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レコードチャイナ 配信日時:2015年1月14日 9時55分
http://www.recordchina.co.jp/a100640.html
中国版ツイッター、今年中に実名制導入へ=
ネットユーザーからは危惧の声も
「個人情報を悪用されたらどうする!」
「沈黙するしかない」
2015年1月13日、中国・国家インターネット情報弁公室は、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)や検索最大手・百度(バイドゥ)の掲示板などで今年中に実名制を実施すると発表した。
中国各紙が伝えた。
国家インターネット情報弁公室モバイル・ネットワーク管理局責任者の徐豊(シュー・フォン)氏によると、実名制の他にネットユーザーの身分情報管理を強化する方針だという。
中国各紙(電子版)のニュースのコメント欄に寄せられたユーザーの意見は、実名制の導入を支持する声ばかりで、反対意見は皆無だ。
だが、微博には実名制に対する不安を訴える書き込みが相次いでいる。
そのなかで代表的なものを紹介する。
「実名って、私の名前がみんなに知られるってこと?
悪用されたらどうするの?」
「個人情報を公開するのと一緒じゃないか」
「私のプライバシーは?私の人権は?」
「それが本当なら、沈黙するしかないな」
「オレたちの口をふさぐのが目的なんだろ」
「もう微博やめるわ」
』
『
サーチナニュース 2015-01-14 22:25
http://news.searchina.net/id/1557214?page=1
「ネット実名制」 中国で導入へ
・・・個人情報の「管理強化」が目的=中国メディア
中国メディアの新京報は、中国国家互聯網信息弁公室(国家インターネット情報弁公室)が13日に行った記者会見で、中国の簡易投稿サイト・微博(ウェイボー)やネット掲示板において実名制を導入する方針を発表したことを伝えた。
記事は、国家インターネット情報弁公室の関係者の話として
「今年はネット上における個人情報の管理を強化する方針」
であることを伝え、ウェイボーや掲示板における実名制の導入を通じて管理監督および法執行を強化すると報じた。
さらに同関係者が2014年末に国家インターネット情報弁公室が実施した調査の結果として、中国のインスタントメッセンジャーアプリである「微信(ウェイシン)」では本当の身分でログインしているユーザーの割合が80%を超え、そのほかのインスタントメッセンジャーアプリにおいても90%以上のユーザーが本当の身分でログインしていたと紹介した。
国家インターネット情報弁公室が微博やネット掲示板において実名制を導入すると発表したことについて、微博上での反応を見てみると、
「ネットにさよならを言うべき時が来たようだ」、
「実名制となったら微博はもうやらない」
など「拒否反応」とも言うべきコメントが多く見られた。
また、「習近平政権は厳しすぎる」という声や、
「ネットに実名制を導入するなら、共産党幹部の資産も透明化すべきだ」
との指摘もあり、情報統制の強化にもつながりかねない実名制の導入に対し、諸手を上げて賛同を示すユーザーは皆無だった。
』
『
JB Press 2015.01.15(木) 姫田 小夏
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42624
中国の「日本オタク」は著作権意識が高かった
コンテンツ配信ビジネスに健全化の動き
「『昼顔』見た?」
「えー、まだ見てない」
「早くネットで見てみなよ、おもしろいから」
いまどきの上海の若者は日本人以上に日本の映画やドラマ、アニメをよく見ている。
しかも、従来は一部の日本ファンに限られていた視聴者が、そのすそ野をぐっと広げるようになった。
昨年、上海の外資系企業に新卒入社した自称“日本オタク”の中国人女性、何華群さん(仮名)はこう話す。
「それまで日本のドラマや映画に無関心だった人々が、『半沢直樹』以来、一斉に見るようになりました。
最近では『昼顔』ですね。
私の周りの友人はみんな見てますよ」
「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」(フジテレビ系ドラマ、主演は上戸彩)は上海の若者だけではなく中高年をも夢中にさせているらしい。
しかも、いまどきの中国人は海賊版DVDなど買わずに、「優酷」や「土豆」といった動画投稿サイトにアクセスしてこれを見る。
地下鉄の車内ではスマートフォンの画面にかじりつく姿があちこちで見られる。
