2015年1月28日水曜日

中国共産党の権力抗争(3):「解放軍最高指導者は習近平主席」と解放軍報が1面で強調するワケ?「習家軍(習近平の軍隊)」に

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 解放軍の汚職軍人という上層部の泡を潰し始めたら、その下から堅固な分派勢力が出てきた、といったところのようである。
 同じことは汚職官僚層という上部層の泡を潰すと、勢力隠然たる分派官僚勢力が姿を表す可能性がある。
 汚職腐敗撲滅だけでことは済まないようである。
 独裁になればなるほど絶対的に腐敗していくが、
 同時に絶対的に反対勢力が生まれてくる
ことにもなる。
 「2015年の中国」がどうなっていくのか、ドラマはまだまだ続いていくようである。


サーチナ 1月28日(水)10時29分配信
http://news.searchina.net/id/1559122?page=1

軍の最高指導者は習近平主席
・・・解放軍報が1面で強調、軍内部に「分派」か

 中国・中央軍事委員会機関紙の解放軍報は28日付の1面で、
 「工作制度はさらに1歩、真に厳しくせねばならない」
との見出しの記事を掲載した。
 同記事は、軍の指導者が中央軍事委員会主席、すなわち習近平主席と改めて強調した。
★.中国では「常識」である制度を強調したことは、
 軍内部に指導体制に抵抗する勢力がある可能性を示唆
するものと言ってよい。

 記事は、
★.「党の軍に対する絶対的な指導は抽象的な原則要求ではない」、
★.「(制度の)核心は、部隊の最高指導権と指揮権は党中央と中央軍事委員会に属することだ。
 中央軍事委員会は主席による責任制度を実施えいている」
などと主張。
★.軍に対する党と中央軍事委員会の指導と、
 中央軍事委員会主席が同委の責任者であることを繰り返し強調した。

 さらに、軍に対する絶対的指導体制を堅持するために、
★.「高級指導幹部と指導機関の責任がさらに大きい。
 態度を特別に鮮明にせねばならない。
 断固として行動せねばならない」、
★.「言葉(個人的発言)を持って法に代え、権力で法を曲げ、私情で法を曲げることは絶対に許されない。
 個人の権勢で紀律順守や法の執行を妨害することは、絶対に許されない」
などと主張した。

 中華人民共和国憲法は、「中国共産党が国家を指導」や「中央軍事委員会が(人民解放軍など)全国の武装力を指導」、「中央軍事委員会は、主席責任制を実施」ことを明記している。
 さらに、中華人民共和国国防法は、同国の武装勢力は「中国共産党の指導を受ける」と明記している。

 上記は、中国では「ほぼ常識」だ。
★.解放軍報が「当たり前」のことを繰り返し強調する文章を、しかも1面に掲載したことは、
 軍内に党執行部、つまり習近平体制に抵抗する勢力が存在し、
 体制側にとっても放置できない状況になっている可能性を示唆する
と言ってよい。

 解放軍報の記事が「腐敗問題」に直接触れていないことも注目に値する。
★.軍内部に腐敗や利権問題とは別に、
 習近平体制に批判的な勢力が存在する可能性がある。

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◆解説◆
 中国には2つの「中央軍事委員会」がある。
★.ひとつは中国共産党中央軍事委員会で、
★ もうひとつは国家中央軍事委員会だ。

 党中央軍事委員会の前身は1925年設立の中央軍事運動委員会。
 その後、中央軍事部、中央軍事科などと名称や組織は変更されたが、中国共産党の「核心的機関」として存在しつづけてきた。

 一方で、国家中央軍事委員会は1983年の発足。
 中国人民解放軍はもともと、国軍ではなく、中国共産党という政治勢力が持つ「私軍」だった。
 中華民国国軍との戦いに勝利して、国民党政権を「海外」である台湾に追いやることに成功したが、
★.「国軍と公然と戦った」からには「反乱軍だった」
と言ってもよい。

 1949年の中華人民共和国発足後、中国人民解放軍は「国防」の任務を担うことになったが、制度上は「国軍でなく共産党軍」との位置づけが残った。
 1983年の国家中央軍事委員会の設立は、「国軍としての人民解放軍」の方向性を打ち出したものとされる。

 ただし国家中央軍事委員会と国家中央軍事委員会は構成員が同じであり、実質的に同一の組織だ。
 そのため中国人民解放軍は現在も、「党軍」という性格が極めて強いと考えてよい。



