
 その漢詩のなかで習近平氏を皇帝に例えた。
 これこそ毛沢東主義の復活である。

 一方で経済運営を見ると、上海の自由貿易実験区で行われた改革のように規制緩和を進め、民営企業の市場参入のハードルを引き下げると言われている。
 これによって、胡錦濤政権のときに進んだ「国進民退」(国有企業が前進し、民営企業が後退する)に歯止めがかけられると期待されている。

 しかし、これらの民族主義、毛沢東主義、資本主義という、まったく異なる方向へ向かっているベクトルを、習近平国家主席は同じ方向へ向かわせることができるのだろうか。

 習近平政権の誕生で中国社会の流れは確かに鄧小平の時代に終止符を打った。
 しかし新たな時代の方向性はまだ不透明なままである。



朝日新聞デジタル 2015年1月15日02時07分
http://www.asahi.com/international/reuters/CRWKBN0KN1ZV.html

中国共産党「ごまかし・へつらいNO」、
大手国有企業すべて調査へ

 [北京 14日 ロイター] - 
 新華社によると、中国共産党で汚職調査を担当する中央規律検査委員会は、今年中にすべての大手国有企業を調査する方針を明らかにした。
 また、海外に逃亡した経済犯罪の容疑者や、関連の不正に蓄財した資産を追跡するために他国の協力を一段と求めると表明した。
 規律検査委は、国有企業の幹部は「規則に従う」必要があり、共産党は「縁故主義を許容せず、ごまかしやへつらいを認めない」と警告した。
 規律検査委はまた、中央政府の8つの機関と共産党中央委員会に駐在所を設置する。



レコードチャイナ 配信日時:2015年1月1日 13時0分
http://www.recordchina.co.jp/a677.html

2015年の世界経済、カギとなるのは?
中国の存在が特に重要―英紙

  2014年12月29日、英紙オブザーバーは
 「15年の世界経済において鍵となるのは、
★.ロシアとウクライナ、
★.石油、
★.中国、
★.米国とユーロ経済圏
だ」と予測した上で、
 中でも「中国の存在が重要になる」と伝えた。
 中国紙・参考消息(電子版)が伝えた。

 さらに、英紙エコノミストの記事を引用し、
 「中国はすでに世界最大の経済体となった。
 資本の純輸出国でもあり、かなり早い段階で外貨準備高『国際クラブ』入りする可能性が高い」
と報じた。

 中国経済が伸び悩んだ場合、主に二つの方面で影響が出ると予測。
★.まず中国の輸入が減少した場合、
●.ドイツなどの機械生産国とオーストラリアなどの原料輸出国に打撃となる
と指摘。
●.中国経済の伸び悩みは石油の国際価格を押し下げる
とした。

★.第2に中国経済が伸び悩んだ場合、
●.世界の輸出が減少すると予測。
 中国製品の輸出価格も下がり、
 米国や欧州市場に中国製品があふれ、インフレ率が下がる
とした。






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