ちなみに昨年の上海国際映画祭では、日本映画ウィークに上映される「そして父になる」(是枝裕和監督、福山雅治主演)のチケットを求めてファンが殺到し、一瞬にして売り切れるという出来事も起きている。
■地上波から消え去った日本のアニメ
日本貿易振興機構(JETRO)が行った
「中国における日系コンテンツ受け入れ状況等データ」(2014年8月)
という調査がある。
2013年度第3、第4四半期に中国で日系コンテンツの露出がどれだけあったかを調べたものだ。
「必ずしもすべてを網羅しているわけではない」
との但し書きがあるにせよ、近年の中国が日本のコンテンツをどれくらい受け入れているのかがよく分かる資料だ。
この調査によると、2013年第3、第4四半期に中国のテレビで放映された日本のドラマはたったの1本しかない。
山口百恵と三浦友和主演の「赤い衝撃」(1976~77年放映のTBS系ドラマ)である。
また第3四半期におけるテレビでの日本映画の放送は、栗原小巻主演の「サンダカン八番娼館 望郷」(1974年、熊井啓監督)ほか2本だけだった。
1970年代に日本から買ったフィルムが、いまだ大事に使い回されているようだ。
一方、中国のテレビでは、日本アニメがほとんど放送されなくなった。
2000年代前後には「ドラえもん」や「一休さん」をはじめ「ちびまる子ちゃん」「カードキャプターさくら」などが放送され、中国で日本アニメは黄金期を迎えていた。
しかし、
「近年は日本のコンテンツは中国の検閲を通過しづらくなった」(日本のテレビ局関係者)
と言われている。
■ネット配信が大きく増加
これら地上波コンテンツは、放映契約に基づいた正規ルートでの流通であると推察されるが、日本のコンテンツは“商売上がったり”といった状況にある。
その一方で、「正規版の放送の減少」に相反して増加しているのが、ネット上の配信である。
同調査によれば、最も顕著な違いが見られたのはドラマ分野だという。
前年(2012年)同期はネット配信される日本のドラマは確認されなかった。
しかし、2013年には32タイトルが確認されたのだ。
ドラマ以外にも、映画は8タイトル、アニメは89タイトルがネット配信された。
再生回数は、
★.ドラマでは「僕のいた時間」(2014年冬のフジテレビ系ドラマ、三浦春馬主演)が875万回、
★.映画では日中合作映画「スイートハート・チョコレート」(2012年、篠原哲雄監督)が1568万回、
★.アニメでは「黒子のバスケ 2nd SEASON」で1億2000万回
と高い人気を見せた。
日中関係の冷却期にもかかわらず、おおぜいの中国の若者たちが密かに日本のコンテンツを楽しんでいた様子がうかがい知れる。
■健全化に向かう日本のコンテンツ配信
動画投稿サイトの性格を考えれば、これらの作品は非正規版である可能性が極めて高い。
日本は非正規版の流通とほぼ20年にわたって戦っているが、その取り組みはいたちごっこであり、相変わらず無料でアクセスできる「非正規版」が存在する。
だがその一方で、変化もある。
JETROコンテンツ産業課の幡野裕一さんは次のようにコメントする。
「『愛奇芸』のように正規版しか配信しないという動画投稿サイトも出てきており、必ずしもすべてが非正規ではないと言えます。
日本側が『販売した記憶がない』との申し立てをすると、その後、契約に基づいて配信し直すという前向きな解決も見られるようになりました」
また、ネット配信の数が急増したことについては、
「中国のネット配信業者各社が顧客獲得を目指して、海外コンテンツを積極的に購入しているのではないか」
と分析している。
「むしろ中国では正規配信に向けて健全化が図られている」
と話すのは、アサツーディ・ケイコンテンツ本部コンテンツ戦略室の伊藤直史さんだ。
同社の子会社は中国で複数の配信サイト事業者に正規版の販売を行っているが、「2010年以降から変化の兆しが表れた」と言う。
「中国では『正規版しか配信しない』というサイトが数十社にまで増えています。
正規版配信サイトに転身した事業者が、違法サイトを駆逐しようとする現象も生まれています。
違法サイトには有料コンテンツも広告料も集まらなくなり、次第に淘汰されていくはずです」(同)
ここで興味深いのは、潤沢な資金に恵まれ、かつ「正規ビジネス」に目覚めた事業者らが、今度は“日本詣で”に転じるようになったことだ。
「非正規版を流すのはもうやめたから、コンテンツ供給を頼む」
――と営業して回る時代になったのだ。
ちなみに、「黒子のバスケ」は2013年10月から日中でほぼ同時放映された。
「公開のタイミングが遅れるとどんどん海賊版が出てくる。
これを食い止めるには新作は同時に公開するしかない」(伊藤さん)
のだという。
「日中同時ヒット」も見込めるようになるとは、時代も環境も大きく変わったものである。
■“日本オタク”は著作権意識が高い?