JB Press 2015.02.02(月)  阿部 純一
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42771

腐敗分子一掃で
「習近平の軍隊」化が進む人民解放軍
「身内びいき」の抜擢人事は反発を買うおそれも

 以前、 本コラム「両立は困難、習近平はなぜ2つの改革に挑むのか」で、習近平の軍に対する「反腐敗」キャンペーンと軍の近代化を目指す改革を同時に進めるのは無理があることを指摘した。
 軍を改革するのならば、腐敗分子を一掃してから取りかかるのが順序だと考えたからである。

 しかし実態は、反腐敗も軍事改革も同時並行で進める構えを崩していない。
 そこから導かれる考え方としては、習近平による「軍権」掌握のプロセスを進めることこそが真の目的であり、2014年6月末の徐才厚「落馬」(汚職容疑で党籍を剥奪され逮捕された)以後の人民解放軍における一連の人事は、
 反腐敗と軍の改革に名を借りた「習近平の軍隊」化である
と言える。

■習近平の命令に忠実であることを要求

 2014年9月21日、北京で全軍参謀長会議が開催され、そこに出席した習近平主席は次のことを強調した。

 「国家安全保障における新たな情勢および軍事闘争準備における新たな要求を前に、
 党の指揮に従い、
  計略に長け戦争する(善謀打仗)新型司令機関の建設に努め、

 軍事工作の創新発展を推進し、
 部隊が情報化された局地戦争に勝利するよう組織し指揮する能力を絶えず強化しなければならない」

 ここで言及された「新型司令機関」が何を意味するのか、
 2013年の「党18期3中全会」(中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議)で提起されていた軍事改革とどう関係してくるのか、
 その後の報道を待ったが新たな情報は出てこなかった。
 そうしたところ、2014年12月25日、中央軍事委員会が習近平主席の批准を経て
 「党の指揮によく従い、計略に長け戦争する新型司令機関の建設に努力することに関する意見」
を発出した。

 この「意見」には軍の党と習近平主席への忠誠を強調する精神論が散りばめられている。
 どこに具体的な「意見」があるのか戸惑いを感じたが、かろうじてそれらしきものがあるとすれば、「参謀隊伍の建設」である。
 すなわち、参謀という職位の資格制度の確立や新たな参謀育成モデルの創出などによる、
 「情報化された局地戦争を指揮する上で要求される専門化した参謀の隊伍」
を建設するための努力が強調されている。

 もっとも、軍の司令機関において参謀が中心的な役割を担うのは当然の話である。
 習近平主席の「新司令機関」がもともと全軍参謀会議で提起された事実に照らして考えれば、習近平主席の批准した「意見」にはほとんど見るべきものがないことになる。

 要は、この「意見」のポイントは
★.「軍は党の指揮に従え」であり、
 極論すれば「習近平主席の命令に忠実な軍隊」であることが要求されている
のである。

■軍の高級幹部が次々に「落馬」

 こうして、2014年は軍の改革については具体的な計画が提示されないまま過ぎることになった。
 だが、この1年間で中央規律検査委により立件され「落馬」した軍における腐敗高級幹部は16名に上った。
★.16名の内訳は、上将1名、中将4名、少将10名、上級大佐1名
であり、当然ながら前代未聞の事態である。

 上将は言うまでもなく徐才厚・前中央軍事委副主席だが、
 徐才厚を含め16名のうち9名までが、軍内における政治工作を担当する政治委員であった
ことが、
 習近平主席による「軍に対する党の指導の徹底」を要求する問題提起に関連付けられる。

 もちろん、徐才厚案件に絡んで「落馬」した将官が多数を占めるが、周永康・前中央政治局常務委員の影響下にあった四川省の成都軍区からも3名、また令計画・前中央弁公庁主任の地元である山西省からも3名の「落馬」があった。
 当然ながら、こうした「落馬」が周永康や徐才厚、令計画とどう関係しているか公式の説明はない。

■軍の大規模な人事異動の狙いとは

 このような軍内の腐敗分子摘発と平行して、習近平主席が主導した大幅な人事調整も明らかとなった。
 すなわち、新年早々に軍における大規模な人事異動が報じられたのである(「看中国」の記事)。
 総参謀部、総後勤部、総装備部、南京軍区を除く大軍区、海軍、第2砲兵部隊、国防大学、軍事科学院、武装警察(武警)部隊に跨る43名に及ぶ人事異動であった。