前出の何華群さんの発言は、こうした変化を裏付けるものとして注目したい。
「子どもの頃、私はテレビで日本アニメをよく見ていましたが、近年はネットでダウンロードするようになりました。
けれども、最近はネット上で見るのも難しい。
中国全体で著作権に対する意識が高まっていて、非正規版を除去し、正規版を課金して見せる動きが顕著になっているからです」
有料化されると、やはり日本のコンテンツを見る人は大きく減るのだろうか。
何さんにそう尋ねると次のようなコメントが返ってきた。
「そんなことはないと思います。
日本のアニメが好きな“日本オタクたち”も実は著作権に対する意識が高いんです。
見るなら正規のもの、買うならホンモノを、という意識です。
知らず知らずのうちに日本文化や日本社会に影響されたのかもしれませんね」
さて、前出の伊藤さんによれば、
中国では「『クレヨンしんちゃん』が爆発的な人気」
なのだそうだ。
同社はこのコンテンツを15社に販売したが、そのうち5社の月間再生回収は1億6000万回にも上ると言う。
伊藤さんも「日本のYouTubeでもこんな数字は出せない」と驚愕する。
日本のコンテンツプロバイダは海賊版や非正規版と長らく戦ってきたが、ここに来て、ようやく中国でまともなビジネスができる土台が醸成されつつあるようだ。
日本勢の粘り勝ちと言ってもいいだろう。
しかし、「安心はできない」と伊藤さんは言う。
中国政府がネット配信への規制をかけてくる懸念が払拭できないためだ。
ましてや習政権による、毛沢東時代を彷彿とさせるかのような一連の情報統制の動きの中には、知識人のブログを閉鎖するなど「逆行現象」もある。
こうした空気の中で、日本のコンテンツも「思想上有害」と排斥されかねない。
薄氷を踏むようなビジネス――、中国ビジネスの本質は今も昔も変わらないようだ。
』
『
JB Press 2015.02.16(月) 柯 隆
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42900
人民はバカじゃない
中国の愚民政治はいつまで続くのか?
統治の手段は権力者の神秘化とプロパガンダ
習近平主席、中国主導の「アジア太平洋の夢」を提示
資本主義と民主主義の政治は、基本的に国民の支持を基盤とする「親民政治」である。
そのため、政治家はできるだけ親しみやすさを演出しようとする。
さもなければ、選挙民から票を集めることができないからだ。
だが、選挙民の代弁者としての役割を果たす政治家は、往々にしてポピュリズムの政治を行いがちになる。
ポピュリズムは選挙民に迎合する動きであり、正義であるとは限らない。
選挙民はそれぞれの立場から政治に期待を寄せる。
また、選挙民が知り得る情報にはもちろん限界がある。
そのため、ときには民主主義の政治は間違った方向へ行ってしまうことがある。
■社会主義の指導者には「神秘性」が必要
それに対して、社会主義の政治は、指導者の権威を根拠に国を動かし、人民を動員する。したがって、社会主義体制の指導者にはある種の神秘性が必要となる。
そのため普通の人としての一面はできるだけ人民に見せないようにする。
指導者が神秘的であればあるほど、人民からの崇拝が高まる
のだ。
振り返れば、毛沢東はその神秘性を保つことに大成功した。
中国人民にとって晩年の毛沢東はまるで神様のような存在だった。
毛沢東が死去したとき、人民はまるで神様が死んだような感覚だった。
一方、神様のような毛沢東と人民の間のパイプ役を果たしたのが周恩来首相である。
周恩来は「人民の総理」と呼ばれ、神様ではなく人間だった。
周恩来が死去したとき、人民は親族の1人が亡くなった感覚を覚えたのだった。
社会主義体制を維持するうえで指導者の神秘性を保つことは必要不可欠である。
それゆえ、中国の政治指導者はよほどのことがなければ、記者会見は行わない。
2014年11月、北京で開催されたAPECでは、習近平国家主席は記者会見を行う予定はなかった。
だが、米国のオバマ大統領との首脳会談のあと、米国からの強い要請に応じて短い記者会見を実施した。
■プロパガンダは「愚民政治」の重要なツール
マインドコントロールの有効性は科学的に実証されている。
小説家は嘘を百回言えば、真理になるという。
どう考えても嘘は真理にならないが、百回も言われれば、これは真理ではないかと勘違いしてしまうということだ。
中国では社会主義中国が成立してから一貫して「愚民政治」が行われてきた。
人民を愚民化して、関心を政治からそらす愚民政治は、もちろん中国の専売特許ではない。
かつて日本でも愚民政治が行われていた。
「水戸藩資料」には、徳川斉昭が「百姓に学問など全く不要だ」と公言したことが記述されている。
権力者にとって人民を愚民化したほうが国を統治しやすくなる。
愚民政治においてもっとも重要なツールはプロパガンダ(宣伝工作)である。
社会主義中国が成立する前の共産党は
「共産党こそが貧しい人民の政党である」
と宣伝していた。
建国したあとの共産党は、
「共産党がなければ、新中国がない」
とのプロパガンダを徹底した。
また、毛沢東については、
「大海を航行するときはヘルムスマン(ヨットの舵を取る乗組員)が頼りになるが、
革命においては毛沢東思想が頼りになる」
といった宗教の説教のようなプロパガンダが作られた。
プロパガンダに加え、愚民政治が効果を発揮するためにもう1つ重要な条件がある。
それは、外部の情報を遮断することだ。
毛沢東時代、中国社会は完全に真空パックされたような状態で、人民は外部の情報にまったく接することができなかった。
外国の新聞を目にすることなどないし、一般家庭にはテレビなどなかった。
唯一、外国の情報に触れることができるのは短波ラジオを通してだった。
政府は外国のラジオ放送を「敵台」(敵国のラジオ)と定義し、ラジオを聞く人は密告されて投獄された。
多くの中国人は「敵台」が有害なものであると信じ、自ら聞こうとはしなかった。
むろん、今の中国社会をもう一度真空パックすることはできない。
中国社会はすでに開放されている。
いまや、毎年1億人以上の中国人が海外旅行に出かけている。
インターネットは厳しく監視されているが、中国政府にとり不都合な情報を完全に遮断することはできない。
ちなみにネットにおいては、最近、時代の流れに逆らった言動が散見され、中国は毛沢東時代に逆戻りするのではないかと心配する向きがある。
こうした心配は無意味ではないが、過度な心配は無用である。
■プロパガンダに迎合する知識人