 異動の狙いは、明らかに習近平主席に忠実な軍指導部の形成である。

 同時に、習近平政権第2期(2017年第19回党大会以降)でも現役での勤務が可能な若手将官の抜擢、すなわち世代交代による「若返り」を図るものであった。
 具体的に言えば、1940年代生まれを引退させ、1950年代生まれを中核にした軍指導体制の形成である。
 実際、今回の異動で1949年生まれの3人の上将が65歳の定年に達したことで引退した。
 第2砲兵部隊政治委員の張海陽、海軍政治委員の劉暁紅、それに軍事科学院院長の劉成軍である。

■3つのキーワードで若手を登用

 そこで問題になるのが抜擢の基準である。
 ここに習近平主席の意向が大きく働くことになる。

 その意向を示す
★.第1のキーワードは「紅二代」である。
 “革命第一世代の子弟”という意味であり、
 従来使われてきた党の高級幹部子弟を指す「太子党」とほぼ同義である。

 ただし「太子党」は、実態はともかく「党」の文字が付いているため、印象としては「グループ」つまり「派閥」と見なされやすい。
 もとより実態は徒党を組んでいるわけではないから、表現としては「太子党」よりは「紅二代」のほうが妥当だろう。
 言うまでもなく習近平主席自身が「紅二代」であり、
 その出自の共通する軍人への信頼度が高いということである。

 文革世代である習近平主席は、当時の知識青年がおしなべて経験した「下放」(青年層を地方の農村で働かせることで社会主義国家建設に協力させること)を実体験として持っている。
 山西省の農村に下放された習近平は、そこで現在、反腐敗キャンペーンで盟友関係にある王岐山・中央紀律検査委書記と知己になったとされている。

 だが、軍は事情が違った。
 子弟の下放を逃れるため、軍人の家庭では子弟を軍に入隊させることで守ったのである。
 正規の手続きでそれができたのかどうかは分からないが、たとえ正規でなくても十代後半の知識青年を子弟に持つ軍人の親の年齢を考えれば、中国革命前の入隊であり、それくらいのことはできる権力のある幹部に昇進していたであろうことは想像に難くない。
 軍に「紅二代」が多数存在するには、そうした事情があった
のである。

★.第2のキーワードは「南京軍区」、とりわけ「第31集団軍」である。
 習近平主席の福建省勤務は1985年6月から2002年10月まで17年の長きにわたったが、その間に緊密な関係を構築したのが第31集団軍だった。

★.中国には全体で18の集団軍がある。
 そのうち、第31集団軍は第一線級の部隊ではない。
 福建省厦門に本拠を置くこの集団軍は、まさに台湾の正面に位置する部隊だが、台湾への軍事的刺激を避けるため、あえて編成や装備で劣る二線級の部隊にとどめてきた。
 しかし、装備は二流でも戦略的には重要な地理的配置にあるわけで、優秀な人材を配置していたのであろう。
 習近平主席はこの第31集団軍との関係をとりわけ重視してきた。

★.第3のキーワードがあるとすれば、「留学帰国組」(「海帰」)の抜擢であろう。
 中国建国後、中ソ蜜月時代の1950年代末まではソ連への留学が多かった。
 だが、その後、中ソ対立、文革という中国の孤立した時代が1970年代まで続いた。
 結果として、軍人が外国で長期の研修を受ける機会は長く失われていたと言ってよい。
 軍人の外国での研修が奨励されるようになったのは、おそらく90年代以降のことであろうから、留学帰国組の年齢は当然若い。
 国際経験が豊かで優秀な若手幹部の登用は、今後も増加していく
ことになろう。

■反腐敗のターゲット「虎」はまだ何匹も残っている

 では、これらのキーワードに沿って、今回の人事異動を見ていこう。

★.まず「紅二代」であるが、
 武警部隊司令員から副総参謀長になった王建平(上将)、
 代わって副総参謀長から武警司令員に回った王寧(中将)、
 蘭州軍区政治委員から海軍政治委員に回った苗華(中将)、
 国防大学校長から北京軍区司令員に回った宋普選(中将)
らが「紅二代」とされる。
 彼らは10代後半から従軍しており、典型的な「紅二代」の軍人である。