金融市場では、わずかな資金をリスクの高い金融商品に投資して一獲千金を狙う投機的行為がある。
社会主義体制では、マインドコントロールされていない知識人の「投機的行為」が見られる。
つまり、政府のプロパガンダを熟知している知識人が、それに迎合した言動を繰り返すことで、自らの利益を最大化しようとするのだ。
世界的にも名前が知られている清華大学の某教授(経済学者)は、
「中国共産党の集団指導体制はアメリカの民主的選挙で選ばれる大統領制より優れている」
という趣旨の文章を執筆し、中国国内で発表した。
この大学教授はアメリカのマセチューセッツ工科大学(MIT)に客員教授として長期滞在したことがある。米国の大統領制と中国の集団指導体制の違いは、もちろんよく知っているはずである。
指導者が聞きたいことしか言わないのは、
まさに迎合主義者の常套手段
である。
中国が社会主義体制を持続していくためには、
自らにとり都合の悪い情報を遮断し、人民を愚民化して
いかなければならない。
そのために政府はそのプロパガンダを利用し、人民に向けて同じような“説教”をなんども繰り返していく。
最近、中国の教育部長(文科大臣)は「学校で西側の価値観を教えてはならない」という談話を発表した。
今さらこんな発言にどんな意味があるかと思われるかもしれないが、現下の政治環境を反映した発言とも言える。
■権力を失うことがなによりも恐ろしい中国の政治家
社会主義政治のもう1つの特徴は恐怖主義である。
重慶市共産党書記だった薄煕来は、在任期間中に複数の政敵を違法な手段で投獄した。
だが、権力闘争に敗れ汚職容疑で起訴された薄煕来は、皮肉なことに自分も公正な裁判を受けることができなかった。
日本の政治家は選挙で負けても、身の安全は保障されている。
しかし、中国の政治指導者にとって、権力を失うのはこの上なく恐ろしいことである。
天安門事件をきっかけに失脚した趙紫陽元共産党総書記は、裁判を受けることもなく、死去するまでずっと軟禁状態に置かれていた。
現在、習近平国家主席は共産党内の腐敗撲滅に取り組んでいる。
だが中国の研究者の間では、権力者にとっては幹部が腐敗しているほうがいいとの指摘がある。
なぜならば、政見が異なる幹部が腐敗していれば摘発する口実ができるからである。
こうして社会主義の政治においては、人民の存在はほとんど無視されていると言ってよい。
共産党幹部の執務室が集まる北京・中南海の入り口には、「為人民服務」のスローガンが掲げられている。
しかし、彼らは本当に人民のために服務しているのだろうか?
』
『
JB Press 2015.02.23(月) 裴敏欣
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42990
中国:「西側の価値観」との戦い
中国から最近伝わるニュースは大抵、気が滅入るものだ。
中国政府が批判派の弾圧を強化しているためだ。
だが、観測筋、特に経済アナリストがほとんど理解していないように思えるのは、
★.自由主義と「西側の価値観」に対する中国指導部の戦いが、
役人の腐敗を根絶し、
イノベーションと企業家精神を促進し、
外部世界との関与を深めようとする政府の努力
を直接損ねているということだ。
時代に逆行する政府の政策は、中国の持続的経済発展に深刻な悪影響をもたらすだろう。
■弾圧を強化する中国政府
まず、政府はインターネットの検閲を強化しており、その結果、グーグル、フェイスブック、ニューヨーク・タイムズなどを含む人気のポータルやウェブサイトがほぼ閲覧不能になっている。
さらに、有名な人権派弁護士が何人も拘束されている。
例えば、言論の自由を唱える著名弁護士、浦志強氏は、検察当局が同氏の立件を試みる間、すでに半年以上拘束されている。
一方、中国の政府高官は、中国共産党内部で政治的な規律を徹底するようになった。
昨年6月、中国社会科学院に籍を置く中国共産党規律検査委員会のトップ、張英偉氏は、中国最高峰の政府系シンクタンクである同院について
「外国勢力が浸透しており、政治的に微妙な時期に違法な共謀を行っている」
と述べた。
社会科学院の副院長で院内党組織の副書記を務める趙勝軒氏はこれに応じ、社会科学院は
「学者を評価するうえで、政治的な規律を最重要基準として扱う」
と誓った。
そのすぐ後、社会科学院の王偉光院長は論文の中で、
中国における階級闘争は絶対に消滅しない
と断じた。