★.次いで「第31集団軍」である。
 今回の異動とは関係ないが、
 中央軍事委のメンバーで総後勤部長を務める趙克石(上将)、
 現在の南京軍区司令員である蔡英挺(上将)
はこの第31集団軍の出身であり、軍長経験者である。
 すでに「紅二代」で名の上がった王寧、苗華に加え、
 済南軍区政治部主任から北京衛戍(えいじゅ)区政治委員になった姜勇(少将)も、
済南軍区に赴任する前は第31集団軍の政治委員であった。

★.「留学帰国組」はどうか。
 北京軍区参謀長から副司令員に昇格した白建軍(中将)はロシア留学組であり、
 第41集団軍軍長から広州軍区参謀長に昇格した劉小午(少将)は米国留学組である。

 この人事のなかでとりわけ注目すべきは、
 北京軍区司令員になった宋普選、
 武警司令員になった王寧、
  北京衛戍区政治委員になった姜勇
であろう。

 政治の中心・北京において習近平主席が権力を揮う上で、軍の後ろ盾は必須の要件である。
 宋普選が「紅二代」の一員であることはすでに触れた。
 職歴を見ると、済南軍区での勤務が長いが、2009年から13年まで南京軍区の副司令員であったことが習近平主席との結びつきを窺わせる。

 王寧を武警司令員に配置したことは、まさに習近平主席の身辺警護役という意味合いがある。
 姜勇を北京衛戍区政治委員に登用したのも同様である。
 ともに第31集団軍の軍長、政治委員経験者であり習近平主席に近い軍人である。

★.反腐敗キャンペーンを継続する習近平主席にとって、
 最悪のシナリオは軍の離反
である。
 前中央軍事委副主席の郭伯雄、
 前国防部長の梁光烈、
 そして現職の国防部長の常万全
など、軍の関係では反腐敗のターゲットである「虎」がまだ何匹も残っている。
 これを一網打尽にすれば軍が大混乱に陥る
ことが分かっているだけに、時間をかけて混乱を避けつつ事を運ばなければならない。

 習近平主席の身辺の安全を確保することは今回の人事で概ね実現できたし、軍指導部の“若返り”も進んだ。
 しかし、「紅二代」「第31集団軍」のような、ある意味で「身内びいき」の抜擢人事は反発を買う要素となり得る。
 また、それが今後課題となる軍の機構改革にもマイナスの影響を及ぼしかねない。
 「軍権」掌握を急ぐあまり、人民解放軍を「習家軍(習近平の軍隊)」にするようであれば、まともな軍事改革はおぼつかない。



レコードチャイナ 配信日時:2015年1月19日 5時0分
http://www.recordchina.co.jp/a100866.html

中国人民解放軍で官職売買が横行、関係筋が相場を暴露―米華字メディア

 2015年1月15日、米国に拠点を置く中国情報専門の華字ニュースサイト・博訊によると、中国人民解放軍総政治部の関係筋がこのほど、軍内で行われていた官職売買の相場を暴露した。

 この関係筋によると、軍の最高指導機関である中央軍事委員会で、徐才厚(シュー・ツァイホウ)や郭伯雄(グゥオ・ボーシオン)が制服組の最高ポストに当たる副主席を務めていた当時、軍内では官職の売買が横行。
 将官位の売買価格の相場にちなみ、
★.軍職幹部は1000万元(約1億8900万円)であることから「千軍万馬」
★.100万元(約1890万円)の師団幹部職は「百万雄師」
などの隠語が通用していたという。



レコードチャイナ 配信日時:2015年1月19日 3時20分
http://www.recordchina.co.jp/a100850.html

中国を倒せる国は存在しない、
唯一の脅威は中国自身の腐敗だ―中国退役少将

 2015年1月16日、環球時報は記事
 「中国を倒せる国はない、倒せるのは中国自身の腐敗だけだ」
を掲載した。

 中国人民解放軍は15日、2014年に取り調べ、摘発を行った高級将校16人のリストを発表した。
 うち15人は少将以上の将官だ。
 元制服組トップの徐才厚(シュー・ツァイホウ)元中央軍事委員会副主席が象徴的だが、習近平(シー・ジンピン)体制が反汚職にかける意気込みが改めて示された内容と言える。

 軍事評論家の羅援(ルオ・ユエン)退役少将は環球時報の取材に応じ、
 「反汚職は徹底しなければ ならない、さもなくば日清戦争で日本に負けた国辱が繰り返されることになるだろう」
と警告。
 「強大化した中国と戦う勇気と能力を持った外国は存在しないが、唯一中国を打ち負かす力があるのは中国自身の腐敗だ」
とコメントしている。



 WEDGE Infinity 日本をもっと、考える  2015年03月05日(Thu)  岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4762

習近平の反汚職運動 
人民解放軍内にどこまで及ぶのか

 Diplomat誌のティエッツィ編集員が、1月31日付同誌ウェブサイト掲載の記事で、習近平は人民解放軍を反汚職運動の次のターゲットにしているようであり、これまで歩調がそろっていなかった、文民と軍の規律検査組織が、新たな協力関係を模索する予兆がある、と報告しています。

 すなわち、人民解放軍内の反汚職運動は、既に、徐才厚、谷俊山という2匹の「トラ」を捕えたが、概して、軍においては文民組織ほど活発には反汚職運動は進展していなかった。

 しかし状況は変化している。
 2014年7月の周永康・元政治局常務委員の立件の後、習近平が人民解放軍を汚職撲滅の次のターゲットにする兆候があった。
 中国メディアは、強力かつクリーンな軍の重要性を説く記事を続々と配信し始め、そういう傾向は2015年に入っても続いている。
 1月初めには、中国メディアは、軍高官が関与した16件の汚職事件について報じた。

 楊宇軍・国防部報道官は、1月29日の記者会見で、人民解放軍における反汚職運動の多くの新しい展開について説明した。
 楊は、中央軍事委員会の査察チームが、今年、全ての主要な軍の組織に対する査察が実施することになろう、と述べた。
 つまり、軍においても党の文民組織と同様、目標は、「トラもハエも捕まえる」のみならず、汚職行為を防止し懲罰するための法的・制度的メカニズムを実際に構築することにある。
 それは、予見し得る将来にわたり、反汚職運動が持続されるようなメカニズムを作ろうということである。

 それがうまく行くかどうかは分からない。
 これまでの反汚職運動の成功は、王岐山・中央規律検査委員会書記に負うところが大きい。
 しかし、軍には、汚職を検査する自前の組織、中央軍事委員会紀律検査委員会がある。
 ごく最近まで、両組織の間では協力が欠如していた。

 軍と文民の汚職検査機関の間で協力するための新たな取り組みが出て来てはいる。
 反汚職運動が始まって2年経ち、中央軍事委員会紀律検査委員が初めて中央規律検査委員会の本会議に出席した。
 それは、新たな協力の時代の予兆であり得る。楊報道官も、記者会見で、軍事機密が保護されることを条件に、軍側として汚職事件についての透明性を高めることを約束した、と述べています。

出典:Shannon Tiezzi,‘Graft Busters Take Aim at China's Military’(Diplomat, January 31, 2015)
http://thediplomat.com/2015/01/graft-busters-take-aim-at-chinas-military/

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 本論説の主たる論旨は、習近平体制下で反汚職運動が人民解放軍の中でも強まるであろうが、しかし、それらがうまくゆくかどうかはわからない、ということです。

 これまで、習体制下において、「虎もハエも叩く」という威勢の良い掛け声のもと、薄煕来、周永康、徐才厚など政治局員レベルの幹部を含む多くの人々を訴追してきました。
 その主たる攻撃対象は、ほとんどが党関係者であり、レベルの高い軍人としては徐才厚や谷峻山に限られてきました。
 しかし、最近になって、中国メディアも報道しているように、軍内にも摘発の対象を広げようとの動きが出ています。

 これまで中国の権力構造の中では人民解放軍は一つの「聖域」でしたから、ここに手を入れることは、軍の強い反撥を引き起こす可能性があり、習近平にとっても容易なことではないでしょう。

 これまでの反汚職運動のターゲットとなってきたのは、主として江沢民や胡錦濤につながる勢力であり、習側近の「太子党」につながる人たちは入っていません。
 その意味では、この運動そのものが権力闘争の色合いをもっており、今回の軍内の汚職摘発も当然その延長線上にあるものと考えられます。

 今日の中国における幹部の腐敗・汚職の度合いは、中国側メディアの報道をそのまま信用するかどうかを別として、驚くべきレベルに達しています。
 徐才厚(前中央軍事委員会副主席)の受け取ったとされる賄賂の額、その放恣な生活ぶりから、党と軍の間に大きな違いがないことが分かります。

 かつて中国共産党は「党内の団結、党幹部の廉潔性、効率的な党運営」を誇示してきましたが、
★.今日の中国共産党は、グループ間で分裂気味であり、
 また、幹部たちの腐敗汚職の程度は法外なもの
となっています。





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