政権が敵探しをする中で、中国の学界全般が大きな標的となっており、いくつかの大学は立憲主義のような「扇動的な」思想を支持したという理由で教授を解任している。
特にひどいケースでは、遼寧省の政府系新聞が、教授が体制を批判するところをつかまえるために、学生に変装した記者を教室に送り込んだ。
中国教育相の袁貴仁氏の最近の発言は、それよりはるかに甚大な害を及ぼす恐れがある。
袁氏は「西側の価値観を広める」教科書――特に「党の指導部を攻撃、誹謗したり、社会主義を中傷する」もの――を中国の教室内に絶対に持ち込ませないと断言した。
袁氏の地位を考えると、この誓いの言葉は事実上の公式方針になる。
中国のためには、そうならないことが望まれる。
言論の自由と西側の価値観に対する最近の激しい攻撃は、
習近平国家主席が直面している重大な政治的課題を反映している。
習主席は強欲と不信感によって弱体化した一党体制を、市場を基盤とした改革を実行し、自己の長期的存続を維持することができる、思想的に結束した秩序ある体制に変えなければならない。
■習近平国家主席のビジョンの論理的な欠陥
自由主義の弾圧は、自身の反腐敗運動とともに、この目標を推し進めていけると習氏は考えているようだ。
このビジョンは、非現実的であるのと同じくらい論理的に欠陥がある。
どれだけ懸命に努力しようと、
報道の自由や健全な市民社会、法の支配がない状態で一党体制の腐敗を根絶するのは事実上不可能だ。
しかし、報道の自由といったこれらの要素は、まさに中国共産党の政治局員らが排除しようとしている「西側の価値観」なのだ。
中国はこの過ちに対して大きな代償を払うことになるだろう。
袁氏の教科書キャンペーンが、標準以下のレベルの教材を使うしかなくなる2800万人の中国の大学生に与える影響を考えてみるといい。
教育がこんな形で損なわれた場合、どうすればこうした学生がグローバル経済の中で競うことを期待できるのか?
現在のトレンドは、特に社会科学と人文科学の分野で、教師にとっての条件が悪化することも意味している。
学者たちは西側諸国との学術的な交流に関して、より厳しい制限を課されるからだ。
海外の会議に出席したり、西側の学術誌に寄稿したり、中国国外で学生を指導し、自ら研究することに時間を費やす機会が減ると、学者の専門能力の開発とキャリアが著しく損なわれるかもしれない。
その結果、政府による「西側の価値観」の抑圧は――ましてやネットに対する執拗な戦いは言うまでもなく――、
中国のトップクラスの精鋭の流出に拍車をかける
ことになりそうだ。
2013年には41万3900人という前代未聞の数の中国人学生が海外に留学しており、
2014年にはさらに増えることが予想されている。
そのうち9割の人が西側諸国(および日本)を留学先に選んでいる。
■悪夢と化す「中国の夢」
確かに、大学に通う年齢の中国人学生のうち外国の大学へ留学する学生はごくわずかだ。
実際、2013年に海外留学した学生の数は、
中国の大学に進学した学生の「6%程度」に過ぎない。
しかし、
★.中国の支配層のエリートは、
自らの長期的存続の代償としてこの集団を見限るどころか、逆に出口へ殺到する流れを先導し、
自分の子供たちを主に米国のアイビーリーグや英国のオックスフォード大学、ケンブリッジ大学に留学させている。
共産党の指導者は、自分たちの子供が西側の価値観に洗脳されることを心配しないのかと不思議に思える。
★.彼らはすでに、明らかに、自分の子供を中国の大学に行かせたくないと考えている。
そして、もし袁氏がその意を通せば、中国の大学は次第に、世界レベルの西側の大学よりも北朝鮮の大学に似てくるだろう。
そうなったら、広範囲に及ぶ壊滅的な影響が出る。
中国国内に残った何千万人という学生は、中国経済の国際競争力を維持するために必要な知識とスキルを得られない。
ましてや、競争力を高めることなど論外だ。
実際、中国の持続的経済発展にとってイノベーションが不可欠であることを考えれば――この点は習主席が繰り返し強調している――、中国の教育における西側の影響力との戦いは全くもって不合理だ。
政府の弾圧がすぐに終わらなければ、国の偉大さと繁栄という習氏の「中国の夢」は、加速する衰退と高まる後進性という悪夢に変わるだろう。
いずれにせよ、
西側の価値観に対する戦いは、中国が負けるしかない戦い
なのだ。
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